家族のうつ病にどう向き合うべきか? -アドラー心理学で考える-
家族とは、その中に病人やケアラーを含まなくても、関係性やコミュニケーションが大事です。
何故大事なのでしょうか。
家族が相互に結び付きあい、役割を果たすためにはどんな要素が必要で、毎日の生活で何が出来るでしょうか。
1.家族同士は依存し合って生活している
依存というとあまり良くないイメージかもしれませんが、ここでは「お互いが影響し合っている」ことを指します。
例えば夫婦は、こどもにとっての両親です。母⇔子の直接的な影響だけでなく、母(妻)・父(夫)同士がどのように影響し合っているか、が、子へも間接的に影響します。
逆も然りです。子同士(きょうだい)の関係や影響が、父母へも影響します。
影響していない、としたら、それもまた心配ではあります。
同じ家の中で生活しているのに、他の家族同士の関係に全く影響を受けずに生活しているとしたら、そこには分断が生じている可能性があります。
2.各自の役割分担
家の中で役割分担というと他人行儀にも聞こえますが、何か仕事をするのではなくても、家族は居るだけで何かしらの「役割」を持ち、周囲もそれを求めます。
そしてその内容は、家族ごとに異なっています。
例えば父(夫)は、制度上は世帯主です。文化(精神)的には、古い言い方かもしれませんが「大黒柱」です。何となくお父さんが最終決断をする、というご家庭はやはり多いのではないでしょうか。
私はたまに訪問営業みたいな人が来たら、「今夫がいなくて私じゃ分からなくて…」と言って逃げます。こういうと結構な確率であっさり引いてくれます。納得できる理由なんですよね、きっと。
母(妻)は何くれと無く世話をしてくれる人、というご家庭が多いでしょう。今でも日本では「○○さんの奥さん」という認識が多いです。それは付属物ではなく「妻」の役割を担う人、ということです。
世間一般が認識する役割だけでなく、家族内だけで認識・期待している役割もあります。
「こういう問題は○○(お父さん・お母さん・お兄ちゃんなど)が決める」のように。いつの間にか出来上がっている認識ですから、家庭内の文化と言ってもいいです。
家族から認識・期待されている通りの役割を果たせれば問題ありません。
ですが何らかの理由により、期待からずれた言動・行為になることもあります。
その時に、他の家族たちは意識的に「この人なら○○するはず・言うはずだと思ったのに」と考え、役割を意識することになるでしょう。
3.家族間コミュニケーションと家族の機能
家族は、メンバー間のコミュニケーションがとても重要です。
コミュニケーションのパターンは、感情の表現や情報の伝達に影響を与え、家族の機能が上手く回るための必須条件です。
家族の機能、とは、非常に多岐にわたります。
一つは経済的な機能です。収入を得たり、それをどのように使うか、などは、家族全員が考えて実行します。
感情的なサポートも重要です。大人になれば人の行動範囲は広がりますから、様々なところからサポートを得られますから、家族からの支えは特に重視しないかもしれません。ですが家庭内での感情的サポート(労わり、励まし、慰め、安心)を欠くのは、それ以外のサポートを失うよりもずっと大きな損失になります。
身体的な安全やケアも家族の持つ機能です。寝る・休む・食べる。これらは基本的に家庭ですることです。仕事で疲れたり嫌なことがあれば「早く帰りたい」と思う人は多いでしょう。そう思うということは、家に帰れば大丈夫、という安心感があるからです。
こうした基本的な機能を、家族たちが十分に活用出来るためには、家族同士のコミュニケーションがスムーズに行われているか、がカギになるのです。
4.家族たちで「家族」を作るためには
家族を構成する一人一人が持つ役割・欲求・ストレングス。
家族同士が影響し合うことで生まれる関係性。
これらが複合化することで、各家庭の「文化」になります。
それは、暴力や虐待のような犯罪行為、ハラスメントなどの非倫理的行為をのぞけば、「良い・悪い」で判断出来るものではありません。
その家族に含まれる個人が、ほぼ同程度に「うちの家族はこれでいい」と思える状態になっていることが大事です。
では、「うちの家族はこれでいい」と思える状態にするために出来ることは何でしょうか。
①共同の時間を確保する
家族のメンバーが共同の時間を持つことは、絆を深めるために重要です。
一緒に食事を摂る、家族のアクティビティや遊びを楽しむ、家族の歴史や物語を共有するなど、共同の経験を通じて関係を強化することが出来ます。
②コミュニケーションの向上
家族内のオープンなコミュニケーションを促進しましょう。
それぞれの感情や考え、何を求めているか、を共有し、他の家族の意見や視点を尊重することが大切です。
家族内でのコミュニケーションの場を設け、メンバー同士が話し合う習慣を育むことが重要です。
③感謝を表現する
家族同士で感謝の気持ちを表現しましょう。
家族になって長いと、「ありがとう」「ごめんなさい」が意外と言えなくなっています。
感謝の言葉や行動を通じて、他のメンバーへの尊重と愛情を示すことが家族の結束を高めます。
④個人のニーズを尊重
家族の機能を高めるためには、一人一人のニーズも重要です。
家族メンバーが自分自身のケアや個人の成長に取り組むことをサポートし合い、他のメンバーのニーズを尊重することが大切です。
⑤協力と責任の分担
家族内での協力と責任の分担を促進しましょう。
家族のメンバーが互いに協力して、家事や責任を共有することで、家族の機能が向上し、ストレスや負担が軽減されます。
5.まとめ
①家族同士の関係性は、当事者同士だけでなく、間接的に他の家族にも影響を与える
②家族それぞれには、家庭の中で他のメンバーから期待され認知されている役割がある
③家族は、家族同士のコミュニケーションがスムーズでオープンであってこそ、その機能を果たせる
④家族が家族を作るためには、一緒に過ごす時間を作り、個々人が何を考えているかを知り、感謝を伝えあって、お互いを尊重し合いながら生活の中で協力し合うことが重要になる
家族って不思議だな、といつも思います。
ものすごく近いけど、究極は他人です。支え合って気遣い合うけど、それぞれが抱えているものを替わってあげることは出来ません。
お互いは他者だ、と前向きに認識し合うことは、尊重を生みます。
そこがスタート地点ではないでしょうか。