コラム目次
このコラムはビジネスパーソンの方々を対象として書いています。
働くということ。
あなたにとって働くということは、労働ですか?仕事ですか?
ちょっと5分くらい考えてみませんか?
このコラムでは、労働と仕事について考えます。
次の3つの章で構成します。5分程度で読める内容です。
私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのためのお手伝いをしたい」と考え、この屋号にしました。
ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。
1. 労働と仕事の意味の違い
ハンナ・アーレント (Hannah Arendt) というドイツに生まれアメリカに亡命した哲学者がいます。彼女は、人間の行動を「労働」「仕事」「活動」の3種類に分類しました。
労働
完全に生きるために行うこと。例えば、収入を得るためだけに行っていること。やらないで済むならできればやりたくないこと。苦役。
仕事
創造性のあることを行うこと。誇りをもってやること。希望があり、前向きにやる気があるイメージ。やりがいがあって働いている状態。
活動
自発的にやること。心からやりたくてやる行動。
そして、アーレントは、労働よりも仕事、仕事よりも活動の方が、人間としての質が高いとしています。いかがですか?
2. 労働と仕事について考える
アーレントの分類の、労働と仕事に着目してみましょう。
- 労働は、上司から命じられて働くことで、報酬は与えられるが、強制され苦役だったりします。
- 仕事は、自らがやりがいを持って働くことであり、命令・強制・苦役という感じは薄いと言えます。
レンガ職人のイソップ寓話をご存知でしょうか?
旅人が道を歩いていると、3人のレンガ職人に出会います。旅人は「何をしているのですか?」と尋ねます。
職人A :「何って、見ればわかるだろう。レンガ積みに決まっているだろ。朝から晩まで、俺はここでレンガを積まなきゃいけないのさ。あんた達にはわからないだろうけど、暑い日も寒い日も、風の強い日も、日がな一日レンガ積みさ。腰は痛くなるし、手はこのとおり」
男は自らのひび割れた汚れた両手を差し出して見せた。
「なんで、こんなことばかりしなければならないのか、まったくついてないね。もっと気楽にやっている奴らがいっぱいいるというのに・・・」
職人B:「俺はね、ここで大きな壁を作っているんだよ。これが俺の仕事でね。」
「大変ですね」旅人はいたわりの言葉をかけた。
「なんてことはないよ。この仕事のおかげで俺は家族を養っていけるんだ。ここでは、家族を養っていく仕事を見つけるのが大変なんだ。俺なんて、ここでこうやって仕事があるから家族全員が食べいくことに困らない。大変だなんていっていたら、バチがあたるよ」
職人C:「ああ、俺達のことかい?俺たちは、歴史に残る偉大な大聖堂を造っているんだ!」
「大変ですね」旅人はいたわりの言葉をかけた。
「とんでもない。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだぜ!素晴らしいだろう!」
3人ともやっていることは同じレンガ積み。
あなたが働いているときの「感じ」はどのようなものでしょうか?
3. 労働ではなく仕事をしましょう
毎日が労働だとしたら、辛いですよね。 アーレントの言う「活動」までは無理でも「仕事」をしたいですね。「労働」が続くと、どこかにしわ寄せが来てしまうと思います。
どうすれば良いのか?
