コールセンターの着台判定とは? 何を評価するのか
コールセンターの課題について相談を受けると、
「教育がうまくいかない」
「応対品質にばらつきがある」
「FAQやマニュアルを整備しているのに、SVへの確認が減らない」
「VOCを集めているけれど、改善につながらない」
「AIを導入したけれど、どう活用すればよいのか分からない」
といった話をよく耳にします。
一つひとつを見ると、確かに別々の問題です。
では、これらは本当に別々の問題なのでしょうか。
私は2026年、一般社団法人日本コンタクトセンター教育検定協会様のウェビナで、参加者の皆さまに4回にわたってアンケートにご回答いただきました。
その回答を続けて見ていくと、最初はバラバラに見えていた課題が、少しずつつながって見えてきました。
今回は、その変化をご紹介します。
コールセンターの課題は、最初はバラバラに見える
最初のアンケートでは、さまざまな課題が挙がりました。
「教育・指導が人によって異なる」
「判断基準が人によって違う」
「ベテランに聞かないと分からない」
「FAQやマニュアルだけでは判断できない」
「応対品質にばらつきがある」
「AIをどう使えばよいか分からない」
「VOCを集めても改善につながらない」
教育、品質、ナレッジ、AI、VOC。
それぞれ違う問題に見えます。
そのため、
「教育を改善しよう」
「FAQを増やそう」
「AIを導入しよう」
「VOCの活用方法を考えよう」
と、それぞれに対策を考えたくなります。
しかし、ここで一度立ち止まってみる必要があります。
なぜ、それぞれの対策をしているのに、別の問題がまた出てくるのでしょうか。
コールセンターの課題がバラバラに見える理由
4月のアンケートでは、こんな声がありました。
「課題がバラバラに見える理由(構造の問題)」
「現象・意味・価値の三層整理」
「評価と行動の関係」
「ナレッジ化がうまくいかない理由」
「AI活用が機能しない理由」
ここで少し見え方が変わってきました。
例えば、
「新人教育に時間がかかる」
という問題があったとします。
新人に知識が足りないからでしょうか。
もちろん、それもあるかもしれません。
では、教育する側が持っている知識を増やせば解決するのでしょうか。
さらに見ていくと、
「何を確認すればよいのか」
「なぜ、その質問をするのか」
「どこまで確認したら次に進むのか」
「複数の状況のどこで対応を分けるのか」
「どの条件なら、どの選択をするのか」
といった、答えそのものではない部分が関係していることがあります。
つまり、
知識がない問題なのか。
それとも、知識を使って問題を解決するまでの流れが整理されていない問題なのか。
ここを分けて考える必要があります。
FAQやマニュアルがあるのに、なぜSVへの確認が減らないのか
5月のアンケートでは、さらに具体的な声が出てきました。
「FAQが存在しても、判断基準が共有されていないことの弊害」
「AI活用以前に、整理対象が未定義」
「FAQやマニュアルだけでは判断を支援できない」
「全てがSV判断」
「答えより、そこに至る経緯(判断基準)を指導」
ここには、コールセンターのナレッジ化を考えるうえで重要なポイントがあります。
FAQやマニュアルは、
「何が正しいのか」
「どういう情報があるのか」
を整理するうえで重要です。
しかし、顧客からの問い合わせは、いつもFAQに書かれている一つの質問と一つの答えで終わるとは限りません。
顧客の状況によって、
「まず何を確認するのか」
「次に何を聞くのか」
「どこで対応を分けるのか」
「どの条件なら、どの対応を選ぶのか」
が変わることがあります。
この部分が整理されていなければ、FAQを増やしても、最後はSVやベテランへの確認に戻ってしまいます。
AIを導入すれば、コールセンターの課題は解決するのか
AIについても、同じことが見えてきました。
アンケートでは、
「生成AIを使って業務負荷を減らしたい」
「AIやDXを導入したが、十分に使えていない」
「AIをどう活用すればいいのか分からない」
「生成AIで新人教育を効率化したい」
といった声がありました。
一方で、こんな回答もありました。
「AI活用以前に、整理対象が未定義」
これは、かなり重要なポイントだと思います。
AIを導入することと、AIに何をさせるのかを決めることは、同じではありません。
例えば、
「回答を探してほしい」のか。
「必要な確認項目を示してほしい」のか。
「次に何を質問するかを支援してほしい」のか。
「対応を分岐するための情報を整理してほしい」のか。
人が意思決定する部分と、AIに支援してもらう部分を分ける必要があります。
つまり、
AIを入れる前に、コールセンターの仕事そのものを整理する必要がある。
4回のアンケートからは、そんなことも見えてきました。
6月になると、問題はコールセンターの中だけではなくなった
6月のアンケートでは、さらに違った声が出てきました。
「調査や分析が、もっと本質的な改善に繋がってほしい」
「良いサービスなのに、なぜ顧客へ届かないのかを理解したい」
「部門同士で責任を押し付け合うのではなく、一緒に解決したい」
「特定の人だけへ負荷が集中する状態を変えたい」
「同じ問題の再発対応ばかりで前へ進めないことにもどかしさ」
ここまで来ると、問題はコールセンターの中だけではありません。
商品やサービス。
説明方法。
業務プロセス。
営業や契約。
Web。
他部署との情報共有。
改善活動。
組織の役割分担。
さまざまなところが関係してきます。
そして、コールセンターには、その問題の兆候が顧客の声として集まっていることがあります。
コールセンターに集まっているのは、「問い合わせ」だけではない

図 引用【予約ラボ】 どのような用件でコールセンターを利用しましたか?
