コンプレックスにどう向き合うか
前回は「自己肯定感が低い状態」について考察しました。
≪コラム ≫自己肯定感が低いときは
私の考えでは、自己肯定感が高いか低いか、が問題ではなく、低い状態によって引き起こされる、自分にとって喜ばしくない事態への対処が必要だ、と述べました。
とはいえ、自己肯定感がある程度のレベルをキープしているほうが、いろんな場面で便利ではあります。
では、自己肯定感を育てるためにどんなことが出来るでしょうか。
1.自己肯定感の高さは「結果」
「自己肯定感を高めたい」という気持ちはよく分かります。
しかし、これが目的になってしまうと、何をしたらいいのか分からない迷子になってしまわないでしょうか。
Aをやったら自己肯定感が〇ポイントアップ、のような、そういう仕組みではないからです。
私は、自己肯定感(今の自分を自分でOKだ、これでいいのだ、と認める感覚)をどれくらい持っているか、は、多様な経験や行動の結果だと考えます。
なので、自己肯定感を高めるために〇〇しよう、というのではなく、普段の生活の中で積み重ねていくものの結果として高まったり下がったりするもの、ではないでしょうか。
2.自己肯定感に関与する要素とは
では、普段の生活や、自分自身の考え方が、どのように自己肯定感に関わっているのでしょうか。
以下の5つがあげられます。
①落ち込んでも元気になる力
②自分の長所を見つけて評価し、活用する力
③自分の権利を認識する力
④周囲からの支え
⑤成功体験
①~③は、今既に自分が持っているものです。
④は外から得るもの。
⑤は過去得たもの、またはこれから得ていくものです。
一つずつ見ていきましょう。
①落ち込んでも元気になる力
メンタルは、よくゴムのボールにたとえられます。
丸いゴムのボールは伸縮自在です。指で表面を押すとその形に凹みます。このへこみが「ストレス反応」で、指が「ストレッサー(ストレスの原因)」です。
指をどけるとゴムボールは元の形に戻ります。
メンタルも、ストレッサーが無くなれば元の状態に戻るなら、健康といえます。
戻らない時に、適応障害やうつ病などの症状へ発展していきます。
何かショックなこと、辛いことがあっても、あとからまた元の状態へ戻れる自分を信じていることで、多少のトラブルは怖がらず対処することが出来ます。
対処できる自分に対して、「これでOKだ」と思うことが出来ます。
②自分の長所を見つけて評価し、活用する力
「長所」と言うと、咄嗟に履歴書に書く「長所・特技」欄を思い出しませんか?
または自己紹介スピーチの時などですね。
ここ一番の勝負の場で自分を引き立てるための材料だ、と考えるから、難関資格持ってるとか何かの大会で優勝したとか、すごいモノじゃなきゃ長所とは呼べない、と思っている方もいると思います。
しかし長所とは、誰かに「すごい」と褒められなければいけないものでも、見せびらかすものでもありません。
困った時や辛い時に自分を助けてくれる「便利ツール」です。
子どもの「お道具箱」に入っている、ハサミやクリップ、ノリのようなものです。
人より歩くのが早い、紙の枚数を数えるのが得意、味やにおいに敏感。
または、両親と同居⇒風邪を引いても看病してくれる人がいる、独身⇒好きなことに何でもチャレンジできる、のように捉えることも出来ます。
③自分の権利を認識する力
「権利」とは、とても幅広い概念だと思います。
憲法で保障されている基本的人権や、その他法律で保障されている権利もたくさんあります。
普段は意識することがあまりないかもしれません。
逆に、「自分なんかが〇〇(権利)を要求してはいけない」というように、持っているはずの権利を否定してしまう人もいます。
更に、女性に多いのですが「自分は成功してはいけない、幸せになってはいけない」と考えるケースもあります。
そう考えてしまうのは、その人なりの背景があるのだと思います。それはきっと、あまり楽しい背景ではないのでしょう。
しかし、自分には人として尊重され好きなことをやって幸せになる権利がある、と知っていることは、「自分自身を大切にする感覚」を育てるためにとても重要です。
④周囲からの支え
次は外部からの力です。
自己肯定感は、外部からとても影響を受けます。
例えば「①落ち込んでも元気になる力」を持っていて、辛い出来事から無事立ち直ったのに、周囲から「あんなことがあったのにもう元気になるなんて、図太いね」と言われたらどうでしょうか。
折角元気になったのに、元気になったことが悪いことかのようです。
逆に中々立ち直ることが出来ず、そういう自分にさらに落ち込む悪循環が起きているときに、「すぐに元気にならなくていいよ、今はゆっくり休んでいてね」と言ってもらえたら、気持ちが楽になって気がつけば元気を取り戻しているかもしれません。
周囲の環境や人たちとどんな関係を構築しているか、も、重要な要素の一つです。
⑤成功体験
自己肯定感と似た言葉に「自己効力感」というものがあります。
【自己効力感(セルフ・エフィカシー)】
自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できると、自分の可能性を認知していること。
(wikipedia)
簡単に言うと「自分なら出来る」と信じられる感覚のことです。
自分は出来る、と思うためには、その行動または似たような体験を成功させた経験が必要です。
初めての場面では、「出来るかな、大丈夫かな」と不安を感じるのが普通です。
その時に「あの時〇〇は出来たんだ、だからこの△△も出来る」と思えると、「自分で自分のことを「OK」だと思う」ことが出来、自己肯定感を保つことが出来ます。
3.自己肯定感に必須なのは「自分軸」
他の人の意見や自分への評価が気になるのは当たり前のことです。
しかし、それをまるっと自分へ当てはめようとするのは無理があります。
童話「シンデレラ」のガラスの靴の持ち主を探す場面を思い浮かべてください。
お姉さんたちは自分のものではないと知りながら、無理矢理ガラスの靴を履こうとして苦労をした挙句別人だとバレてしまいます。
自分の足のために作られた靴ではないのだから、当然ですよね。
自分軸とは、自分のための自分で作る指針です。
当然、他人の軸とは違います。違っていていいんです。
何か言われても「あの人の軸はそうなんだ。でも私のはそうじゃない、それだけのことだ」と、違うを認めて引き摺られることがありません。
それによって不用意に自分への肯定的な見方を損なうことも無くなります。
①~⑤の要素を育てる中で、「自分はこういう人間でありたい」という軸が少しずつ見えてきます。
その軸に沿って生活していくと、気がつけば自己肯定感は、気にする必要がないほどしっかりと育ってくれていることでしょう。
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