自分事として捉える
前回は「うつ療養生活で必要な条件」について5点考えてみました。
うつ療養中の過ごし方 ①回復までの変化と必要条件
今回は「家族の役割(出来ること)」について、掘り下げてみたいと思います。
「うつ療養に必要な条件5つ」に対して家族が出来ること
①通院、服薬
通院は、最初は一人では行きづらい人もいます。
まだ主治医に対して気を許せていないと、何か嫌なこと、自分を傷つけるようなことを言われるのでは、という不安が強かったり、通院する途中で周囲の目が怖かったり、一人だけだとドタキャンしてしまうこともあります。
病院側はそうなる事態も予想しているので、もし行けなかったとしても予約を取り直せばいいだけなのですが、「予約日時に無断キャンセルしてしまった」という事実が本人を必要以上に責めてしまうこともあります。
もし都合がつくなら、待合室まででもいいので同行出来ると安心でしょう。
また服薬についても、飲み忘れや勝手に服薬を中断する人もいます。
飲みたくないならその理由(副作用、抵抗感など)を含めて主治医に相談したほうがいいです。
飲んだり飲まなかったりを繰り返すと、効果が出てくる前に「やっぱり効かない」と、間違った学習をする可能性もあります。
「今日の分、飲んだ?」と声をかけてみましょう。
②睡眠、食事
まず一番影響が出るのが「睡眠」だと思います。
入眠剤を処方されても眠るタイミングがつかめず、結局朝方まで布団の中で目が開いていた、ということも珍しくないです。
当然、夜眠れないので朝から寝入ってしまい、生活リズムが狂います。
それでも、全く眠れないでいるほうが危険なので、最初のうちは昼夜逆転でも眠れているならOK、と、緩く見守ることをおススメします。
そして入眠剤の効果が期待したほどではないことを、通院時に主治医に相談しましょう。
入眠剤は寝入りばなだけ効果を発揮する「超短時間型」から、数時間効果が続く「長時間型」まで種類が豊富です。体格などによって用量も色々でしょう。入眠剤ではなく抗不安薬などのほうが睡眠に効果を発揮する人もいます。
ですので家族は
- ・夜間に眠ることを強要しない
- ・睡眠が乱れていることは必ず主治医に相談する(または本人に相談するようアドバイスする)
ようにしましょう。
食事も同様ですね。抗うつ薬の副作用は胃腸に出やすいです。
お腹が緩くなったり便秘気味になったりします。抗うつ薬はセロトニンに作用しますが、セロトニンは脳よりも腸内に豊富です。抗うつ薬の服用でお腹の状態が変化するのは当然かもしれません。それを考慮して抗うつ薬と一緒に胃腸薬を処方されることが多いです。
「1日3食しっかり食べる」ことが健康に良いとはいえ、「3食食べられない自分は駄目な人間なんだ」という思考になるのがうつ病の特徴です。
また体をほとんど動かさないので、以前より食べなくなっても不思議ではありません。
我が家の場合、メニューではなく、素材で聞いています。
そうすると、リンゴが食べたい、とか、お米じゃないものがいい、とか、またはタンパク質がいい、とか(笑)
その要望と自分が食べたいものをミックスしています。
③安心
これはまずは家族の側に必要な要素だと思っています。
うつ病の人は、そもそも病気によって強く不安を感じています。そう簡単に和らがないでしょう。
家族の不安は「家族がうつ病になった。これからどうなるのだろう」という、ある意味二次的な不安です。
うつ病が順調に回復して行けば、おのずと軽減していきます。
しかし、家族が本人以上に不安を抱えていては、うつ病へも影響します。
不安は隠しきれるものではない上に、うつ病の人は他者のマイナス感情に敏感になっているからです。
家族の不安とうつ病の状態は「ニワトリとタマゴ」のような関係だと思います。
ですから、家族がうつ病について知り、うつ病の回復以外の不安要素を解決して不安な気持ちを減らしていくと、うつ病へも良い影響が出て、それがまた家族への安心材料になるでしょう。
その為には、家族は不安を抱えないことが大事です。
信頼できる相手に相談し、必要な支援を活用しましょう。
④コミュニケーション
家族がうつ病になった時「どんな風に声をかければいいか分からない」というお悩みを多く聞きます。
病気以前とはまるで別人のような反応をしてくるのですから、戸惑うのは当然ですよね。
また、「頑張れ」と言ってはいけない、のように、広く知られたルールもあります。
こちらが想定した意図とは違う解釈をして、怒ったり傷ついたりしてしまうのがうつ病です。
では、家族はどうすればいいか。
うつ病の人は、自分が世界から拒絶されていると思っています。それが職場などの「外部」の人ならまだ我慢も出来ますが、家族から拒絶されては行き場が無くなってしまいます。
まずはあるがままの目の前の状態を受け容れて、見守りましょう。
特別な声かけだけがコミュニケーションではありません。
むしろ、言葉ではない「非言語コミュニケーション」が、人との交流では8割を占めると言われています。
そっとしておく、起きてきたら挨拶する、出掛ける時は行き先と帰宅予定時間を伝える、欲しいものはないか聞く。
今までなら無意識だった交流が、「家族からは拒絶されない、今まで通りでいられる」安心感に繋がります。
⑤好きなこと
うつ病本人が何を好きなのか、によりますが、元気にさせたい・元気な姿が見たいから、と、以前の趣味を強要しないようにしましょう。
好きなことへの興味が失われるのも、症状の一つです。そして、好きだったことが楽しくなくなってショックなのは本人です。
うつ病になっても、何かしら好きなことや楽しいこと、興味がもてることを探すのが上手な人もいます。
その時は突飛なもの(お金がかかり過ぎるもの、家族に多大な影響を及ぼすもの、違法なもの)でない限り、見守りましょう。
自分だけでは見つけられそうもない時は、家族が自分の好きなことを楽しみましょう。
出来ればうつ病の人の前で。「背中を見せる」の応用ですね。
楽しんでいる姿を見ながら、少しずつ「自分も何かやってみようかな」という自発性が刺激されます。
何より家族自身も好きなことを出来ていればストレス解消になります。
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長くなりすぎたため、第2回はここまでにしておきます。
次回は
・セオリー通り進まないのがうつ療養の実際
・セオリーから外れた時はどう対処したらいいか
について、考えてみたいと思います。
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