家族が出来ること・出来ないこと
~精神疾患への理解を深め、初診への道を開く方法~
明らかに元気がない、様子がおかしい家族に精神科受診を勧めたら拒否された、という時。家族は困ってしまいますよね。
しかし本人としては、心の病気の自覚がないのに「あなたは病気だから病院へ行って」と言われても、すぐには受け入れることは難しいでしょう。
それでも、心の病気は早期治療が効果的です。未治療のままだと本人も周囲もどんどん苦しくなります。
まずはうつ病と決めつけず、本人が拒否しない方法を模索するところから始めましょう。
1.精神科の病院に行くことへの抵抗が強い場合
①うつ病(その他精神疾患)だと認めたくない本人の気持ちを尊重
恐らく「自分のことは自分が一番良く分かっている、本当にやばいと思ったら自分で病院に行く」という自負があるのでしょう。
またはうつ病と認めてしまうことによる別の問題や不安があるのかもしれません。
家族としては心配だから受診を勧めているのに、それを拒否されると自分の「心配だ」という気持ちまで拒否されたように感じて辛いです。
心配と辛さが合体して、家族も受診をゴリ押ししてしまうかもしれませんが、逆効果です。
行きたくない、と思う本人の気持ちを一旦は尊重しましょう。
②家族が病名を決めつけるのもよくない
うつ病かもしれない特徴については、今ではあちこちで見ることが出来ます。
ただし、それは「かもしれない」リスクに過ぎず、病気かどうかはわかりません。
病気かどうか、病気だとしたらなんという病名なのかを診断(決める)ことが出来るのは医師だけです。
「あなたはうつ病だから」と決めつけて話をすることで、更に本人の拒否感が高まる可能性もありますので気をつけましょう。
③目安は2週間
数日調子が悪かっただけなら、通常の疲労やストレス反応かもしれません。口数が普段より減った状態が2日続いただけではまだ病院へ行っても「様子を見ましょう」と言われてしまう可能性があります。
目安は2週間です。その間ずっと戻らないようなら受診の選択肢を提示しましょう。
惠然庵コラム『うつかも?→初受診までが難しい<前編>』
2.身近な相談機関を活用する
①身体症状をきっかけにする
抑うつ状態(気分が落ち込んで何にもする気になれない、憂鬱な気分などの心の状態が強くなり、様々な精神症状や身体症状がみられること)が続くと、体にも影響が出てきます。
食欲の変化(過食・拒食、またはそれによる急激な体重の増減)
不眠、過眠
体の怠さ、重さ
頭痛・めまい
吐き気・腹痛
(厚生労働省)
そして気持ちの落ち込みよりもこうした症状のせいで苦しむ方も多いです。
また体の不調によってメンタル不調の症状が出ることもあります。
先に身体症状の軽減から着手しましょう。
②かかりつけ医、内科医
いわゆる「プライマリ・ケア」に相当します。
普段からお世話になっているかかりつけ医になら、行ったことが無い精神・心療系の病院へ行くより敷居が低いでしょう。
また顔なじみの先生ですから、その人からのアドバイスなら聞き入れやすいかもしれません。
「私が心配だから、一緒に行って」と、アイメッセージ付きで提案してみましょう。
③家族が先に医療機関と繋がる
本人が受診を拒否することは、心の病では珍しくありません。
しかしだからといって放置していい問題でもありません。
特にうつ病は発症からすぐに急激に悪化することがあります。
どん底までメンタルが落ち込んでいる時は起き上がることも出来ず、ある意味安全です。
しかし体が動くくらいまで回復してくると、自殺企図のリスクが出てきます。
本人が受診したくない場合でも、せめて家族だけでも医療機関または専門家と繋がり、もしもの場合に備えましょう。
近くのメンタルクリニックに相談するのも良いですし、公的機関としては「精神保健福祉センター」がおすすめです。
≪参考情報≫ 全国の精神保健福祉センター (厚生労働省)
3.今の本人の困りごとから専門機関につなげる
うつ病っぽい→精神科・心療内科へGo!
