英検1級道場-SKYPE TAKEN OFFLINE DUE TO NET PROBLEMS

GDPは国の経済力を表す指標の一つです。
日本のGDPは約600兆円。そのうち、個人消費が60%(360兆円)。
そうすると、単純に考えて、物価が2倍になれば個人消費も2倍になります(720兆円)。
つまり、単純に考えると、物価が上がるだけでGDPは増大するはずですが、この議論は正しいのか?という点で考えてみました。
「単純に考えて」という条件を厳密に置けば、この議論は基本的に正しいと言えるはずです。
ただし、ここで増えるのは 名目GDP(nominal GDP) であって、実質GDP(real GDP)=実際の生産量・経済活動の規模ではありません。
ここを区別すると、疑問がきれいに解けます。
1. GDPは「価格 × 数量」の合計
極端に単純化して、
GDP = 価格(P)× 生産量(Q)と考えてみます。
最初が、100円 × 100個 = 10,000円 だったとします。
物価だけが完全に2倍になり、生産量がまったく変わらなければ、200円 × 100個 = 20,000円
となります。
したがって、名目GDPは2倍になります。
しかし、作った商品は100個のままです。国民が以前より多くの商品やサービスを生産したわけではありません。
そこで物価上昇の影響を取り除いて、「価格が以前と同じだったらGDPはいくらだったか」を計算するのが実質GDPです。
つまり、こうなります
名目GDP → 2倍
実質GDP → 変化なし
2. 「個人消費60%」で考えると
GDP = 600兆円
個人消費 = 360兆円(60%)
そして、個人消費の対象となる物価だけが一律2倍になり、購入するモノ・サービスの数量はまったく変わらないと仮定します。
すると、360兆円 → 720兆円 になります。
他のGDP構成項目がまったく変わらないと仮定すれば、こうなります。
600兆円 − 360兆円 + 720兆円 = 960兆円
したがって物価が2倍になっただけで、名目GDPが600兆円から960兆円に増えるという計算は、その仮定の下では正しいです。
さらに、消費だけでなく、設備投資、政府支出などを含め、国内で生産されたすべての最終財・サービスの価格が一律2倍になり、数量がまったく変化しないと仮定すれば、名目GDPは 600兆円 → 1,200兆円 と、ほぼ2倍になります。
3. では「日本の経済力が2倍になった」のか?
ここが一番重要で、答えはNOです。
たとえば、今年、名目GDP 600兆円 だった日本で、翌年すべての価格と賃金が突然2倍になったとします。
名目GDP 1,200兆円
平均年収 500万円 → 1,000万円
ラーメン 1,000円 → 2,000円
家賃 10万円 → 20万円
すべてが完全に2倍になっただけなら、人々が買えるモノの量は変わりません。
ですから、こうなります
名目上の経済規模は2倍
実質的な経済規模は同じ
これが、ニュースで「名目GDP」と「実質GDP」を分ける理由です。
4. さらに「ドル換算GDP」では為替が入ってくる
実際にはGDPそのものは各国の通貨でも計算されます。日本なら円建てGDPがあります。それを国際比較するときにドル換算することが多いのです。
仮に、日本のGDP = 600兆円 1ドル = 150円 なら、
600兆円 ÷ 150 ≒4兆ドル です。
物価が2倍になり、円建て名目GDPも完全に2倍になったとします。
1,200兆円
為替が150円のままなら、
1,200兆円 ÷ 150 = 8兆ドル です。
つまり、ドル建てGDPも2倍になります。
しかし、物価と賃金が2倍になるのと同時に為替レートが、1ドル = 150円 → 300円 になったとすると、1,200兆円 ÷ 300 = 4兆ドル となり、ドル建てGDPは元と同じです。
これはかなり重要なポイントです。国際比較で使われるドル建て名目GDPは、「国内の実質的な生産量」だけでなく「国内物価」と「為替レート」の両方から大きな影響を受けます。
5. ですから「GDP=国の経済力」には注意が必要
最初の 「GDPは国の経済力を表す指標の一つ」という理解はよいが、より正確には、何を比較したいのかによって、見るGDPを変える必要があります。
たとえば、こういう使い分けが必要です
国内経済が本当に成長したか → 実質GDP
経済の金額としての大きさ → 名目GDP
世界の中でドル換算して経済規模を比較したい → ドル建て名目GDP
国ごとの物価水準の違いをある程度取り除いて生活水準・生産力を比較したい→ 購買力平価GDP
「物価が上がるだけでもGDPは増えるのでは?」
YES。名目GDPは増えます。
「では国が豊かになったのか?」
必ずしもそうではありません。物価上昇分を除いた実質GDPを見る必要があります。


