「一緒に聞こう」――夫婦で分け合う、住まいの安心

おはようございます。
一般社団法人 全日本花輪式完全消臭連盟、代表理事の花輪隆俊です。
※今回は、働く世代の住まいの備えを考えていただくための架空の物語です。
「これ、持っていきなさい」
帰り支度を始めた息子に、母親が煮物の入った保存容器を差し出しました。
とある町。
賃貸アパートで一人暮らしをする48歳の男性は、久しぶりに実家を訪れていました。
母は74歳。
最近は、会うたびに少し小さくなったように感じます。
「重い物は持たなくていいから」
「病院、ちゃんと行っている?」
「何かあったら、すぐ電話してよ」
その日も息子は、母の暮らしを確かめるように、いくつも質問をしました。
母は「大丈夫、大丈夫」と笑っていました。
ところが帰り際、今度は母が尋ねたのです。
「あんたこそ、具合が悪くなったら、誰か気づいてくれるの?」
息子は、靴に伸ばしかけた手を止めました。
「会社に行かなかったら、誰か電話するだろう」
「お休みの日だったら?」
「……まあ、大丈夫だよ」
答えながら、自分でも少し気になりました。
金曜日の夜に帰宅して、次に誰かと話すのが月曜日の朝。
そんな週末は、珍しくありません。
母からの電話に出なくても、後で「忙しかった」と言えば、それで済んでいました。
「俺のことより、自分の心配をしなよ」
いつものように言いかけて、やめました。
母が持たせてくれた煮物は、まだ、ほんのり温かかったのです。
■ 「しっかりしている人」にも、一人になる時間がある
仕事をしている。
家賃も払っている。
家族とも連絡を取っている。
そうした暮らしの中では、本人も周囲も「この人は大丈夫」と思いやすいかもしれません。
けれど、仕事中の顔だけでは、帰宅してからの時間までは見えません。
いつも元気な人にも、誰にも会わない休日があります。
人の世話をしている人にも、自分のことを後回しにする日があります。
年齢や、普段のしっかりした姿だけで、住まいの備えを考える必要がなくなるわけではありません。
私は、全花連安心サービスを、高齢者だけのものとして伝えないようにしたいと思っています。
若い方にも、中年の方にも、それぞれの暮らしがあり、万一の際に困ってほしくない相手がいるからです。
■ 連絡することと、亡くなった後に備えること
アパートに帰った息子は、母からの容器を冷蔵庫に入れました。
その横に、賃貸契約の更新書類が置いてありました。
緊急連絡先の欄には、母の名前。
何年も、そのままでした。
自分に何かあったら、最初に母へ電話がいく。
その後、母はどこへ相談するのだろう。
部屋に残った荷物。
清掃の手配。
退去に関する手続き。
「何かあったら電話して」と母には言ったのに、自分の部屋のことは、何も整理していませんでした。
翌日、男性は管理会社に問い合わせました。
「緊急連絡先の確認と、万一のときの部屋の手続きについて、相談したいのですが」
全花連安心サービスは、死後事務委任契約を活用し、万一の際の残置物撤去や特殊清掃・消臭、賃貸借契約の解約手続きなどに備える仕組みです。
利用には、契約内容や対応範囲、費用をまかなう保険等の条件を事前に確認する必要があります。
日頃の連絡や見守りは、異変に気づくための備え。
亡くなった後の対応について決めておくことは、その後の混乱を減らすための備え。
両方を考えておくことが大切です。
■ 母が安心するのは、「大丈夫」の一言だけではなかった
数日後、男性は母に電話をしました。
「この前の話だけどさ。俺の部屋のことも、確認を始めたよ」
母は一瞬、黙りました。
「何か、あったの?」
「何もないよ。何もないうちに、と思って」
受話器の向こうで、母が小さく息をつきました。
「そう。それなら、よかった」
それから、いつもの調子で聞きました。
「煮物、食べた?」
「食べた。おいしかった」
「じゃあ、今度来るとき、容器を持ってきて」
「分かった。また持っていくよ」
電話を切った後、男性は洗って乾かした容器を、実家へ持っていく袋に入れました。
親を心配する年齢になっても、親にとっては、いつまでも心配なわが子。
自分の暮らしを整えることも、家族への思いやりになるのだと思います。
今日、誰かの体調を気遣った方へ。
その優しさを、少しだけ、ご自身の暮らしにも向けてみませんか。
一般社団法人 全日本花輪式完全消臭連盟
代表理事 花輪隆俊
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