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第66回 COVID-19から科学技術のCOVIT-20へ(繰り返される警鐘にどう対処するのか)

鈴木壯兵衞

鈴木壯兵衞

テーマ:発明の仕方

COVIT-20の"T"はTechnologyの"T"である。COVID-19により大恐慌以来の大変な経済の失速が懸念されている。しかし、ここで留意すべきは、今回のCOVID-19の問題が解決しても、何年かすると、更に異なるコロナウイルスが出現し、新たな問題を起こすであろうという、人類の歴史が示す警鐘である。そこで、新たなコロナウイルスが出現しても直ちに撃退する技術(Technology)を開発するというのがCOVIT-20の提案である。その一例として、今回、西澤潤一第17代東北大学総長の特許を紹介する。この特許では、電子レンジに使われている電波の1000倍の周波数のテラヘルツ波という電磁波でウイルスを焼き殺す。SARSが騒がれた頃の2003年~2008年まで文科省はテラヘルツ波の医療応用のプロジェクトを実施したが、その後停滞してしまった。今まさにテラヘルツ波の研究を実施すべきである。
 §1 電気回路とロジスティック曲線
 §2 RC時定数を大きくするのは教育と政治の役割
 §3 対処療法的な科学技術ではなく、攻めの科学技術の研究を

§1 電気回路とロジスティック曲線

 筆者の私見ではCOVID-19の感染騒動が終わるのは、全世界に集団免疫のできる2~3年先と考えている。今回の非常事態宣言は、あくまでも医療崩壊を起こさせないための一時しのぎに過ぎず、第2弾、第3弾の非常事態宣言も覚悟しておく必要があろう。今回の非常事態宣言は感染者の急速な増大である「オーバーシュート」を起こさせないことを目的とした、『三密』状態を防ぐ対策である。 

  「オーバーシュート」とは、もともと電気回路の用語である。電気回路では「オーバーシュート」を起こさせないために「ダンピング抵抗」を入れる。非常事態宣言による営業や移動の制限は「ダンピング抵抗」を挿入する対策に相当している。

 中国の発表しているデータが正しいとすると、中国の感染者総数は8万人(?)くらいで横ばいになっているので、COVID-19による感染者数の増大の変化は、ロジスティック曲線に沿った変化を示しているようである。ロジスティック曲線とは、感染者数をK、時間をt、感染増加率をγ、感染エリアの最大感染者数をcとすると、よく知られているようにdK/dt=γK(1-K/c)で表現されるS字の曲線である。
 
 ロジスティック曲線ではK=cになったとき感染者数の増加率dK/dt=0となり、感染者数の増大が止まる。不思議なことに、中国ではc=8万人で止まったとされるが、2020年4月11日の段階で、米国では50万人を超えている。

 武漢市の総人口が1100万人であり、チャーター機で帰国した人の約10%近くが感染していたので、武漢市だけで100万人以上が感染者総数であってもおかしくはない。最大感染者数cを決める要因は何かが問題である。

 しかし、定性的にはロジスティック曲線で示される感染増大の特性になると思われる。感染増加率γは各国の対策に依存すると思われるが、如何に小さくできるかが重要であろう。

 さて電気回路の話に戻ると、ダンピング抵抗を入れて「オーバーシュート」を抑制した立ち上がり曲線はRC直列回路の過渡応答特性に似ている。ロジスティック曲線と電気回路のRC直列回路の過渡応答特性は立ち上がり部分の波形が異なる。

 ロジスティック曲線の立ち上がり部分の波形は、クラスターの制御等により感染経路が特定でき、感染の拡大が制御できていた領域の波形である。電気回路でも、或る障壁を電子が越える時は、ロジスティック曲線の立ち上がり部分と似た波形になる。

