第10回 発明は天才のひらめきによるものではない
「アフターコロナ」の時代はやってこない。今回の7番目のコロナウィルスであるCOVID-19(SARS-CoV-2)の問題が解決しても、何年かすると、更に8番目、9番目の新たなコロナウィルスが出現し、新たな問題を起こすであろう。正しくは今回のSARS-CoV-2ウイルスによる感染症をCOVID-19というようであるが、いずれにせよ、今後は「ウィズコロナ」と「インターコロナ(休止期間)」の繰り返しになるであろう。
歴史が示す教訓を鑑みれば、ワクチンに依存した「受け身の科学技術」となるコロナウィルス対策では、感染予防と経済の両立という問題が、8番目、9番目のコロナウィルスへの対策で、また発生し同じような大混乱と苦しみを繰り返すであろう。新たなコロナウィルスが出現したら直ちに撃退する「攻めの科学技術」を開発する研究への投資こそが、今必要である。
§1 7番目のコロナウィルスを「新型」と呼ぶ非論理性
§2 攻めの科学技術を示した西澤先生の特許
§3 将来に対して役に立つ科学技術に投資する姿勢こそ必要
§1 7番目のコロナウィルスを「新型」と呼ぶ非論理性
表1から分かるように、SARS-CoV-2ウィルスは人間に感染するコロナウィルスとしては7番目のコロナウィルスである。7番目のコロナウィルスを「新型コロナウィルス」と呼んでいる精神や心が、その場しのぎの対応になり、コロナウィルスに対する抜本的な対策への心構えを失わせている。「この難局を乗り越えたらなんとかなる」というSARS-CoV-2ウィルスにのみに注目した考え方では甘いのである。
感染予防と経済活動の両立させるのであれば、分子生物学、量子生物学を駆使し、コロナウィルスをその場で瞬時に発見する技術を開発して、非感染者のみで経済活動させる科学技術を開発することが重要である。
【表1】人類に感染する7つのコロナウィルス
表1に示したうち、HCoV-OC43、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-HKU1は、風邪の10~15%を占める「ヒトコロナウィルス」である。HCoV-OC43は、1889(明治22)~1895(明治28)年に世界で100万人が死亡したロシア風邪の大流行との関連が指摘されている。このロシア風邪は我が国では「お染風」と呼ばれて恐れられていたが「旧アジア風邪」の名もある。
ロシア風邪を除けば、人類は1960年代に既にウィズコロナの時代に突入し、人間に感染するコロナウィルスを約80年間で7つ発見しているので、SARS-CoV-2ウィルスは「6番目の新型コロナウィルス」と呼ぶべきであるのである。表1に示した人間に感染するコロナウィルスの他に、豚に感染するTGEV、PEDV、HEV、猫に感染するFIPV,FECoV、犬に感染するCCoV、マウスに感染するMHV、鶏に感染するIBV等種々のコロナウィルスが発見されている。
2002年のSARS-CoVウイルスは、病原性等が従来のヒトコロナウィルスとは異なる「新しいタイプ」の人間に感染するコロナウィルスとされたが、100万人が死亡したロシア風邪がヒトコロナウィルスによるものであれば、ヒトコロナウィルスとSARS-CoVウイルスとの病原性等の差異はあまりないことになる。2005年にルーヴェン大学の研究者らがHCoV-OC43がロシア風邪の原因であると推定し、2020年にはデンマーク工科大学とロスキレ大学の研究者らはHCoV-OC43がロシア風邪の原因であると結論したようである。
いずれにせよ、2002年のSARS-CoVウイルスを「新しいタイプ」と呼ぶのであれば、2019年のSARS-CoV-2ウイルスは「新型の新しいタイプ」のコロナウィルスと呼ぶべきであろう。2002年のSARS-CoVと2019年のSARS-CoV-2は、細胞指向性、細胞変性効果や臨床的特徴等が互いに異なるようであるが、ともに人間のACE2受容体に結合して細胞内に入るようである。
2000年以降でみると20年間で5つのコロナウィルスに直面しており、4年に一度のペースで、人間に感染するコロナウィルスが発見されている。
§2 攻めの科学技術を示した西澤先生の特許
冒頭で述べたとおり、SARS-CoV-2ウィルスの問題が解決しても、いずれ更に異なるコロナウィルスが出現し、新たな問題を起こすであろう、というのが歴史の教訓である。8番目、9番目のコロナウィルスに対して、新たな治療薬や新たなワクチンを研究するような「受け身の科学技術」では遅いのである。もっと、抜本的な「攻めの科学技術」を基軸とする対策を立てる必要があろう。既にこのコラムの第66回で、西澤潤一博士が2004年に出願した「微生物やウィルスを電磁波で殺す」特許発明(特許第4272111号、米国特許第7912553号)を紹介した。
この「攻めの科学技術」の一例となる特許発明については、(一財)大阪科学技術センター、NPO安全安心科学アカデミー等の主催する『保物セミナー2020(Web討論)』で紹介させていただいている。筆者の投稿内容は「安全安心科学アカデミーのホームページ」に2020年12月20日まで掲載されている:
