家族がうつ病でもメンタルを保つ方法

西岡惠美子

西岡惠美子

テーマ:ケアラー支援

家族がうつ病でもメンタルを保つ方法
家族が病気になった。
それはとても重大で深刻な家族の課題です。
病気になった家族を皆で介護・看護しなければいけない。
とはいえ、自分にもやるべきことがあり、心があり、人生があります。
何もかも放り出して献身し続けると、今度は自分が病気になる危険があります。

家族が病気、特にうつ病(精神疾患)になった時、自分のメンタルを保つためにどんな方法があるか、を、考えてみました。

方法①自分を責めない

方法、というより、心がまえですね。
病気に限らず、何か喜ばしくない事態が起きた時、「どうしてこうなった」と原因を探ろうとします。

原因を考える時、当然ですが「自分目線」で考えます。
自分に見えているもの、知っていること、感じたことが、原因や理由やきっかけとして浮上します。
そしてそこにある共通点を見出します。
「自分」です。
そして自分を責め始めてしまいますが、それはとても偏った分析と判断です。
家族の病気が自分のせいだ、と思い込むのはやめましょう。

方法②好きなこと・楽しいことを続ける

うつ病の人は生活に必要なことだけでなく、それまで好きだった趣味も楽しめなくなります。
そうした姿を見ていると「自分だけ楽しい思いをするのは申し訳ない」と感じてしまうのが人の情です。
しかし、自分のメンタルを保つためには、そういう時こそ好きなこと・楽しいことをやりましょう。
そこから活力をもらいましょう。
メンタルの力は、体力とは違い一晩寝れば補給される、というものではありません。
何かから活力を得て、それを使って難しい問題へ立ち向かうのです。
エネルギーが切れてしまってはうつ病になった家族との療養生活を乗り切ることは難しいでしょう。

方法③「ねばならない思考」から離れる

うつ病について色々調べるご家族は多いと思います。
書籍、インターネット、経験談など、いくらでも情報はあふれています。
そのどれもが役に立つ要素を含んでいると思いますが、全部が自分たちに当てはまるものでもありません。

しかし、うつ病になる人だけでなく、そのご家族もまた、とても生真面目な人が多いため、自分達家族に合っているかそうでないか、よりも、見聞きした情報をそのまま「ねばならないルール」化し、自分たちを縛ってしまいがちです。

例えば「うつ病の人を励ましてはいけない」というルールがあります。
「早く元気になってね」「頑張ってうつ病を治そうね」「頑張ればすぐ元通りになれるよ」
といった言葉が逆効果な人は多いと思いますが、「励まし」とは、色んな方法や効果があり、それも人によって千差万別です。

うつ病の人の性格や回復度合いによっては、「何もしなくていいんだよ」が、「何も出来ないだろう」「何も期待していないよ」「役に立たないんだから」のように変換されて、小さく芽吹いたやる気を潰してしまうこともあります。

大事なのは一般的なルールを厳守することではなく、目の前の家族の個性と状態です。

方法④時間は味方

辛い体験をしているときは、1分が1時間にも感じるのは、誰もが経験していることだと思います。
家族がうつ病になったときは、その「1分」の連続です。
3か月後が永遠に訪れない未来に見えたり、やっと3ヶ月経ったと思ったら、その間の辛さと釣り合いが取れるような結果(回復)が得られずに、落ち込んだり途方にくれたりするでしょう。

しかし、時間そのものは、こちらの感じ方とは別に確実に経過しています。
辛く長く感じても1分、気がつけばあっという間の1分も同じ「1分」です。
そして時間が経過すれば、状況は必ず変わります変化はきっかけになります。
見逃さななければ良い方向へ向かうためのヒントを掴めます。

時間は味方になってくれるので、焦らないことが大事です。

方法⑤出来ないことは人に頼る

うつ病から回復するためには、色んな要素が必要です。

  • 医学的治療
  • 生活習慣の工夫・改善
  • 生活費・収入の見直し
  • 職場への復帰方法
  • 家族内の役割分担の変更
  • 療養環境を整える
  • 将来設計の見直し

等。

うつ病本人は、自分の病気と向き合うことで精いっぱいですから、それ以外の「一次担当」は家族となります。
しかし、家族が全部を最後までやり遂げることは出来ないし、その必要もありません。

職場への復帰は、うつ病本人・職場の責任者・産業医・主治医で相談して決めるものです。
生活費の見直しが必要な場合、ファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家の意見が役に立ちます。福祉制度を利用するときは市役所や福祉の専門家に任せましょう。
うつ病そのものは、主治医がいます。主治医のいいなりになれ、という意味ではありません。信頼できる医師と出会えるまで転院していいですし、出会えたら情報共有しながら寛解まで付き合ってもらいましょう。

共倒れしかねないご家族は、人に頼ることが苦手な方が多いです。
この機会に、人に頼る・甘えるスキルを身につける、と考えるのもいいかもしれません。

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「家族は一次担当」と上述したように、一旦は家族が引き受けますが、それを更に専門的立場にある人につなぐ役割だと考えてもいいでしょう。
「エスカレーション」と言います。
そして専門家は、家族にしか出来ないことがあることも承知しているので、その時は家族に仕事が下りてきます。それを果たせばいいのです。

家族が自分のメンタルを保つことが、ひいてはうつ病療養へ大きく貢献するのです。

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