 感染拡大を制御する有効な障壁がなくなると、ロジスティック曲線は、ほぼ電気回路のRC直列回路の過渡応答特性に似てくる。t=0でスイッチSを入れたとき、コンデンサCの両端の電圧Vcは徐々に増えて行くが、その増え方は抵抗Rとコンデンサの容量Cの積τ=RCの大きさに依存して変わる。電気回路ではτ=RCを時定数と呼ぶ。

 今回の非常事態宣言は、立ち上がりの時定数τ=RCを大きくして、なるべく急速に感染者数を増大させないようにするものである。ちなみに、西澤潤一博士が発明した静電誘導トランジスタ(SIT)では内部の寄生抵抗が小さいので、指数関数に沿った立ち上がりが継続する電流ー電圧特性になり、ロジスティック曲線のような飽和を示さない。

§2 RC時定数を大きくするのは教育と政治の役割

 電気回路では、立ち上がりの時定数τ=RCを大きくするためには、抵抗Rとコンデンサの容量Cを大きくする必要がある。感染を止める抵抗Rを大きくするためには、『三密』状態を防ぐことが重要であるが、マスクと手洗いも、抵抗Rの値を大きくするために、重要である。しかし、マスクの使い方は正しいであろうか。マスクを手で触ってずらして、たばこを吸っている方を拝見したが、マスクしている意味がないであろう。マスクを手で触ったら、手を殺菌消毒する必要がある。
 
 手洗いが大切というが、どのように手洗いをするかという教育はされているであろうか。玄関のドアのノブに触って家の中に入り、洗面所のドアのノブに触って、洗面所の蛇口に触って手洗いをして、それで除菌できたと言えるであろうか。

 その後、菌の付着した蛇口に触って、菌の付着した洗面所のドアのノブに触ったのでは、全く手洗いした意味がなくなる。単にマスクをすればよいのでもなく、単に手洗いをすればよいのでもない。本来なら自衛隊がしていたような徹底的な管理が必要であるが、そのことを誰が教育しているのであろうか。

 第63回で1+1=2になる理由をきちんと説明する必要があることを述べた。常に1+1=2にはならないのである。マスクをしても、手洗いをしても感染する人はいるのである。医療関係者に多数の感染者がいることを考えると、どのようにマスクを使い、どのように手洗いをするのかという教育がない限り、マスクや手洗いの効果は期待できない。
 
 立ち上がりの時定数τ=RCのもう一つの要因の「コンデンサの容量C」とは何か。電気回路では電荷を蓄積する回路素子であるが、コロナウイルスの場合は、感染者を収容する容器である。発病しない感染者や、症状の低い感染者を収容する容器である。既に東京都はホテルを貸し切って対策を始めているが、政治の役割として、コンデンサの容量Cを大きくする工夫が必要になる。
 
 発病しない感染者や症状の低い感染者が数千人を超えるレベルにならば、それらの感染者を収容するコミュ二ティを作ればよい。これは政治の仕事である。その感染者のコミュ二ティの中で、役割分担で種々の職業の仕事ができるようになるであろう。

§3 対処療法的な科学技術ではなく、攻めの科学技術の研究を

 医療関係者は治療薬やワクチンを研究されている。治療薬やワクチンの研究は確かに重要で、急務であるが、対処療法的な発想である。

 人類生態学者のJ.ダイアモンド(Diamond)氏は、2002年のSARSのとき、中国当局がハクビシン等の野生動物市場を閉鎖しなかったことが、今回のCOVID-19の事態を招いた、と指摘されている(2020年4月10日付け読売新聞朝刊)。そして、J.ダイアモンド氏の指摘から分かることは、COVID-19の問題が解決しても、いずれ更に異なるコロナウイルスが出現し、新たな問題を起こすであろうというのが歴史の警鐘である。
 
 新たなコロナウイルスに対して、新たな治療薬や新たなワクチンを研究するのでは遅いのである。歴史の警鐘を鑑みると、もっと、抜本的な「攻めの科学技術」の対策を立てる必要があろう。
 