だけが取れる手段ではありません。
心の病を受け入れないとしても、本人には何かしら困っていることがあるはずです。
自覚している問題の専門機関・専門家になら比較的スムーズにコンタクトを取れるのではないでしょうか。
①不眠、食欲不振
上述しましたが、こちらは内科またはかかりつけ医に相談が可能です。
血液検査などをしてもらって特に問題が無ければ、安心出来て抑うつ気分も軽減することがあります。
②集中力低下、イライラ
恐らくストレス過多によって睡眠の質が落ちている事が考えられます。
睡眠の質を上げるためには
- 適度な運動
- 軽めの夕食
- アルコール、カフェインを減らす
- 就寝環境の改善(音、光、寝具、気温)
- 昼寝しない
等で対策が出来ます。
③家族が困っていることは?
本人に自覚している問題がないとしたら、次は家族側の悩みを分析してみましょう。
例えば本人が残業続きで帰宅が深夜を超える状態が続いている場合。
家族は心配だし、寝ることも出来ない、寝ていても帰宅したら目が覚めてしまう。
家族の生活リズムも狂います。そして心身に不調を来たす可能性もあるでしょう。
無自覚なストレスによる本人のイライラの矛先が、家族へ向けられることも少なくありません。何も悪いことをしていないのに些細なことでケンカになる日が続けば辛いです。
こうした悩みを家族がカウンセラーや心療内科に相談することから、本人が医療へつながる道が開けます。
④本人に選択肢を与えて選んでもらう
いずれにしても受診するかしないかは本人の意思が最優先です。
なぜなら納得していない状態で連れてこられた人に、専門家は何もできないからです。
特に精神系のお薬は、飲み始めてもすぐに効果は表れず、先に体に副作用が出ます。
元気になるために飲んでるはずの薬で更に体調が悪化すれば、「自分はやっぱり病気なんかじゃない」という逆の納得をして更に医療から遠ざかります。
医療機関にかかるのか、カウンセラーに相談するのか、家族が先に繋がるのか、会社と相談して休職したり業務軽減してもらうのか。
選択肢を提示して、最後は本人に決めてもらいましょう。
4.医療機関に繋がる前に出来ること
①困りごとをメインにしたカウンセリング
カウンセリングは、単発から一定期間かけるものまで、無料や有料、対面やオンラインなど様々です。
更に今は、心理カウンセリング、キャリアカウンセリング、家族カウンセリング、夫婦カウンセリング、不登校カウンセリングなど、専門分野も分かれています。
言い方は悪いかもしれませんが、利用者は自分の事情や志向に合わせて選び放題です。
専門分野に特化したカウンセラーであれば、思いがけない提案をしてくれることもあるでしょう。
そして話を聞いてもらう中で、自然と「病院もアリかな」と思えることもあります。
②どんな治療が受けられるか知っておく
すぐに受診に繋がることが難しい場合は、事前調査しておくのもいいでしょう。
心療内科とは、心の病を原因とした体の症状を治療してくれる病院です。
食欲不振、不眠、集中力低下、頭痛、腹痛、胸痛、中には肩こりや腰痛の方もいるでしょう。
精神科は、精神疾患そのものへの治療です。強い不安感やイライラ、幻覚や妄想に困っている時は精神科です。
さらに実際に通院するとしたら、家から通いやすい病院がおすすめです。
ちなみに我が家は一番最初に職場から通いやすい病院を紹介され失敗しました(笑)
家の近所にどんな専門医があるか調べて、そこのホームページを見たり、実際に電話で問い合わせてみるのもいいでしょう。
病院によって、投薬メインか、カウンセリングも行っているのか、リワーク(復職)プログラムがあるのか、など特色があります。
5.病気そのもの以外の不安を共有する
大人、特に仕事をしていたり一家の主収入源の人は、病気になったからといって即療養を決められない事情がありますよね。
それがネックになって受診を拒むこともあるでしょう。
病気以外に不安や疑問があるようなら、そちらも共有しましょう。
①職場に知られたくない、働けなくなったらどうしよう
基本的にただ通院するだけで即職場に知られることはありません。
通院日を休みの日にすればいいし、食後に薬を飲む人も珍しくありません。同僚に何の薬かと聞かれたら、サプリメントだ、とでも答えておけば大丈夫。
