仕事とメンタル不調 ③不調をケアする
「仕事のストレス」について考える第2回目は「パワーハラスメント」です。
職場の悩みで一番大きく数も多いのは「人間関係」でしょう。
人対人ですから、合う・合わないがあって当然です。上下関係だと意識を対等にすることも難しくなります。
パワーハラスメント(以降パワハラ)とは何か、どんな場面やコミュニケーションか、受けた側の心の変化、被害者になった時の心得、等を考えてみたいと思います。
1.パワハラの定義
厚生労働省は、パワハラを以下のように定義しています。
職場におけるパワーハラスメントは、 職場において行われる
①優越的な関係を背景とした言動であって 、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより 、
③労働者の就業環境が害されるものであり、
① から ③ までの3つの要素を全て満たすもの をいいます 。
職場での「優越的な関係」とは、多くは役職者を指すでしょう。ただし、人は何をもって他者に優越するかは役職だけとは限りません。利害関係や多対一だったり、様々なケースが考えられます。
「相当な範囲を超えた」というのも、判断が別れるとこだと思います。
ハラスメント的言動は、一つ一つは些細なもので、そこだけ切り取ると「大したことない」「そんなことで?」と、軽く扱われることも少なくありません。
しかし、長期にわたったり、実行した状況や、そこへ至る背景なども含めて把握すると、とても「必要相当」とは思われないものが多いです。
ちなみに「職場」とは、実際に業務を行っている場所に限定されません。会社関係の飲み会、社員寮、通勤途中なども含まれます。
そしてこうした圧力や嫌がらせを受け続ければ、被害者は当然働きづらくなり、意欲がそがれ、生活や健康が損なわれます。労働どころではなくなってしまいます。
「昔は~」のような事例で見過ごすことなど到底出来ない、働く人達全員が取り組んでいかなければいけない大きな問題なのです。
2.パワハラ的コミュニケーション
パワハラ加害者が人と関わるとき、幾つかの特徴があります。
・問題が起きた時に、被害者に一方的に責任を負わせる
・直接本人へ伝えるのではなく、周囲に対して「あいつは○○(侮蔑的発言)だから」と言って回る
・相手が仕事を続けられるのは自分(加害者)がいるおかげだ、と言い、思い込ませる
・相手を利用はするが、大事にしたり労わったりはしない
・常に自分を優位に置く、または守る
加害者になる人物には、偏っていて強い自己愛、自尊心があります。
そして被害者になりやすい人は、自分に自信が無い人、または丁度自信を失っている時であることが多いです。
そこを利用して、自分にとって都合のいい環境を整えようとし、その為に被害者を利用するのです。
自分自身への過大な愛情を抱える反面、他者への敬意がありません。
ですから、ハラスメント的行為をされた相手がどう感じるか、を考慮することはありません。
更に、自分にとって都合よく利用するために、被害者に対する協力者や理解者がいては都合が悪くなります。
被害者について「あいつ実は○○なんだ」のような風評を広めて、被害者を孤立させることもあります。
3.パワハラ被害者の心理
ここまで来ると、被害者がどんな気持ちになっているかは容易に想像つきますよね。
私も書いていて胸が苦しくなってきます。
パワハラに相当しない「業務上必要な内容と程度の叱責」は、どんな職場でもあるでしょう。
それは言うほうもしんどいです。相手が落ち込んだり傷ついたりすることが目に見えているからです。
だから場所やタイミング、伝え方や言葉を選ぶことがほとんどです。
そこまで配慮されれば、落ち込むかもしれませんが冷静に受け止めることも出来るでしょう。
しかしパワハラはすべてこの逆の状況をあえて選んで実行されます。
ですから被害者は、何もかも自分が悪いと思い込み、相手(加害者)の非に気づく余裕もありません。
雨あられのように非難や叱責、侮蔑の言葉を浴びせられ「続ける」のです。
第三者からは「自分は悪くないんだから、言い返せばいいのに」と言われたりしますが、反撃する気力も余裕も何もかも奪うのがパワハラの手口なので、出来るはずがありません。
周囲から理解者もはぎとられるので、自分を肯定してくれる声もなく、自責と無力感でいっぱいになり、自己評価も自尊心もどん底になります。
そうして、厚労省の定義の「③労働者の就業環境が害されるもの」の状態になってしまい、適応障害、不安障害、うつ病、パニック障害などのメンタルな病気へと追い込まれてしまうのです。
4.パワハラ被害者になったときのメンタル3か条
パワハラに限らず、各種のハラスメントの厄介なところは、それが行われている場所の風土や文化と一体化していることです。
「そんなこと我慢しろ」と、被害者側へ更なる負担を強いるような社風があるから起きるのです。
ハラスメントをやめさせることが最善ではありますが、個人で立ち向かうには敵が大きすぎます。
もし「自分はパワハラを受けているかもしれない」と思った時、以下のことを思い出してください。
【1】自分を責めない
【2】理解者を探す、作る
【3】逃げること(休職、転職、退職)を否定しない
とくに【1】は、絶対に守っていただきたいと思います。
パワハラは、嫌がらせです。嫌がらせをしている人間は、相手の小さな弱点をついてくるので、「自分も悪かったかもしれない」と思わせて自分を正当化します。
しかし上述のようなやり口で追い込んでくるのですから、被害者側に多少のミスがあったところで、そんなものは問題にならないレベルの迫害なのです。
ですから、自分で自分を責めないようにしましょう。
仕事をしていると、「これだけは守ろう」という、自分なりの信条やモットーが出来ていると思います。
ハラスメントをされている時は、これが威力を発揮します。
長い時間をかけて作り上げた自分軸をブラさず、自分を責めず、家に帰ったら労わりましょう。
自分が強くならなければいけない、弱いからダメなんだ、ということではありません。パワハラされればどんなタフな人でもダメージは受けます。タフな人が標的にされにくいだけです。
パワハラ行為で傷ついた自分を、自分自身まで責めてしまっては、本当に逃げ場が無くなってしまいます。
自分は、自分を守る最後の砦なのです。
5.国の施策と相談窓口
最後に、国が実施している「職場におけるハラスメントの防止対策」についてご紹介します。
職場でのハラスメント(セクハラ、マタハラ、パワハラ、カスハラ)についての防止策を講じることが、企業の義務となりました(2022年~)。
各ハラスメントの定義、相談窓口などの情報も載っていますので、ご参照ください。
また、「あかるい職場応援団」というサイトもあります。
被害者としてだけでなく、どんな言動がハラスメントに該当するのか、を学べる動画もあります。
やっと国も本腰で乗り出してくれたようですので、可能な情報や協力者はどんどん活用しましょう。
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次回は「ライフイベントと仕事上のストレス」の関わりについて考えます。
<参考資料>
「職場におけるパワーハラスメント対策が 事業主の義務になりました」(厚生労働省)
≪オンラインカウンセリング 惠然庵≫
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