家族が出来るうつ病ケア術4つ

西岡惠美子

西岡惠美子

テーマ:ケアラー支援

家族が出来るうつ病ケア術4つ

家族がうつ病になると、「自分にも何か出来ることはないか」と色々考えると思います。
うつ病ケアに必要なものは色々ありますが、では家族が出来ること・家族しか出来ないことは何か、をまとめました。

1.うつのケアに必要なもの

うつ病を改善するために必要なものは、以下の5点です。

①専門家による治療(服薬、心理療法)
②十分な休養(身体、メンタル両方)
③周囲の理解
④療養に適した環境調整
⑤生活改善

そして、うつ病を改善するためには、様々な人・機関が関わってきます。

①病院
②カウンセラー、その他悩みの相談機関
③勤務先
④市役所をはじめとした公的機関
⑤うつ病本人
⑥同居家族
⑦その他家族、知人友人、ご近所さん

うつ病の症状や回復度合い、発病してからどれくらい期間が経っているか、などによって、必要なものや関係者も変わってきます。
しかし、唯一変わらないのは、本人と同居家族です。

2.関係各所の役割

うつ病療養のメインは当然うつ本人ですが、病院(主治医)の関与も絶大です。
ただし、「主治医が全部解決してくれる」と思わないようにしましょう。
なぜなら医師は、病気かどうかを診断して、それに必要な治療(投薬、療法、指導)を行うのが仕事だからです。
うつ病が理由で家族とのケンカが増えた、復職後の不安、生活資金の枯渇、など、うつ療養中には色んな問題や悩みが出てきますが、主治医がそれを聞いてくれるとは限りません。
アドバイスはもらえるかもしれませんが、本来は医療の範疇外です。

病院→病気の症状への対処をするところ
カウンセラー→心の悩みなど、うつ病に付随して発生した問題を相談するところ
勤務先→休職~復職後の処遇を相談するところ
公的機関→療養中に利用出来るサービスが無いか相談するところ


です。

3.うつ本人の役割

うつ病本人がやることは、まずは自分自身のケアですね。

①十分な休養
②主治医の指示通りに服薬し、通院し、その時の状態を伝えて適切な診断をもらう
③スモールステップで出来ることを増やしていく

などです。
そして一番大事なのは、「どうしていきたいか」を考えることです。
これはとても大きな課題で、簡単に出来ることではない上に、うつ病で思考力が低下している状態では中々取り組めません。

ただ、この先の人生をどう過ごしていきたいのか、うつ病を踏まえた上でどうありたいか、は、本人でなければ決められません。
そして、本人の「どうしたいか」が、うつ療養とその後の生活再設計の際の主軸となります。

4.家族が出来ること


以上を踏まえて、では、家族が出来ること/家族にしか出来ないこととは何でしょうか。

①服薬の手伝い

うつ病治療に使われる薬は、効果が出始めるまでに一定期間かかるだけでなく、身体への副作用が色々出てきます。
薬本来の効き目よりも先に副作用が出てしまうこともあるため、
「この薬は自分に合わない」
「飲むと余計具合が悪くなる」
と、飲むことを自己判断で止めてしまう人も少なくありません。
しかし、それは主治医もよく分かっているため、最初に「効き始めるまでに数週間かかる」と説明があったはずなので、それを思い出してもらいながら、必要なタイミングで必要な分飲んでいるか、の声かけを行いましょう。

飲んでいない時は、どうして飲んでいないのか、の理由を聞いて、「次の通院で先生に相談しよう」と提案しましょう。

②栄養を取らせる

うつ病の人のほとんどは食欲が減退するか、または普通の食事は取らずにお菓子やジャンクフードばかり食べる偏食傾向が高まります。
偏食については、たまにであればストレス解消や気分転換にもなりますが、毎回では身体の健康まで脅かしかねません。
ビタミン、タンパク質、ミネラルといった必要な栄養素だけでも摂取できるよう手伝いましょう。
一時的であればサプリメントなども活用しましょう。
味噌汁、カレー、シチューなどは、作るほうも楽ですし色んな具材を入れられて効率的です。

③「死にたい」と言われたらしっかり話を聞く

うつ病と希死念慮は切っても切り離せません。
それも一度や二度ではなく、彼らのすぐ隣に「死にたい気分」が居座り続けています。
本人も必死で否定しますが、何かの拍子に「死にたい気分」に押し負けることがあります。
その時は「バカなこと言うな」と拒否せず、その時の本人の話をしっかり聞きましょう。
聞く家族もめちゃくちゃしんどいです。怖いし不安だし、もしもを想定して一緒に泣いてしまうかもしれません。
でもそれでいいし、そうした態度こそがうつ病の人の支えになります。

そして必ず主治医と連携を取りましょう。

④自分がうつ病にならないようにする


一番大切なのは実はこれです。
うつ病本人の生活や症状にばかり気を取られて、自分自身のケアを全くしない人も少なくありません。
そうなってしまう気持ちはとてもよく分かります。少なくとも自分は病気ではないのだから多少の無理は出来る、と考えて後回しにしてしまいます。
しかし、人はそんなに強くないしキャパも大きくないです。
どこかで限界が来たり、気が緩むタイミングがあります。
そこでぷつっと糸が切れたように、家族側が停止してしまいます。
一番怖い「共倒れ」です。
お互いに動けなくなれば、悪くなる一方か、または更に回復に時間がかかります。

その為にも、家族こそ自分自身のケアをしっかり行いましょう。

好きなことは何ですか?
一人の時間を持てていますか?
自分をたくさん褒めましょう、褒めてくれる人を探しましょう。

------------------------------------------

家族は、うつ病に対して直接何かをしようとしなくていいと思います。
それは医師とうつ病本人の仕事です。
家族が出来ること/家族しか出来ないことは、うつ病療養がスムーズに進むように周辺環境を整えることです。
そして、周辺環境とは、家族自身も含まれます。
なので、家族は自分自身も守って大事にケアしましょう。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

西岡惠美子プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

精神障害者とケアする人を支えるライフカウンセラー

西岡惠美子プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