働き方:withコロナのテレワークとは:リモートで働くことを考察する

小川芳夫

小川芳夫

テーマ:働き方

このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象として書いています。

コロナ禍の中で私たちの多くはテレワークを経験しました。そして、withコロナの今、テレワークとオフィスへの出社を合わせたハイブリッドな働き方をしている人も多いと思います。

私はグローバルプロジェクトに参画した経験があります。米国、欧州、アジア、南北アメリカの国々の人たちと協働しました。協働の仕方は、メールや Slack などの非同期な協働と、電話会議やオンライン会議など同期な協働でした。電話会議やオンライン会議では、時差の関係で日本の夜の時間帯に協働することが多く、働き方としては自宅からテレワークをしていました。日中はオフィス出社を基本として、必要に応じてテレワークをしていたということになります。ハイブリッドな働き方です。

そのような私の経験からの観点と、日本テレワーク協会 など一般に言われていることをあわせて、下表を作りました。(タップやクリックで拡大します)
テレワークのメリットとデメリット

このコラムは、上表を参照しながら、テレワークのメリットとデメリットを整理し、withコロナの今、デメリットを解決するためにはどうすれば良いのかを考えます。


このコラムは次の3つの章で構成します。15分程度で読める内容です。


私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのためのお手伝いをしたい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。


1. テレワークのメリット

この章では、冒頭の表のテレワークのメリットの部分を説明します

1.1. 時間の使い方に柔軟性が生まれる

通勤時間がなくなるので、その時間を家族との団欒に使ったり、散歩したり、家事をしたり、趣味に使ったりすることができます。


1.2. 柔軟な働き方ができる(場所・時間にとらわれない)

田舎の親の介護や面会で帰省し、実家から仕事をしたりできます。ワーケーションで気分をリフレッシュしながら働くこともできます。


1.3. 妊娠・育児・介護などの理由、障がい、あるいはケガなどにより、恒常的または一時的に通勤が困難な人でも働ける(ほぼ毎日在宅勤務でもOK)

例えば、妊娠中の人、育児中の人(女性でも男性でも)、介護する必要のある人、障がいのある人、ケガで通勤が困難だけど自宅で椅子に座ることは問題ない人。出勤困難だから休暇を取得するということではなく、働いてもらうことで従業員の力を最大限引き出すことができます。

優秀で働きたいという人のモチベーションを引き出すことができます。

時間短縮したりフルタイムで働いたり、勤務時間は柔軟にするべきでしょう。例えばケガの場合、治癒するまで、ほぼ毎日在宅勤務でもOKとするべきだ、と私は考えます。


1.4. 企画・総務・人事・経理などの管理部門、研究・開発部門の人、営業やSE、サポートサービスなどお客様対応業務の人でも工夫次第でできる

ホワイトカラーの業務の多くの人はテレワークできる可能性があります。

例えば営業はコロナ前からモバイルワークでお客様の近くのカフェなどで働いていました。そして、数年間のコロナ禍を経て、営業活動が非対面でも可能であることがわかりました。

研究室で研究・開発している方は、研究や開発設備を家に持って帰れない(そもそも研究試薬を家に持ち帰るなんてナンセンス等)という方もいらっしゃると思います。そのような場合は出社する日とテレワークする日(研究データの分析など)のハイブリッド型になるのでしょう。

コロナ禍の中、デジタルツインを活用して、ホワイトカラーでなくてもテレワークできるようにした現場の事例もあります。一例は日経XTECHの記事『「デジタルツイン」が勝負を分ける』です。


1.5. 従業員体験を向上することができる

顧客体験 (Customer Experience、CXと略される) という言葉をご存知の方は多いと思います。

顧客体験と対になる言葉として、自社の従業員が仕事を通して体験すること、従業員体験(Employee Experience、EXと略される)という言葉があります。従業員体験を向上させることが大切だと言われています。テレワークのメリットを享受できることは、仕事を通しての満足感を向上させることにつながります。従業員体験を向上している企業は生産性が向上しているそうです。


1.6. 優秀な人材を採用することができる・継続確保できる

例えば、何かの理由で東京に出ることができないので地元に住んでいる。こんな優秀な人がいるとしましょう。東京の会社がテレワークを全面採用していなかったら、この人は地元の会社で働くしか選択肢がありません。しかし、東京の会社がテレワークを全面的に採用していたら、この人には選択肢が増えます。東京の会社で働くのか、地元の会社で働くのか、物理的距離という制約がなくなります