掲載場所:http://anshin-kagaku.news.coocan.jp/hobutsu2020ext.html
微生物やウィルスは固有の細胞構造や分子構造を有し、それ故その固有の細胞構造や分子構造に依拠した固有の共鳴周波数の振動数を持っているはずである。特許第4272111号等は、その固有の共鳴周波数の電磁波を照射して、人体の他の細胞に影響を与えないで、微生物やウィルスを選択的に焼き殺すという「攻めの科学技術」に依拠した技術である。
【図1】ウィルスがもつ固有の共鳴周波数の電磁波を照射して、ウィルスの分子振動を共鳴させる
図1に示すように同じ固有振動数ω_targetを持つ共鳴箱付き音叉を2つ用意して、左側の音叉を鳴らせば、右側の音叉も鳴り始める。叩かれた左側の音叉が下の共鳴箱を揺らし、音波が空気を伝わって右側の音叉の共鳴箱を揺らし、共鳴箱の上にある右側の音叉を鳴らす。両方の音叉の固有振動数が違う場合は共鳴は起こらない。
例えば、新たなコロナウィルスが発見されたら、先ずそのコロナウィルスに固有な共鳴周波数をワイドバンドな分光器で調べ、調べられた共鳴周波数の電磁波を新たなコロナウィルスに照射すればよい。西澤潤一博士の特許発明によれば、1年以上かけて新たな治療薬やワクチンを開発する前に、そのコロナウィルスに固有な共鳴周波数を測定すればよいので、直ちに新たなコロナウィルスを殺すことができる。
§3 将来に対して役に立つ科学技術に投資する姿勢こそ必要
2020年5月にイスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン(Ben-Gurion)大学の G.サルシ(Sarusi)教授のグループがテラヘルツ分光を用いて20秒で SARS-CoV-2ウィルスを検出する技術に成功したとの報告があるが、論文レベルの発表がないので、詳細は不明である。テラヘルツ波でのイメージングができているようなので、何らかのSARS-CoV-2ウィルスに固有な共鳴周波数がテラヘルツ帯にあると判断できる。
【図2】ウィルスに固有な共鳴周波数のカーテンを用いて感染予防
図2に示した3つの半透明黄色の板状部分は、テラヘルツ波で構成された目に見えない電磁波のバリア(テラヘルツカーテン) の模式的な表示である。より確実に感染予防をするためには図2に例示した構成において、黄色の中心部分にアクリル板等の透明板を配置しその両面にテラヘルツカーテンが形成されるように、透明板の上方からテラヘルツ波を照射してもよい。
テラヘルツ波は地球の黒体輻射のスペクトルの帯域に位置するので、原則として人体に安全な電磁波である。このテラヘルツ波を照射する電磁波照射手段は天井に設けてもよい。例えば、飲食店、接待を伴う夜の店、休憩室、集会室、喫煙室、更衣室等の人間が多数集まる恐れのある部屋の天井に電磁波照射手段を設け、天井からテラヘルツ波を室内に照射して、透明で通行等の障害にならないテラヘルツカーテンを形成しておけば感染予防になる。
図2に示した構成において、多重反射した電磁波が検知器に入力するようにすれば、ウィルスの「その場(in-situ)」におけるリアルタイムの検知ができる。この場合、検知器の出力を警報装置に接続しておけば瞬時に陽性者が判明し、スクリーニングができるので感染予防に有効である。残念ながら、今の技術的なプラットフォームは、ウィルスの共鳴周波数の測定データが乏しい。
景気対策にお金をばらまくのはそれなりに意味があろう。しかし、本当にするべきは、将来に向けたテラヘルツ帯を含むワイドバンドな分光器の研究や、テラヘルツ帯を含むワイドバンドな電磁波照射装置の開発を可能にする「攻めの科学技術」に対する集中的かつ選択的な資金の配分であろう。
明治時代のロシア風邪(お染風)の更に古くから、すでに人類は、「ウィズコロナ」と「インターコロナ(休止期間)」の繰り返しを何度もして、死者の犠牲のもとに集団免疫を獲得し続けていたのかも知れない。1008年頃初出とされる源氏物語に「シハブキヤミ」と記載され、当時の医書「医心方」に「咳嗽」の病名がある。
もし1889~1895年のロシア風邪の原因がHCoV-OC43であるとの結論が正しいのであれば、HCoV-OC43が1962年に再発見されるまで、70年近く集団免疫の陰にコロナウィルスが隠れていたということになり、ウイズコロナの期間はかなり長いと考えなければならないということにも留意が必要であろう。
その場しのぎのウィルス対策ではだめで、計画的な科学技術に依拠したウィルス対策が求められる。目先の成果に着目するのではなく、将来に役に立つ「攻めの科学技術」の研究を今からするべきである。1931年に電子顕微鏡が発明され、1960年代に既にコロナウィルスを知っていたのにも関わらず、今まで何をしていたのであろうか。
弁理士鈴木壯兵衞(工学博士 IEEE Life member)でした。
そうべえ国際特許事務所は、「独創とは必然の先見」という創作活動のご相談にも積極的にお手伝いします。
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