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ある記事を見ていたら、コベントリーというイギリス・ロンドン郊外の町の名前を見つけました。
この町に関する悲しい出来事を思い出したので、シェアします。
1939年9月1日。
ナチスドイツはポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発しました。
その2日後、英仏はドイツに対して宣戦布告します。
その後しばらくは、両者にらみあいの体制で大規模な作戦はなく、Phony War(たそがれ戦争)という時期が続きます。
1940年5月、ドイツはオランダ、ベルギーに攻め込み、フランス軍を蹴散らし、パリを陥落させます。
そして海を渡ってイギリスに侵攻する準備を始めました。
それは、ドイツ空軍を総動員したイギリスの主要産業に対する大規模空爆です。
ロンドン市民は、子供を田舎に疎開させたり、地下鉄に避難したりしながら、空襲を回避しました。
これを、Battle of Britain と呼び、英国民はこの抵抗活動を誇りにしています。
こうした中で、ある悲しい事件が起こりました。
その事件の真相は、国家の最高機密が公開されたときに判明し、チャーチルの第二次大戦回顧録(ノーベル文学賞受賞)にも、ページが割かれています。
ドイツ空軍を迎え撃ったのは、スピットファイアという優秀な戦闘機でした。
スピットファイアのエンジンは、Merlyn Engineと呼ばれ、高級車で有名なロールスロイスが製造していました。
*現在も、ロールスロイス社は、航空機のジェットエンジンを製造しています。最新はBoing 787
*Merlynは摩訶不思議なもの--というほどの意味を持つ形容詞であり、アーサー王伝説の中にも登場します
そのエンジン工場がコベントリーにあり、ドイツ空軍はここを壊滅させようと企てました。
当時、イギリスはドイツ軍が使用していた暗号機を手に入れて分析し、ドイツ最高司令部の作戦はすべて解読していました。
コベントリーへの大空襲も事前に暗号を解読し、わかっていたことでした。
しかし空襲前に避難命令を出すと暗号が解読されていることがドイツにわかってしまうので、チャーチル内閣はそれを出しませんでした。
ドイツ軍に暗号が解読されていることを知られ、暗号を変えられたら、その後の作戦遂行に大きな障害となるので、一部の国民の犠牲は仕方がないと判断したのです。
そのため、コベントリーは大空襲を受けて壊滅し、人命に甚大な被害が出ました。
戦争という国家と国家の力比べを遂行するために、非情な政治的決断がなされたということです。
このことは、いつの時代でも起こります。
国全体を守るために、政策者は政治的に非情な決断をしなければならないときがあるということです。
私たちは平和な時代に生きています。
コベントリー市民が被ったような事態は想像もできません。
しかしながら、忘れてはならない、記憶にとどめておくべき歴史的事件です。
上記の情報は、ロンドン在住時、BBC特別放送で視聴したものです。
戦勝国であるイギリスでは、この内容は好意的に捉えられていた印象です.
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因みに、イギリスでは、海軍はRoyal Navy(王立海軍) 空軍はRoyal Air Force(王立空軍)というのが正式名称です。
すなわち、エリザベス女王が軍の最高司令官なのです
もう一つ、ドイツ軍が使っていた暗号を組む機械は英語でEnigma(エニグマ)。
Enigmaticという形容詞は、「摩訶不思議な力をもった---」というほどの意味です。
さらにもう一つおまけです
モナ・リザの「謎の微笑み」をenigmatic smile と言います