そして、優秀な人の争奪戦が始まります。従業員体験を軽視する会社は、そもそも選択肢に上がらない時代がすぐ未来にある、と私は考えます。

また、例えば親の介護の必要があり田舎に移住することになった人。テレワークを採用していない会社なら退職するしかありません。テレワーク可の会社なら田舎から働くことができます。優秀な人を確保できます。

2020年9月9日の日経記事に『世界のCEO、「人材流出に懸念」2割 KPMG調査』があります。
『国際会計事務所の KPMG インターナショナルが世界の最高経営責任者(CEO)を対象に実施した調査によると、今後3年間の企業の最大のリスクについて「人材の流出」との回答が21%と最も多かった』とのことです。調査は2020年1~2月に日本など主要11カ国の CEO 1300人を対象に実施し、コロナ拡大後の7~8月にも315人に追加で調査したそうです。

KPMGのディレクターの方の指摘によると地域や国を超えた人材獲得競争が激しくなっており、多くの企業が危機感から採用戦略の変更を検討しているとのことです。

日本のビジネスパーソンの中には英語OKな優秀な方、外国語OKな優秀な方が多くおられると思います。
私は、この動きは要注意だと思います。


1.7. 従業員の自律を促すことができる(生産性向上につながるかも)

メンバーシップ型で指示待ちの人は、テレワークには馴染みません。テレワークは勤務時間ではなく、成果での評価になります。従業員が自律することが必要です。この変化を促す仕組みを会社として構築することが必要だ、と私は強く思います。会社として構築するので CEO の決断が求められます。これがうまく機能すれば、生産性向上につながるかもしれません。


1.8. 通勤費やオフィス・コストを減らせる可能性がある

テレワークの頻度によっては、定期代を支給しなくても良いかも知れません。都度交通費精算したほうが安い可能性があります。また、全社的にテレワークを採用するのなら、オフィス面積を減らせるかもしれません。郊外に移転することが可能なら、都心よりも安くなります。


1.9. 事業継続性を確保できる

甚大な自然災害が毎年のように発生しています。例えば、ある課の従業員が東京、北海道、北陸、近畿、沖縄に分散していたとしたら、自然災害が発生しても、その課の業務が継続できるかもしれません。東京、北海道、北陸、近畿、沖縄の各所にサテライトオフィスを作る必要はありません。テレワークすれば良いのです。そのためには、Aさんの仕事をBさんでもできる、といったことができることが前提になります。これが実現できれば、富士山が噴火しても、首都直下地震が起きても、南海トラフ地震が起きても、業務を継続できるかもしれません。

私は、テレワークによる事業継続性の確保はとても重要だと考える者です。


1.10. 海外を含めれば24時間体制をとれる(フォロー・ザ・サン)

テレワークを海外に広げたとします。例えば、日本、ヨーロッパ、米国。太陽は(日中は)日本からヨーロッパに移り、そして米国に移ります。太陽を追いかけるという意味で、フォロー・ザ・サン(follow the sun)と言います。

チームで何かを共創するようなプロジェクトなら、24時間体制で取り組むと、効率が上がる可能性があります。

例えば、日本のチームが日本の日中に何かのアイデアを練り日本の夕方(ヨーロッパの朝)にヨーロッパのチームに引き継ぐ。ヨーロッパは引き継がれたアイデアを洗練させ、そして米国のチームに引き継ぐ。日本の朝には、日本のチームは寝ている時間に練られたアイデアを目にすることができる。こんな感じです。


2. テレワークのデメリット

この章では、冒頭の表のテレワークのデメリットの部分を説明します

2.1. 情報難民が出る危険性(テレワークする人に情報が伝わりにくい)

例えば会議。出社している人は会議室に集まり、いつものように話し合う。会議室からオンライン会議につないでいるパソコンは1台。そのパソコンを会議室のプロジェクターにつないで画面をスクリーンに投影する。

テレワークでオンライン参加している人は会議室での会話が聞きにくい、ほとんど何を話しているのか聞き取れない時もある。このような状態では、テレワークの人は不公平を感じ、顕著にモチベーションを下げます。



2.2. 情報漏洩の危険性

情報漏洩というと IT 面での対策と考える方がおられると思います。確かに IT 面での対応は大切です。ただ、ここで強調したいのは、IT 面での対応だけでは全く不十分だ、ということです。

カフェで肩越しに画面を覗かれてしまい漏洩する、PCを紛失する、会社から貸与されたPCを家族に使わせて重要な情報がネットに漏れてしまう、等々。情報漏洩の危険性を最小にするための対策が必要です。


