発達障害者支援法と大人の発達障害
夫が・妻が発達障害のとき、様々な問題、すれ違い、違和感が起こります。
どちらか一方が発達障害というケースが多いと思いますが、夫婦ともに、という場合もあるでしょう。
どちらも発達障害なら問題ないのでは?と思われるかもしれませんが、むしろ顕在化します。
今回は生活環境の中で起きる問題事例と、対処方法について考えてみました
※「発達障害」と一括りにしておりますが、ADHD、ASD、LDそれぞれで該当する特徴は異なりますのでご了承ください。
1.発達障害の人はどんな環境が苦手?
①音・匂い・光・味
感覚過敏の特性を持っている方は多いと思います。
普通なら気にならない音がどうしても気になって集中出来なかったり、すごく遠い場所のバイクの音やサイレンが聞こえたり。
匂いについても同じですね。蛍光灯や太陽の光が辛い方もいます。
HSP(Highly Sensitive Person)も最近多いようですね。
HSPと発達障害の感覚過敏は少し違います。
発達障害の人は、例えば音そのものに対して苦痛を感じます。
HSPの場合は、大きな音が「怒っている人がいる」「暴力を振るわれるかもしれない」という恐怖と結びつくため、感覚というより不快な感情が強く喚起されてメンタルが不安定になります。
上記のHSPのような方は、認知行動療法などで音に対する認識を変えることで恐怖心を減らすことが出来る可能性があります。
発達障害の場合は、感覚に対して認知は絡んでいないので「馴れれば大丈夫」「我慢しよう」という問題ではありません。
一般的な人と音・匂い・光などに対する感じ方が異なるため、快適な環境条件を揃えるのが難しく、ストレスをためやすかったり疲れやすかったりします。
②他に気を取られやすい
特にADHDの方に多いと思います。
Aという作業に取り組んでいる時、横から違う案件について質問を受けると、そちらに全意識が集中して振り切ってしまいます。それまでやっていた作業については意識のかなたです。
「片手間」ということが出来ないので、A作業を進めながら質問に答える、ということが出来ません。
しかも質問に答え終わった後に、それまで何をしていたか、を思い出して前の作業に戻る、ということが困難です。
直前まで受けていた質問に関連して「そう言えばあれも…」と違う事柄に集中力が飛んでしまいます。そしてしばらくして席へ戻ってきて、A作業が途中のまま放置されていたことを思い出します。
子どものADHDはこれに衝動性も加わるので、じっと席に座って先生の授業を45分間聞き続けるのは至難の業でしょう。衝動性は大人になると軽減しますが、それもすべての人とは限りません。
本人はその場その場で全力で対応しているのですが、周囲から見ると「落ち着きがない人」と評価されてしまいがちです。
また、忘れ物が多かったり予定を忘れてしまいやすいのも、集中力が散漫になりやすい特徴からきていると思います。
③理解の仕方が他の人と違う
LD(学習障害)やASDの方に多いように思います。
LDの方は文章を読んで何かを理解することが苦手な方がいます。そうすると大人になって読書する機会が減るため、語彙を増やす場面も少ないです。
それでも今はインターネットやマンガ、アニメ、ゲームなど、書籍以外から情報を得ることは多いですが、周囲と「情報源」が異なるため、言葉に対する解釈や理解が異なり、使い方も違ってくるので、会話の内容を理解出来ない、または相手に伝わらないことがあります。
ASDの場合は自分以外の第三者の「視点」から物事を考えることが苦手です。
相手のことを考えていない、ということではありません。ASDなりの「相手の気持ちの理解」の仕方をしているのですが、それが一般の人とは違うために、やはりコミュニケーションでズレが生じてしまいます。
夫婦で生活していると、相手が何を言おうとしているのかが分からない、という以前に、「同じ意味としてこの言葉を使っているはずだ」という前提条件の中で会話をすることで行き違いが生じて、場合によってはケンカになってしまいます。
2.発達障害の人はどう考えている?
