うつ療養中の過ごし方 ①回復までの変化と必要条件
自分、あるいはパートナーがうつ病になった夫婦は、コミュニケーション不足になりがちです。
それは当然のことです。
うつ病の大きな症状は、気分の落ち込み・意欲の低下・思考の偏りですから、以前と同じコミュニケーションが取れなくなってしまうのです。
かといってそのままにも出来ないですよね。
どういう対処をすればいいでしょうか。
Q1:うつ病の人に言ってはいけない言葉はなんでしょうか?
よく言われるのは「頑張れは禁句」ですが、それほど単純な話ではありません。
良かれと思って言った言葉が、うつ病というフィルターを通すことで全く違う意味に変わってしまうからです。
たとえば、
- もっと気楽に考えればいいのでは?
- あなたよりもっと辛い状態の人もいるんだから
- 気分転換になるようなことも試してみれば?
- これから先どうしようと思ってるの?
- ○○が出来たんだから、●●(仕事、家事)も出来るんじゃない?
のような言葉です。
励ましたり後押しするつもりが、うつ病の人には
- 気楽に考えられていたらうつ病になんてなってない
- 他の人がどうなのか、は、今の自分には関係ない
- 今はこうしている(家にいる、横になっている)だけで精いっぱいなのに
- 先のことなんて考える余裕はない
- ○○と●●は全く別次元なのにどうしてわかってくれないんだ
と感じてしまうでしょう。
Q2:どんなことに配慮して話せばいい?
夫婦、特に夫婦二人の家族なら会話は必須です。しかし思ったことを何でも話せた時期とは違い、病気に対する配慮が必要です。
①話す側(うつじゃない人)の基準で考えない
例えば
- 朝は一定の時間になったら起きる
- 1日3食食べる
- お風呂は毎日入る
などは、話す側からすれば当たり前の日常活動でも、うつ病にとってはかなりハードルが高いです。というよりこれが出来ればうつ病はかなり良くなっていると言っていいかもしれません。
②他のうつ病の人と比べない
うつ病や適応障害などを患う人は増えてきています。
会社の同僚や有名人の経験談などを聞いて、それと比較して
「私の家族はあれもこれもできない(あの人は出来るのに)」と悩んでしまうかもしれません。
しかしうつ病の症状や回復へのステップは十人十色です。
他人と比べることは百害あって一利もありません。
③目の前のその人の状態を否定しない
うつ病は、実際にはどれくらい辛いのか、は、なっていない人は想像するしかありません。
だから、目の前にいるうつ病その人の状態を否定せず、「これがこの人のうつ病なんだ」と理解しましょう。
家族がすべき理解は、他のうつ病の症状はどうでもよくて、自分の家族のうつ病の特徴を知って受け入れることです。
Q3:うつ病の人はそっとしておくべき?
そっとしておく、というのもよく言われることですが、具体性に欠けます。
そっとしておく=放置、本人の責任に任せる、と考えると、それはうつ病への配慮とは言えません。
例えば以下のようなやり方で「そっとしておく」のはどうでしょうか。
- 夫婦で合意した「そっとしておくルール」を作る(部屋から出てこない時には呼びに行かない、など)
- そっとしておく=何も話しかけない、だと孤独感を高めるだけ。必要最低限の声かけ、挨拶はする
- 放置ではなく「見守り」と考える→うつ病の状態は少しずつ確実に変化します。最初の印象だけで接し方を固定しないで、その時の状態に合わせて接しましょう
Q4:うつの人には何をしてあげたらいい?
これも悩むところです。
あれこれアドバイスしたり本人に代わって病院を探したり仕事について考えてあげたりしなきゃいけないのか…と背負い込み過ぎてしまう人もいます。
しかしそれよりも、家族だからこそ出来ることのほうが大事です。
- 衣食住を整える
- 本人が何か話して来たら、集中して聞く(×片手間)
- 家族自身が元気でいる(×元気なふり、無理に「大丈夫だよ」と言う)
こうした日常の下地が出来ているからこそ、治療や復職への意欲も形成出来るのです。
≪まとめ≫
うつ病で一番怖いのは「死にたい」願望です。
コミュニケーション不足は、うつ病の人の孤独感を強め、自己評価を下げて、「死にたい」と考えていることへの家族の気づきを遅らせてしまいます。
そして家族にとって最大の敵は「不安」です。
不安を募らせすぎることで、うつ病を必要以上に恐れすぎたり、現実が見えづらくなったりします。
不安への対処に有効なのは、情報と第三者の支援と自分のストレスケアです。
家族は自分の抱える不安を大きくし過ぎないことで、コミュニケーション不足を予防していきましょう。
<参考文献>
「うつ病のことが正しくわかる本」野村総一郎(監修)、西東社