感情のコントロール術:自己マネジメントの鍵とは?
社会人と仕事は切っても切れない「日常」です。
一時的に働いていなかったとしても、またどこかに就職する人が多いでしょう。
生活の糧を得るための手段なのですから当然ですよね。
誰もが楽しく仕事が出来るわけじゃない。好きで始めた仕事でも苦手な場面はある。
社会人の生活と仕事とストレスは、常に三角関係です。
今回は「仕事のストレス」について、
1)ストレスとは、仕事のストレスの特徴
2)ハラスメントとライフイベント
3)ストレス対処法とストレスチェック制度
について、考えてみたいと思います。
1.「ストレス」とは?
誰もが日々体感している「ストレス」。
しかしストレスとは、そもそも何でしょうか。
①「ストレス」の中身
ストレスとは、「ストレッサー」と「ストレス反応」の二つに分かれます。
よく「指で押して凹んだゴムボール」が喩えに使われます。
この「ボールを押す指」がストレッサーで、凹んで形が変わっている部分が「ストレス反応」です。
ゴムボールなら誰が押しても必ず凹みますが、人間の心は誰もが同じように形を変えるわけではありません。
「ストレッサー」から受けた力を、各個人の「認知」が、それをどういう力なのかを解釈します。そして認知が決めた解釈に従って変えた形が「ストレス反応」です。
例えばカフェに入って本を読もうと思ったのに、隣の席のお客さんが話をしていた、とします。
ストレッサーは「隣の席の話し声」です。
それに対して
A「うるさいなあ、本が読めないよ」
B「楽しそうだな、私も今度○○さんとお茶しようかな」
C「今日は混んでるんだな、読書はやめておこうかな」
など、色んな解釈をします。それが「認知」です。それによって
A→イライラしつづける
B→友人にお誘いの連絡をする
C→店を出る
のように行動が変わります。
Bは楽しい予定が増えます。
Cはちょっと残念に思いますが、違う店を探して読書をするかもしれません。
Aはイライラが続いて読書どころではなく疲労困憊するでしょう。
このように、同じ条件でも人によってストレスになるかならないか、は様々なのが「ストレス」です。
ストレス、というと「ストレッサーを避ける」ことを中心に考えますが、ものによっては自分の「認知の仕方」を変えることで「ストレス反応」の形を変えてストレスを感じる場面を減らす、ということも可能なのです。
②ストレスとセットの「コーピング」
ストレスについて調べたことがある方は「コーピング」という用語も見たことがあると思います。
「ストレスコーピング」とはストレスの扱い方のことです。ストレス対処方法ですね。
大きく2種類あります。
1つは「問題焦点コーピング」です。
ストレスの元になっている状況・人・物に働きかけて、問題を解決する対処法法です。
明日の会議で大事な発表をしなければならず緊張している時。
関係者と事前打ち合わせをして発表手順について確認し、話す練習をして緊張度を下げる、などが該当します。
2つ目は「情動焦点コーピング」です。
情動、つまり気持ちや感情への対処を中心とする方法です。
上記の会議での発表で緊張している場合だと、前日は定時で帰宅して好きな映画を見て気分転換してリラックスしたり、会議直前に「気持ちが落ち着くおまじない」をする、などでしょうか。
どちらが良い・悪いということはありません。
ストレッサーの種類によって、どちらがより有効か、という問題だと思います。
どうしても今日中に納品しなければならない仕事が終わらない時は、上長に相談して対策を考える(問題焦点型)のほうが合っています。
顧客から理不尽なクレームを受けて落ち込んだ時は、必要以上に落ち込まないように自分を励ましたり好きなことで気分転換する(情動焦点型)ほうが合っているでしょう。
2.仕事の場で多いストレスとは?
