季節の変わり目の不調①
誰かから期待ををかけられたり、頼られたり、任されたりするのはとても嬉しいことです。
モチベーションも自己効力感も上がります。だから精いっぱい応えようとする。
しかし「しすぎる」と、一転して重荷となりストレスへ繋がります。
「期待に応えようとしすぎる」心理とは、対処法について考えました。
1.期待に応えようとしすぎる心理
①相手からの見返りを期待してしまう
何かしたことに対して見返りを求めることは、普通の心理です。相手も何もなしに求めてはこないでしょう。
この場合の見返りとは、金銭や物品だけではなく、感謝、賞賛、高い評価、権限なども含まれます。
求められた役割を果たしたことへ、相応以上の見返りを求めると「しすぎて」しまいがちです。
『50やって70もらえるなら、70やれば100もらえるかもしれない』
のように。
実際には50だけやっても70やっても報酬は70かもしれないし、プラス20やった分で損害が発生したら、約束の70ももらえなくなるかもしれないのに。
②承認欲求
度々話題にのぼる承認欲求が過度に高まった場合も「しすぎる」行動に拍車をかけます。
承認欲求とは、「他者から認められたい、自尊心を満足させたい」という欲求です。自分が所属する集団の中で、自分は他の人にとって有用であることを証明したい、と考えるのは、その集団に所属し続けるためには必要なことです。だから本来は悪いものではないのです。
しかし必要以上に強まると、求められたレベルを超えて手や口を出すことになり、場合によっては集団内の和やリズムを乱すことにもなりかねません。
③不安定な自己評価
自己評価は「高い」「低い」という表現をされることが多いですが、高くても低くても、安定していればそれほどメンタルに影響を及ぼしません。
問題は、不安定な時です。
高い自己評価を持っている、と自認していても、それが実は背伸びや無理、見栄をはった結果だとすると、ちょっとしたことで不安や恐怖、焦りが生まれます。
それをカバーしようとして、たまたま寄せられた期待にしがみつき、「しすぎて」しまうことがあります。
2.期待に応えようとしすぎることの弊害
①限度がわからなくなり、本末転倒になる
期待に応えようとすること自体はとてもポジティブですし、「頑張ってね!」と背を押したくなります。
しかし「そこまでやらなくていいのに」という領域に踏み込み始めると、一体どこまでやればいいのか、本人にも判断が出来なくなります。
「しすぎる」状態を長期間続けると、集団の中での責任の所在が混乱し、本来誰が決断、指示すべきものだったのかもわからなくなります。目的も理由も不明確になるでしょう。
そして「しすぎて」しまった人への非難や責任追及へつながるケースもあります。
頑張った結果が、慰労でも賞賛でもなく批判だとは、残念なことこの上ありません。
②他のことが疎かになる
人が何かをしようとすれば、そのためにリソース(資源)が必要になります。
モチベーション、体力、時間、手間、思考力、資金。
これらは有限です。
そしてやらなければいけないことは意外に多い。
それなのに、何か一つにだけ注力し続ければ、リソース不足に陥って、本来やらなければいけないことに手が回らなくなります。
手が回らなくなったタスクにも関係者がいるはずです。今度はそちら側から苦情が出るかもしれません。
自分だけの問題だとしたら尚更危険です。手が回らず放置状態になっていることに気づくことがないからです。気づいたときには手遅れになっているかもしれません。
3.自他の領域を守る
上述したように、「期待に応えようとしすぎる」とは、一定の範囲・レベルを超えてしまうことです。
量で超える場合もあれば、質で超える場合もあるでしょう。
見返りを一切求めていないとしても、超え方に問題があればそれは否定的な結果につながりかねません。
自分の領域はどこまでで、どこから先は他者の領域なのか、を把握する意識が有効です。
例えば「電話対応をほめられたから、もっと上手になろう」と思って、先輩のマネをしてみたり、メモの取り方や伝達方法を工夫しようとすること自体はとても素晴らしいです。
しかし「かかってくる電話は全部自分が対応しなければ」と考えたらどうなるでしょう。
他にもやらなければいけない仕事が放置されたり、他の人が対応するほうが効率が良い電話まで横から手を出すのは、期待に応えることといえるでしょうか。
自分が出来ること・やるべきことの中でベストを尽くす、という意識が、「しすぎる」傾向に歯止めをかけてくれます。
4.他人にも期待しすぎない
自分が誰かの期待に応えようとしすぎることもデメリットがありますが、逆に「他人に期待しすぎる」ことも気をつけたいですよね。
誰かに何かを期待したり依頼するとき、「自分ならこうする」という、自分なりの尺度や解釈をもっています。
それを明確に相手に伝え、それを相手が正しく理解し了承したうえで引き受けてくれたなら問題ありません。
しかし期待とは、それほど具体的になっていないことが多いです。
「こんなふうにしてくれたらいいのにな」とぼんやり想定していることが、「こんなふうにすべきなのだ」に変換されると、自分も相手も辛くなります。相手の成果も、本来は十分なレベルを満たしているはずなのにどこかでケチをつけてしまう。
それは双方幸せな結果とは言えません。
もし期待することがあるなら、
①言語化する
②相手にしっかり理解してもらう(理解してもらえる努力をする)
③相手から了承をもらう
ことが必須です。
5.他人からの期待より、自分からの期待
他者からの期待に応えようと頑張ることも素晴らしいですが、まずは「自分が自分に何を期待しているのか」を理解することが大事です。
会社員として。
妻として、夫として、親として、子として。
その他、自分が背負っている立場として。
自分はどんなふうにそれをやり遂げたいと思っているでしょうか。
他の役割とのバランスは、優先順位はどう考えているでしょうか。
自分が「こうしたい、こうあるべき、こうなりたい」と自分自身に対してかけている期待に応えましょう。
そして自分で自分に「よく頑張った」「それはやりすぎ」のように冷静に評価出来る目が養われると、他者の期待に応えすぎて失敗したり、他者に余計な期待をかけてガッカリすることも無くなります。
自分で自分に期待し、正当に応える経験を積み重ねていきましょう。