あなただけではなく、あなたが所属する職場のチームのメンバーや、上司の人たちが、「そうしよう」と努力することが求められると思います。上司が上から目線で、使用者が労働者に労働させる、というようなスキームが受け入れられる時代ではありません。従業員体験価値をあげることが求められている時代です。
ネットに公開されている2つの記事を参照しながら、仕事をすることを考えてみましょう。
最初に参照する記事は、『大企業の新入社員「コミュニケーションばかりの仕事に不安を感じる」という投稿に注目集まる』です。
記事は『投稿者が子どもの頃に想像していた仕事は「パンを焼いて売る」「自動車整備をする」などの実際的な作業だったという。しかし現在は、先輩の指示を他部署に伝え、会議をして結果を部長に伝える、資料を作るなど、すべてが”コミュニケーションのための作業”ばかり。それはが悪いとは思わないが、と不安を綴っている。』と始まっています。
パンを焼いて売る。ひとりで全てをやらなくてはならない従業員がいない個人経営の街のパン屋さんであれば、投稿者が子どもの頃に想像していた仕事に近いのかもしれません。
事業が拡大すると、パンを作る役割の人、店頭で接客してレジを打つ役割の人、など複数の役割が必要になるでしょう。
「社内でコミュニケーションばかりの仕事」という記述だけではよくわからない点が多いのですが、ここでは社内の間接部門に所属している人と仮定してみましょう。
例えば、パンを販売している大手の会社だとしましょう。山崎製パン、敷島製パンなど。社内にはいろいろな部門があるはずです。仮に経理部門に所属していたとします。商品としてのパンを適正な価格でお客様に購入してもらって、お客様の食生活を豊にすることを目標に事業をしているのではないかと思います。平たくいえば、パンを食べて笑顔になって欲しい、こんな感じではないかと思います。
経理の仕事を、2章の職人Aのようにやっていると、本気でつまらないだろうなぁ、と思います。毎日が労働なのですから。一方、自分の仕事を職人Cのように捉える事ができる人は、毎日がやりがいに溢れて楽しいだろうなぁ、と思います。毎日がやりがいのある仕事なのですから。2章のレンガ職人と同じように、日々やっていることは同じでも感じることには違いが生まれます。
どんな仕事にも、上流と下流があります。誰かから仕事が流れてきて、何かをやって、次の人に流す。
自分の仕事の意義、全社の中での自部門の位置付け役割、これらを考えてみてはどうかな、と思います。
その上で、今の仕事が自分に向かないと思うのであれば、異動願いをすれば良いのだと思います。
「社内政治」に勤しんでいられる時代はコロナが引き金になって終わった、と私は考えています。
McKinsey & Companyが2020年6月26日に出した記事 ”Ready, set, go: Reinventing the organization for speed
in the post-COVID-19 era” をファシリテーターの観点から考察したコラム『組織力強化:迅速に組織変革する9つの方法:ファシリテーターの観点で考察する』があります。Beast of Bureaucracy(官僚組織の獣)の醜い(私が醜いと感じている)絵を載せてあります。よろしければお読みください。
いろいろな部門の人たちと関わる仕事をしているのだとしたら、いいポジションにいると私は思います。例えば、DX(Digital Transformation = デジタル技術を活用したビジネス変革)を成功させるためには、社内のいろいろな部門の専門家の人たちと協働しなくてはなりません。そのためのセンスを磨く絶好の機会を手にしていらっしゃる、と私は考えます。
次に参照するネットに公開されている記事は、『朝日新聞DIGITALの「働くってなんですか」』という連載記事です。
『新型コロナがもたらす雇用や労働への影響を伝え、働くことの意味も問い直します。』という連載です。
コロナ禍の今、将来に備えて希望退職を募る会社が絶えません。人件費だけでなく、競争力を高め体質を強化するという目的があるのでしょう。
ところで、今一度「働くとは何なのか?」と問いを立ててみると面白いかもしれません。
例えば、下記の5点が考えられると思います。
- 収入を得ること
- 買いたいものを買い、食べたいものを食べ、やりたいことをすること
- 社会との接点を持つこと
- 社会を構成する一員として社会に貢献すること
- 社会に貢献することで自らが成長すること
4番目と5番目の「貢献する」を実現するためには、それなりの能力が必要です。
需要があるスキルというものは変わるものです。今必要とされているものと、数年先に必要とされるものは異なるということです。あなたが今お持ちのスキルは数年後にも需要のあるものかもしれません。もしかすると、あなたが今お持ちのスキルは数年後には需要がなくなってしまうかもしれません。新しいスキルを身につけ、能力を向上することが必要なのかもしれません。
一例として、下記の8つのスキルは今後数年間で強化する必要があるものです。
- クリティカル思考力(いろいろな観点からもの事を考えることのできる複眼的思考力)
- 課題解決能力
- 分析能力
- 論理的なコミュニケーション能力
- 自己管理能力
- チームで協働する能力
- セルフアピール能力
- ITを学び直す能力
スキルに関するこの辺りのことを 『組織力強化:コロナ禍の時代に求められるスキル:基礎を確実に身につけ研鑽するために』 というコラムで考察しています。
メンバーシップ型は終わり、ジョブ型に移る流れがあります。コロナ禍は私たちに「今一度働くことを考える」機会を与えているのではないか、と私は思います。
多くの働く人たちが「仕事」をするようになって欲しいと思いますし、そのために私はファシリテーションをはじめとするソフトスキルで支援させていただきたいと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。