2.3. サボっていると思われないか、きちんと評価してもらえるか不安

サボるとは、どういうことでしょう。テレワーク中にPCから離れ散歩すること?リビングでコーヒーを飲みながらリフレッシュすること?私はジョギング中にアイデアがひらめくことがあります。入浴中にひらめくこともあります。テレワーク中は物理的に会社から離れているので、心理的な不安は早期に解決するべきです。対策が必要です。


2.4. 部下のマネジメントがしにくくならないか心配

コロナ禍で最初の緊急事態宣言が出された時には、そもそも初めてテレワークをしてみた、という方が多かったのではないでしょうか。「やったことがない」始めてのことをやったのですから、このような心配は当然だったのでしょう。

withコロナの今、成功事例の研究と、自分の組織への試行、試行結果の頻繁な振り返りなどが必要でしょう。常にテレワークでの協働の仕方をアップデートすることが求められると思います。


2.5. チームワークが悪くならないか心配(組織崩壊)

何のルールもなく戦略もなくテレワークに突入してしまうと組織崩壊してしまう可能性があると思います。


2.6. 従業員間・部門間で不公平感が出る

テレワークできる職種の人とテレワークできない職種の人との間の不公平感です。
羨ましい、ずるい、仕事を取られるかも、在宅勤務したい、満員電車に乗りたくない、テレワーク飽きた、たまには会社行きたい、などの感情。


コレを溜め込んだまま放置しておくのは良くありません。不健康です。対策が必要です。


2.7. 家に書斎がないし、小さい子供を持つ親は大変

そもそも家は仕事をする場所として考えられていなかったのですから、もっともなことでしょう。また、小さい子供たちは親が家にいれば、遊んで欲しい、かまって欲しいと思うのは自然です。


2.8. 働きすぎる(仕事モードへのONとプライベートへのOFFの切り替えが困難)

これはテレワークしたことのある人にとっては「あるある」でしょう。自分で自分の時間をコントロールすることを意識することが求められます。


2.9. 毎日テレワークだと不安を感じる(含運動不足)

メンタル的に不安になってしまう可能性があります。ここは対策が必要です。また、テレワークの場合、基本在宅になりますので、長時間座っていてエコノミー症候群のような感じになる危険性があります。運動不足になる危険性があります。


2.10. 社内を歩いている時に偶然会った人との会話がない(含タバコ部屋)

これは何とかして対策しなくてはならない課題です。創造性を刺激する機会を失ってしまっては、生産性に悪影響を与えてしまうかもしれません。


3. withコロナのテレワークとは

この章では、2章のテレワークのデメリット、つまり課題にどう対処すべきなのか、を考えます。

ベースラインとして、「テレワークは課題が多いので使い物にならない」と結論づけるのではなく、テレワークは今までの仕事の仕方を見直す絶好の機会と考えるべきである、という立場で書きます

3.1. 情報難民が出る危険性(テレワークする人に情報が伝わりにくい)

オンライン会議は会議室でやると失敗する可能性が高いです。オフィスに出社したり、テレワークしたりとハイブリッドな働き方をしておられる方は多いと思います。オフィスの会議室から3人、テレワークの人が3人、合計6人でオンライン会議をしているとしましょう。会議室から参加している3人が、会議室にいない3人のことを(つい)忘れてしまい、何かを喋り出してしまうことがあります。テレワーク中の3人には、何が話し合われているのか聞き取れないとしましょう。このような状態では、テレワークの3人は情報難民になってしまいます

オフィスに出社しているんだから、会議は会議室でやるものだろう、それが失敗する危険性があるならテレワークはダメだ、と結論づけてしまってはいけません。出社している人も自席から参加するとか、機密上自席では問題がある場合は会議室にひとり1台端末を持って、さらにハウリングを避けるためにヘッドセットを使用して参加する必要があります。

また、言葉だけで議論するべきではありません。昭和の電話会議をしていた時代ではないのです。音声に加えて画面を共有することができる時代なのですから、議論の対象となっているものを全員が見ながら議論すべきです。

そして、ファシリテーターを入れることを強くおすすめします。

ファシリテーション(facilitation)。「人と人が議論し合意形成をする、この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにすること」これがファシリテーションです。
ファシリテーションをする人をファシリテーター (facilitator) と言います。
「人と人が議論し合意形成をする、この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする」ためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。
withコロナの今、重要なスキルとされています。