顧客からの電話には、
「何を聞きたいのか」
だけではなく、
「なぜ、それを聞かなければならなくなったのか」
「何に困っているのか」
「何を期待しているのか」
「何が分かれば納得できるのか」
といった情報が含まれています。
だからこそ、コールセンターを単なる問い合わせ対応の場所として見るだけでは、もったいないのです。
同じ問い合わせが繰り返されているなら、
「応対者の問題」
と考える前に、
なぜ同じ問い合わせが発生するのか。
を見る。
VOCが改善につながらないなら、
「VOC分析が足りない」
と考える前に、
その情報が、どこで止まっているのか。
を見る。
SVへの確認が集中しているなら、
「応対者の知識不足」
と考える前に、
何を確認し、何を基準に選択するのかが共有されているのか。
を見る。
こうしていくと、バラバラに見えていた問題が、少しずつつながってきます。
「人」の問題に見えていたものを、別の角度から見る
コールセンターでは、
「ベテランだから対応できる」
「新人だから対応できない」
という状況が起こります。
しかし、ベテランの回答をそのまま新人に覚えてもらえばよいのでしょうか。
本当に共有したいのは、答えだけではありません。
ベテランが、
何を確認しているのか。
なぜ、その質問をしているのか。
どの情報を重要だと見ているのか。
どこで対応を分けているのか。
どの条件で次の選択をしているのか。
そうした会話の進め方や確認ポイント、選択基準まで整理することで、初めて他の人にも使える知識になります。
これは、教育だけの問題ではありません。
ナレッジの問題でもあり、応対品質の問題でもあり、業務設計の問題でもあります。
だから、一つの施策だけでは解決しにくいのです。
では、コールセンターの課題は何から見ればよいのでしょうか
4回のアンケートを通して、私は課題を見る順番が重要だと感じました。
例えば、
「教育が大変」
「FAQが使われない」
「SV確認が多い」
「応対品質にばらつきがある」
「AIを導入したい」
という現象があったとします。
そこで、いきなり教育やFAQ、AIの話から始めるのではなく、
顧客は何を期待しているのか。
↓
その期待に対して、会社はどのようなサービスを提供しているのか。
↓
そのサービスを実現する業務はどうなっているのか。
↓
コールセンターでは、顧客に何が起きているのか。
↓
そのとき、応対者は何を確認し、どのように対応を選んでいるのか。
↓
そこで得られた顧客の声が、会社の改善につながっているのか。
という順番で見ていきます。
すると、
「教育が足りない」
と思っていた問題が、
「選択基準が共有されていない」
という問題かもしれません。
「FAQが足りない」
と思っていた問題が、
「状況に応じた会話の進め方が整理されていない」
という問題かもしれません。
「AIが使えない」
と思っていた問題が、
「AIに何を支援させるのかが決まっていない」
という問題かもしれません。
自社のコールセンターで、こんなことはありませんか?
もし、次のような状態があれば、一度立ち止まってみてください。
- FAQやマニュアルはあるのに、SVへの確認が減らない
- 教育を増やしているのに、応対品質がそろわない
- ベテランは対応できるのに、新人になると対応が止まる
- 同じような問い合わせが繰り返される
- VOCを集めているのに、サービス改善につながらない
- AIやDXを導入したものの、使いどころが明確になっていない
- コールセンターでは問題を把握しているのに、関係部署につながらない
- 特定の人に確認や判断が集中している
こうした状態があるなら、
「教育が足りない」
「FAQが足りない」
「AIを入れればよい」
と決める前に、
会社として顧客期待に応えるために、どこで何が止まっているのか
を見てみることをお勧めします。
問題が決まっていなくても、相談できます
コールセンターの改善では、
「何が問題なのか、まだよく分からない」
という状態から始まることがあります。
それでも構いません。
むしろ、原因が分からないまま、
教育を増やす。
FAQを増やす。
システムを入れる。
AIを導入する。
と進めてしまうことのほうが、後から別の問題を生むことがあります。
当社では、
顧客期待
↓
商品・サービス
↓
業務
↓
コールセンター
↓
顧客応対
↓
顧客の声
↓
改善
というつながりから、どこで顧客期待との間にズレが生じているのかを整理します。
そのうえで必要であれば、
- コールセンターの業務整理
- 応対品質の評価設計
- 教育・育成の見直し
- ナレッジの整理
- 顧客の声の活用
- 部門間の情報連携
- AI活用の対象整理
などを検討していきます。
AIを使うことが目的ではありません。
教育を変えることが目的でもありません。
FAQを増やすことが目的でもありません。
会社として顧客期待に応えるために、今どこで何が起きているのか。
まず、そこを一緒に整理する。
コールセンターの課題がバラバラに見えているときこそ、個別の問題ではなく、その問題同士がどこでつながっているのかを見ることから始めてみてはいかがでしょうか。
「何から手をつければいいのか分からない」という段階でも、ご相談いただけます。


