普通と偏見
老若男女問わず、頑張るほど愚痴はどこかで漏れてしまうものです。
心の中で思うだけの人もいれば、誰かに聞いてもらうことですっきり出来る人もいる。
愚痴は「出物腫物ところ選ばず」な傾向があるので、ふとした時に誰かの愚痴を聞く役になることも多いでしょう。
愚痴の上手な聞き方とは、どういう方法があるでしょうか。
1.「愚痴」と「相談」の違い
愚痴とは
「(今となっては)言ってもしかたがない事を、言っては嘆くこと」
です。
嘆くこと、ですから、内容はほぼネガティブなものです。一人で抱えておくのがつらい、または抱えておくよりも誰かに話して忘れてしまおう、といったものです。
対して相談とは
「どうすればよいかなどについて、意見を述べ合ったり、意見を述べてもらったりして考えること」
です。
他者の考えが聞きたかったり、自分がどうすべきかについてアドバイスが欲しいときです。
困っている、一人では対処しきれない、という状況は似ていますが、愚痴が一方通行なのに対して相談は相手からの反応を期待した双方向の交流です。
2.愚痴を聞く時の「作法」とは
上述したように、愚痴は一方通行です。
自分が愚痴をこぼした時のことを思い出すと分かりやすいですが、とにかく誰かに対して吐き出したいと思っています。
すぐそばにいる家族だったり、隣の席の同僚だったり、またはSNSなどのインターネット上の誰かだったりします。
目的は「吐き出す」ことです。しんどかったり後悔している気持ちを誰かに知ってもらいたい。その一心です。
そして勢いでしゃべっていますから、理論も結論もありません。ただただ湧き上がってくる気持ちが言葉になって半自動的に口から漏れ出ています。
だからこそ、話しているうちに「そうか、自分はこんな風に思っていたんだ」と、気持ちが整理出来るのが愚痴を言う側のメリットです。
愚痴を聞く側は、その「気持ちの整理」のお手伝いをしている立場なのです。
お手伝いは、ただそこに座っていればいいのです。
さすがに「ながら」で聞くのは相手が怒ってしまう可能性もありますが、悩み相談を受けているときのように「この問題をどうやって解決すればいいのだろう」というほどの前のめりな姿勢は必要ありません。
「そうなんだぁ」「大変だね」「そういうことかー」
と、たまに相槌を返せれば十分です。
逆に「それはあなたが良くないよ」「相手の気持ちになってあげたら」などのアドバイスは必要ありません。それは愚痴を言いながら本人が自分で気づくから意味があるのです。
それに愚痴とは、思ったままダーッと口からこぼれてくるものですから、前後関係や登場人物の背景などがはっきりしているわけではありません。理論的ではない内容に対して理論的なアドバイスを返してあげようとすると聞いているだけで疲弊します。
愚痴は、
- 黙って聞く
- 思いついたら相槌をうつ
- アドバイスしない
ことがポイントです。
3.愚痴を聞く側のしんどさと対処法
とはいえ、愚痴を聞く、とは、愚痴を言う側の気軽さに対してなかなかにしんどいものです。
しんどくなる理由の1つは、愚痴が誰かへの批判になっているときです。
上司、家族、共通の知り合いの誰かに「〇〇と言われた(言ってもらえなかった)」「〇〇なことをされた(してもらえなかった)」という愚痴だった場合、愚痴を言っている人に同意することは、一緒になってその対象者を批判していることにもつながりかねません。
もちろん同意してもらえれば愚痴を言う人は気持ちが楽になるでしょう。
ただしさじ加減を間違えると「この人は私の味方だ」と、対象者に対する批判的な意見を持っている人間と目される可能性もあります。
とはいえ「あなた(愚痴を言う人)が良くない」と言ってしまえば、矛先が聞いている側へも向いてきます。
誰かの悪口になってるな、と思ったら、同意もしないし止めもしない。うんうん、と聞いて、話が終わったら他の内容も含めて全部忘れましょう。
しんどくなる理由2つ目は、自分の意見と対立する内容だった場合です。
愚痴の内容が「〇〇なときにAを選ぶなんておかしい、でもBと言ったら怒られた」というものだった時、聞いている側の意見としては「Aを選ぶ」だと、自分の考えと相反する意見、自分の考えへの批判意見をずっと聞き続けることになり、聞いている側には矛盾や葛藤が生じます。
愚痴を言う人は、聞いている側の人の意見がどちらなのか、は恐らく知りませんし、考慮していません。当然ながら自分と同意見だろう、と思っているから、愚痴の吐き出し先として選択したのでしょう。悪気はないのです。
この時は、「自分に言っているわけではない」ことを忘れないようにしましょう。もし聞く側の人に何らかのネガティブな感情を抱いていれば愚痴を言ったりしません。愚痴を言うとは、ある意味親近感があるからこそ起きる交流なのです。
「分からないで言ってるんだなー」と、聞き流しましょう。
しんどくなる理由3つ目は、長すぎるときです。
愚痴はとにかく止まりません。元からおしゃべりが好きな人だと、時間も状況も全部忘れて自分がすっきりするまで話し続けます。
話しているほうはどんどん気持ちがすっきりしていきますが、聞いている側は反比例してどんどん疲労がたまっていきます。
理由①と②が重なっていれば猶更です。
内容にもよりますが、10分を超えたら一旦切り上げましょう。
用事があるふりをするのでもいいし、「また今度じっくり聞くよ」と提案するのもいいでしょう。
どちらも言いづらい場合は、ちょっとマナー違反かもしれませんが、スマホをいじりだすのもアリです。相手に対する信号になります。
相談を聞いているときはNGですが、愚痴ですから。聞いてる側にはそれくらい許されるでしょう。
4.愚痴を聞く人のメンタル管理
愚痴は、言う人はしょっちゅう言いますし、言わない人は全然言わなかったりします。
言うことですっきり出来る場合もあれば、愚痴るときに嫌な状況を思い出して再体験するので、「嫌だな」という気分が強化されることもあります。それが嫌で言わない、という人もいるでしょう。
愚痴を言う/[太字]のは、[太字]その人の「ストレスコーピング」、ストレスへの対処法なのです。
そして、愚痴を言わない人ほど、誰かの聞き役に回ることが多くなります。
では、自分では愚痴を言わないけれど聞き役になることが多い人はどうすればいいのか。
それは、自分なりのストレス対処法をしっかりと持つことです。
お酒やギャンブル、セックスなどはやめておきましょう。一時的にすっきり出来ても、後からその対処法のせいでストレスが生まれる、という悪循環が必ず生じます。
愚痴を聞くことで生まれたストレスをそのままにしておくと、その相手との関係の悪化にもつながりかねません。悪化してもいいや、という相手ならいいですが、家族や同僚、長年の友人ならそうもいきません。
愚痴は真に受けない、相談されたときだけ親身になる。
これを覚えておいていただきたいです。
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