病気と診断されたときに会社への報告義務があるかどうか、は会社によって分かれるので、就業規則を確認しましょう。
働けなくなる、というのは、むしろ未受診の状態が続くほうが現実化しやすい不安です。
そうなる前に、通常通り勤務出来ているうちに専門医にかかるほうが安心です。
②生命保険に加入できなくなる
病気になったときは、保険会社への告知義務があります。
精神疾患は特に自殺企図のリスクがあるため慎重に調査されるようです。
しかし、例えばうつ病だったとしても加入できる条件はあります。
告知では、5年以内に医師の診察・検査・治療・投薬等を受けたかどうかの質問がよくあります。この場合、5年以内については告知義務がありますが、5年以上前にうつ病が完治していて、その後は医師の診察等を受けていなければ告知をする必要はありません。
また、完治から5年間が経過していない場合でも、医師の診断によって現在健康であると証明が出た場合や、経過観察中との診断がある場合には、特別条件付きで加入が認められることがあります。診査基準については保険会社ごとに異なりますし、加入者ごとの状況によっても異なります。なるべく詳細に事実を伝えて、保険会社の判断を仰ぐことになります。
(アクサダイレクト生命)
病院受診=うつ病確定=保険に入れない、と決めつけるよりも、先に保険会社へ相談してみてはいかがでしょうか。
③他の人も頑張っているのに自分だけ情けない
うつ病や精神疾患になる人は、真面目な方が多いです。これは本当に。
そして自分に自信がない方も多いです。
自分に自信がない方の習慣として「他人と自分を比べる」というものがあります。
自分に自信がないため、他人を基準にしてしまうのです。
他の人は同じ条件でも頑張っているのに、病気と診断されて休職するようなことになるとしたら、それは自分の能力や努力が足らないからだ…
と考えている可能性が高いです。
同じ会社・同じ業務・同じポジションだとしても、それが全てではありませんよね。
得手不得手、好き嫌い、育ってきた環境、生活スタイルなどは皆バラバラです。
家族なら、仕事に囚われず本人を総括的に見ることが可能です。
家族の目線からアドバイスして、「自分だけが」という思い込みを解除しましょう。
6.初診後の配慮も忘れずに
①今まで通り接する
なんとか初診までたどり着けたとして、その後も配慮が必要です。
まず医師から病名を告げられたとして、それによって態度や接し方を変える必要はありません。
必要なことは医師から説明があるでしょう。
それ以外は普通通りに接しましょう。
②処方通りの服薬と副作用への配慮
上述したように、精神系のお薬は飲み始めてから効果を実感できるまでに1~2週間ほどかかるものが多いです。
例えば抗うつ薬の中で有名なパロキセチン(パキシル)は、飲み始めてから効果が出るまで2~4週間かかります。
副作用として吐き気、眠気、眩暈などがあると報告されています。
副作用が辛くて飲むのを嫌がる方もいます。
その時は主治医に相談し、可能な限り処方通り服薬できるよう配慮しましょう。
③病院に行けば全て解決と思わない
うつ病(その他精神疾患)はとても難しい病気です。
処方された薬を飲めばそれで元気になる、というものではありません。
うつ病はストレス過多や過労によって発症することが多いです。それならば、ストレスを減らし疲労を軽減し心地よい環境を作って心の柔軟性を高める必要があります。
そしてこれらは病院では実現しません。
他の専門機関や、家族の協力が必要です。
病院は第一の入口と捉えましょう。
惠然庵コラム『家族が精神疾患になった時にやること』
7.まとめ
辛そうだから、もしかしたらうつ病かもしれないから病院へ行ってほしい、と伝える家族の側にも葛藤があるでしょう。
なぜなら家族だって病気であってほしくないからです。
けれどもその不安を押し殺して受診を勧めているのですよね。
その勇気は素晴らしいです。
しかし、伝え方一つで拒絶されてしまいます。
「あなたは病院へ行くべきだ」というよりも、「私はあなたが心配だ。だから病院へ行って専門家に診てもらおう」と伝えるほうが言われた側も「家族のためだ」という大義名分が出来て受診へのハードルが下がります。
まずは回復への第一歩となる初診へ向けて頑張りましょう!
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