仕事のストレスの特徴
ストレスは仕事に限らずどこでも感じるものです。
その中で「仕事のストレス」に特有の特徴とは、なんでしょうか。
1)契約関係にある(雇用契約、業務提携、請負、派遣)
2)責任をともなう(組織、顧客、業務)
3)自己実現と強く結びつきやすいため、負の影響が大きく出やすい
4)守秘義務があるため、悩み相談する相手を選ばなければならない
等が考えられます。
1)契約関係にある(雇用契約、業務提携、請負、派遣)
入社時、業務が開始される時にほぼ必ず「契約書」を取り交わすと思います。
特にどこかの会社に属して働く場合は「役務の提供」に対して「賃金」が支払われます。
お給料をもらうためには、契約内容に沿って、現場の指示や要望にそって働かなければなりません。
企業側には労働者への「安全配慮義務」がありますが、仕事の中のどんな場面でストレスを感じるかは千差万別です。
それでも「仕事だから=雇用契約を結んでいるから」やらざるを得ないことがほとんどでしょう。
結果として、無意識に無理を重ねることでストレスが高じてしまいます。
2)責任をともなう(組織、顧客、業務)
「1」と重なりますが、同じ組織で長く仕事をして経験や実績を重ねると、職位が上がっていきます。
メンバー→リーダー(主任クラス)→マネージャー(係長、課長、部長など)→パートナー(役員クラス)
などですね。
当たり前ですが、職位が上がれば責任も強くなり、範囲も広がります。
組織はその性質上ピラミッド型に人を配置します。上に行くほど下が増えていくのです。
職位に伴って権限が強くなるのは、責任とセットになっているからです。
ただ、その責任への対処方法を正しく理解していないと、必要以上に背負い込み過ぎることがあります。
仕事とは公的なものです。「やっちゃった」では済まされない場面も少なくありません。
その為慎重を期し過ぎてストレスが増大してしまいます。
3)自己実現と強く結びつきやすいため、負の影響が大きく出やすい
仕事はつらいものですが、100%つらい、ということでもありません。
プロジェクトが成功したり、ノルマを達成できたり、成績が部内でトップになれたり、顧客やお客さんから感謝されたり。
これらは仕事でしか得られない喜びです。
また、仕事だからこそ発揮できる自分の長所もあるでしょう。
自分の得意分野を発揮できるのは人として大きな喜びです。
それを感じられるからこそ、多少のつらさは我慢出来たりします。
それが強くなりすぎると、仕事の場=自分の人生そのもの、になってしまいます。
その時に仕事でミスしたり叱責されたらどうなるでしょうか。
自分の存在そのものを否定されたように感じて、他の人よりも傷ついて落ち込んでしまいかねません。
4)守秘義務があるため、悩み相談する相手を選ばなければならない
情報化社会、と呼ばれて久しいですが、仕事は「情報の山」です。
業務上の機密も、個人情報も、仕事をする上では取り扱わざるをえません。
そうした「情報まみれ」の仕事が原因で抱えた悩みもまた、情報のかたまりです。
誰かに聞いて欲しいといっても、「社外の人間には開示してはいけない」という一文も、契約に含まれているでしょう。
機密部分をぼやかして相談しても、根本解決にならない場合があります。
相談する相手が難しいのです。
結果として、誰にも言えないまま抱え込み続けて、対処が難しいレベルまでストレスが複雑化する危険があります。
3.ストレスは全部「悪」なのか?
ストレスとは、それが辛い時や体に影響が出てくるときに意識されやすいです。
なので「ストレス=悪」と捉えられてもおかしくありません。
しかし上述したように、「ストレッサー」自体は「出来事」に過ぎないので、良いも悪いもありません。
出来事をどの様に解釈するか、によって、それが自分にとって負担になるのか刺激になるのか、が変わります。
そして解釈の仕方は十人十色です。
例えば上記の「会議で大事な発表をしなければならなくなった」場面。
失敗したらどうしよう、と不安を募らせて夜もしっかり眠れなくなる人もいれば、
「大事な役目を任された!これまでの努力が評価された!」と奮起する人もいるでしょう。
どちらも当然あり得る反応です。
では自分が辛くなるような解釈をしてしまうことがダメなのか、というと、そうでもないと思います。
認知の仕方も、場面によっては「良い反応」を引き出すこともあるからです。
ストレッサー自体に悪いものは無い、それに対する解釈で変わる、解釈の仕方は人それぞれ。
ですから、もし禁止事項があるとすれば、他者の認知の仕方を「そんなんじゃだめだ」と決めつけることです。
誰もが同じ、という無遠慮な解釈が、更に誰かの認知をゆがめてしまうことへつながるのです。
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次回は「ハラスメントとライフイベント」について考えたいと思います。
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