3.2. 情報漏洩の危険性

情報漏洩に対して、IT 面での対策をとっている会社は多いと思います。IT 面での対策だけでは全く不十分です。

従業員に対する情報セキュリティ教育を徹底することが必須です。あなたの会社はどうですか?
会社は従業員に対して仕事専用の PC を貸与し、自分以外には使わせない、仕事以外には使わない、ということを徹底することが必須です。セキュリティに対するリテラシーを上げることも必須です。そして、守るべきことを守らなかった時の罰則を伴う処分を社内規則として作ることも必須でしょう。


3.3. サボっていると思われないか、きちんと評価してもらえるか不安

コロナ前は、労働法制の制約もあり、勤務時間に応じて賃金を支払う仕組みが長く定着していました。ところが、テレワークでは、在宅で働く従業員を時間で管理するのは実質無理です。IT ツールで従業員を監視しようとしても監視し切れません。そもそも監視する・監視されるという関係を作ることには、私は反対です。withコロナの時代に大切な、心理的な安心安全や信頼の醸成にネガティブに働くからです。

勤務時間で評価するのではなく、成果で評価する必要がある、と私は考えます。

あなたの仕事は何ですか?テレワークは「仕事の本質」をあぶり出す、と私は考えます。PC の前に座っていること?違いますよね?会社は従業員に給料を払っています。給料は在籍していればもらえるベーシックインカムではありません。働くプロとして成果を出し、それに対する報酬として給料が払われるべきだ、と私は考えます。

そもそも会社に入る前までは、そういう評価軸ではなかったですか?勉強時間は入学試験の合格の基準ではありません。練習時間だけでレギュラーになれるわけではありません。強い相関関係はあるでしょう。しかし、勉強時間や練習時間で評価はされていなかったと思います。

そして、成果を公平に評価できる仕組みを作ることが大切です。キーワードは透明性でしょう。


3.4. 部下のマネジメントがしにくくならないか心配

2.4節で、成功事例の研究と、自分の組織への試行、試行結果の頻繁な振り返りなどが必要だろう、と書きました。3.3節で公平で透明性のある評価が大切だ、と書きました。

今、迅速にやるべき事は、数年間のテレワークの体験を振り返りもっと自分たちにとって働きやすくするためにはどうしたら良いのかを話し合い、またどう評価されたいのかを話し合い試行する、そして振り返るこのサイクルを繰り返すことだと考えます。数年間体験したとは言え、それまで長年やったことがなかったのですから、試行錯誤しながら自分たちにとってより働きやすい形を模索することが必要だと考えます。これを実施することは、従業員体験の向上につながります

そして、マネージャーはマネージャー同士の横のつながりを使って、成功事例を横展開するべきです。

下記の施策が大切です。

  • 働き方についてのアイデアや工夫の共有
  • 新しい働き方に関する検討チーム・委員会の設置
  • 働き方についての研修やイベントの実施
  • 働き方についてのハンドブック・冊子の作成・配布


特に、新しい働き方に関する検討チーム・委員会を設置し、働き方についてのアイデアや工夫の共有を促進することがキーポイントだと私は考えています。


3.5. チームワークが悪くならないか心配(組織崩壊)

私は、コロナ禍を経験しテレワークが必要になっている状況は、チームビルディングの絶好の機会だと考える者です。

3.4節に書いたように、チームで、コロナ禍での体験を振り返り、議論し、自分たちにとって働きやすいルールを見つけるべきです。従業員体験の向上にチャレンジすべきです。

数年間テレワークを経験し、原則テレワークに舵を切った会社も出てきました。そのような会社はテレワーク2.0を作り終わっていて、彼らにとってより良いものを探しながら運用しているのだろうと想像します。

コロナ禍の数年間で、テレワークについて自分たちの知見を集め効果的に運用している会社と、消極的な会社との間に明確な差ができていると思います。


3.6. 従業員間・部門間で不公平感が出る

私は、何でもかんでもテレワークできるとは考えていません。しかし、あなたの組織・チームの中に不公平感がフツフツと渦巻いている状態は不健康です。何か手を打つ必要があります。

3.5節に書いたように、あなたの組織のチームのテレワークのルールを職場のチームの皆で創る行為を通じて、より健康的でみんなの納得感があるものにしていただきたいと考えています。

これは真剣な喧々諤々の議論になる可能性があります。私のコラム 『組織力強化:コロナ禍の職場のチームを再構築する:大切な3つのポイント』 を参考にしていただけると思います。


3.7. 家に書斎がないし、小さい子供を持つ親は大変

テーブルと椅子は必須です。オフィスの机と椅子は仕事をするための環境としてよくできています。例えば厚生労働省が出している『自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備』があります。リビングのソファーでは腰を痛めてしまうかもしれません。