発達障害の当事者は、こうした特徴をどう考えているでしょうか。
感覚過敏については、持病のように「仕方がない」と受け止めて、自分なりの対処法を考えていると思います。
出来るだけ無音の環境を作ったり、イヤホンをしたり、サングラスや、自分では香り付き柔軟剤は使わない、香水が強い人とは距離を取る、など。
しかし周囲からは、「音が気になる」「匂いが強くて無理」と相談しても
『馴れれば大丈夫』『それくらい我慢すれば』
と、個人の努力(というより忍耐?)の範囲で対処するように言われて、耳栓やサングラスの使用を認めてもらえなかったり、奇異な目で見られたりして、「自分なりの対処法」を封じられてしまうことがあります。
他に気を取られやすかったり忘れ物が多いのも、
『もっと気をつけろ』
と言われるだけなことが多いでしょう。
どのように気をつければいいのか、が分からないため、途方に暮れてしまいます。
3.発達障害の人は何が辛いのか
発達障害の辛さは、自分の特徴が一般的な認識では理解してもらえない種類のため、非難の的になったり、努力不足と責められることでの二次障害ではないでしょうか。
『もっと気をつけろ』というのは、『注意が足らない』という『量の不足』として認識されているからのアドバイス(?)です。
しかし発達障害の不注意は、量の問題ではありません。本人なりにその場その場に集中して対処しているのに、集中力が迷子になって元へ戻れなくなることで起きる『質の違い』によるものなのです。
だから「もっと気を付けろ」と言われると、「これ以上気を付けるって、どうやって?」と、困ってしまうのです。
「もっと気をつけろ」というアドバイスもまた、理解が出来ず苦しみます。
何をどの様にいつどこで気をつければいいのか、が分からない、または他の人と違っているから、周囲からは「気を付けていない人」と思われてしまい、辛いのです。
4.夫婦で出来る生活環境調整はあるか?
①道具を使う
上述したように、感覚過敏に対しては道具を使うという方法があります。
耳栓、マスク、サングラスなど。
ただし、人によってはこの道具の感触も辛い場合があります。
〇時間だけなら大丈夫、とか、キーンという高い音は苦手だけどドン!という低い音なら大丈夫、など、人それぞれ特徴がありますので、苦手な音へ対処できる道具を探してみましょう。
②相手の言葉の使い方を知る
発達障害の人が使う言葉で、文脈的・文章的に「?」と思うものが出てくると思います。
その中で気になる言葉、つまり使い方が一般的ではない言葉があれば、その意味を聞いてみましょう。
「〇〇って今言ったけど、それどういう意味?」のように。
きっと素直に答えてくれます。そこで謎が解けます。
必要であれば「それは〇〇じゃなくて△△って言うんじゃない?」と提案してもいいでしょう。
大事なのは、使い方が違うだけで、言っている本人にはほとんど悪意はない、ということです。
分かりやすく、感情を絡めず訂正すればそのまま理解します。元々発達障害の人はIQの高い人が多いので。
③自分が相手のメモ帳になる
忘れっぽいことや予定はメモしておけば? と言っても、そのメモをどこに置いたのか分からない、必要な時に確認が出来ないのが発達障害です。
夫婦は常に一緒にいるので、自分が相手のメモ代わりになってしまうほうが、こちらのストレスも少なくて済みます。
上述したように、発達障害の不注意は量ではなく質の問題です。相手の努力とその成果を待ち続けてもあまり効果はありません。
100%を求めるのをやめる、というのも一つの方法です。
明らかに夕方雨が降りそうな日でも、傘を持っていかないかもしれません。こちらは心配しますが、本人は雨にぬれても平気だったりします。それなら本人の判断に任せましょう。
通院予定日や服薬など、忘れると影響が大きいものは、声かけだけしましょう。
「忘れても相手が教えてくれる」という安心感がしみつけば、リラックスして自分なりの対処法を思いつく余裕が生まれるかもしれません。
5.発達障害の環境調整は一般的にも役に立つ
これらのことを「発達障害の人のためだけにやる」と考えると、抵抗があったり不公平感があります。
しかし、発達障害に限らず、障害のある人への配慮は、一般の人の生活も楽にしてくれます。
障害診断を受けていない人でも、音が気になったり光が強いと辛い人は多いと思います。
それを我慢や努力で抑え込んで生活しています。
『対応できないわけじゃない。でもやらないで済むならそのほうがいい』
そういう環境の不具合があるのではないでしょうか。
蛍光灯が眩しすぎて辛い、でも暗いと字が読みづらい、というなら、明かりの色や電灯の位置、シェイドの形を調整してどちらにも納得がいく対策を取ることで負担が減ります。
また、発達障害の人が「これは出来ない」と言っていることを自分にも置き換えてみると、無意識に我慢していたけど出来ることならやりたくない、という「自分側の特性」にも気づけたりします。
生活は、どちらか一方にだけ合わせるのでは必ず破綻します。
お互いが納得できる方法をを見つけて、お互いが楽になれるように工夫してみましょう。
┏ ────────────────────────────── ┓
オンラインカウンセリング 惠然庵
【会社案内】
https://keizenan.net/company/
【オンラインカウンセリング 料金一覧】
https://keizenan.net/price/plan/
┗ ────────────────────────────── ┛