食卓のテーブルと椅子では合わないという場合は、新規に購入する必要があるかもしれません。1.8節で削減したコストの一部を使って補助できるかもしれません。

子供に関して、書籍『ティール組織』(フレデリック・ラルー (Frederic Laloux) 著 ISBN978-4862762269)の第II部-第4章の『全体性を取り戻すための努力』内の節『人間性を仕事に呼び込む』(242ページ)から一部引用します。

 
アウトドア用アパレル・メーカーのパタゴニアにも、同じようなことが起こった。カリフォルニア州ベントゥーラで、同社は従業員向けに「子ども発育センター」を運営している。対象は生後数ヶ月の幼児から幼稚園児まで。子どもたちの笑い声とおしゃべりが、日常の生活音としてオフィスまで届いてくる。外の遊び場ではしゃぐ子ども、親のデスクにやってくる子ども、カフェテリアでのランチタイムに親と食事をしにくる子供など、色んな場所から声が届く。ミーティング中に母親が我が子の面倒を見ていることも珍しくない。人々がお互いを同僚としてだけでなく、幼い子どもたちへの深い愛情と思いやりを示す人として見るようになると、職場の人間関係も微妙に、しかし根底から変化する。同僚たちがランチを食べながら赤ん坊と遊んでいる様子を見ただけで、ミーティングのときに互いに激しく非難し合うことはかなり難しくなる。
(中略)
私は不思議に思うのだ。こうした当たり前のことが異常に思えるほど、職場と自分が切り離されてしまったのか?動物や子どもに接すると、気が散って仕事ができないのではないかと言う人はもちろんいる。しかし、私はもっと深いものが作用していると考えるようになった。私たちは、ほんの一部でも本来の自分自身の姿で職場に来ると、ある種の「安心感」を得るのだ。赤ん坊や動物を職場につれていくという考えを最初は好きになれないかもしれない。なぜなら、子どもやペットが身近にいると、自分の普段とは全く違う側面、つまり愛情が深く思いやりがあるという面を同僚たちに見せずにいることが、あまりにも難しいからだ。


もし、チームのみんなが意識を変えて、フレデリック・ラルーがいう『人間性を仕事に呼び込む』ことができれば、オンライン会議中に子供が入ってきても大きな問題ではない、ということになるかもしれません。在宅で働くというのは、そういうことではないでしょうか。

ひとつ付け加えます。子供の要因で、生産性を下げる、成果を下げる、そういうネガティブな作用はない、と私は思います。パタゴニアで享受していることを日本の会社が享受できないはずがありません

知恵を絞るべきです。チームのテレワークのルールを職場のチームの皆で創る中で、この辺りのことも是非話し合っていただきたいと思います。


3.8. 働きすぎる(仕事モードへのONとプライベートへのOFFの切り替えが困難)

例えば、出勤する時のように、朝家を出て駅まで散歩して帰宅する。これを仕事へのONの合図とする。夕方に目覚まし時計やアラームをセットして、これを仕事からのOFFの合図とする。習慣になるまでの間は、明示的にONとOFFを作ることが大切だと思います。働き過ぎは、身体的にも精神的にも、よくありません。


3.9. 毎日テレワークだと不安を感じる(含運動不足)

3.5節に書いたテレワークのルールを創る際に、テレワークでのメンタル面での不安を解消する方法についても話し合うべきだと思います。Slack のようなリアルタイム性を要求しないチャットの仕組みを使って、なにげないことを呟きあえるチャンネルを立ち上げる等々のアイデアが出てくるかもしれません。

また、テレワークの場合、基本在宅になりますので、長時間座っていてエコノミー症候群のような感じになる危険性があります。運動不足になる危険性があります。定期的に散歩したり走ったりするなど、意識して体を動かす必要があると思います。アイデアをひらめかせるためにも。実際私はこのコラムの基本構想は走っている時に思いつきました。

勤務時間でガチガチに管理されている場合は難しいかもしれませんが、それでもお茶を飲んだりストレッチしたりしますよね。喫煙する人ならその時間はどう管理されているのでしょうか?


3.10. 社内を歩いている時に偶然会った人との会話がない(含タバコ部屋)

3.9節に書いたように、Slack のようなリアルタイム性を要求しないツールの仕組みを使って、なにげないことを呟きあえるチャンネルを立ち上げる、そこを偶然のアイデアとの出会いの場(セレンディピティ)と考え、アイデアを膨らませていくことができるかもしれません。

いろいろ試してみると良いと思います。
大切なのは、迅速に振り返ること。そして、改善を加えながらより良い仕組みにしていくことです。
 
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
 

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