 今回紹介するのはその一例であり、例えば西澤潤一博士の微生物やウイルスを殺す特許発明である(特許第4272111号、米国特許第7912553号)。微生物やウイルスは固有の細胞構造や分子構造を有し、それ故その固有の細胞構造や分子構造に依拠した固有の共振周波数の振動数を持っているはずである。

 特許第4272111号等は、その固有の共振周波数の電磁波を照射して、人体の他の細胞に影響を与えないで、微生物やウイルスを選択的に焼き殺すという技術である。電子レンジでなぜお湯が沸くかというと、水の分子が2.45GHzという共振周波数をもっているので、この共振周波数の電磁波を、マグネトロンという発振素子で加えているからである。

 微生物やウイルスの固有の共振周波数はテラヘルツ帯という光と電波の境界に位置する非常に高い周波数の帯域に存在する可能性がある。「テラヘルツ」というのは、電子レンジで使われている「ギガヘルツ」と呼ばれる電波より約1000倍高い周波数である。上の図は、米国特許第7912553号に記載されたピロリ菌11に、内視鏡7の先端から導波路74を経由した電磁波2を照射して、ピロリ菌11を焼き殺すことを説明する模式図(Fig.5)である。
 
 例えば、新たなコロナウイルスが発見されたら、先ずそのコロナウイルスに固有な共振周波数をワイドバンドな分光器で調べ、調べられた共振周波数の電磁波を、新たなコロナウイルスに照射すればよい。西澤博士は米国の電気電子学会(IEEE)で「テラヘルツ将軍」と呼ばれている。

 或いは、米国特許第7912553号のFIG.12に示すように、生体の血液を採血する採血ライン93及び血液を生体に返血する返血ライン94を有する血液洗浄装置9と、採血ライン93の血液中に存在する生物学的な標的分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波を照射するアンテナアレイ6と電磁波をアンテナアレイ6に供給する電磁波発生手段13とを備えてECMO方式のように構成してもよい。

 西澤潤一博士の特許発明によれば、1年以上かけて新たな治療薬やワクチンを開発する前に、そのコロナウイルスに固有な共振周波数を測定すればよいので、短時間で直ちに新たなコロナウイルスを殺す対策を立てることができる。飛沫感染で空気中を漂っている0.1μmレベルの粒子中に存在するコロナウイルスを電磁波で殺す殺菌装置も実現できるであろう。

 中国・北京の軍事医学研究院の研究チームによれば、コロナウイルスを含んだエヤロゾルが患者の近くおよび風下側最大4メートルの位置に集中しているとのことである。西澤潤一博士の特許発明は、電磁波を用いているので、このようなエヤロゾル中のコロナウイルスに有効であろう。

 微生物やウイルスに直接電磁波を照射するだけでなく、ウイルスに感染した異常細胞と正常な細胞の共振周波数の違いを用い、選択的に異常細胞のみに電磁波を照射してもよい。特許第4272111号には実際にがん細胞に照射した例が示されている。

 特許第4272111号の【請求項7】には、以下のようなDNAの分子を操作する技術が規定されている:
 DNAを、所望の切断箇所で切断する段階と、
 前記切断箇所の端部に存在する端部コドン若しくは該端部コドンを構成する端部塩基分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波を照射し、前記端部コドン若しくは前記端部塩基分子を選択的に活性化し、前記切断箇所に他のコドンを接続する段階
 とを含み、前記DNAの塩基配列を変更することを特徴とする標的分子操作方法。
 
 しかしながら、今の技術的なプラットフォームは、そのような微生物やウイルスの共振周波数を測定する環境にない。将来的にはコロナウイルスの分子構造を観測し、DNAの配列等からシミュレーションで、新たなコロナウイルスの共振波長を決定できるようになればよい。
 
 景気対策にお金をばらまくのはそれなりに意味があろう。しかし、本当にするべきは、将来に向けたテラヘルツ帯を含むワイドバンドな分光器の研究や、テラヘルツ帯を含むワイドバンドな電磁波照射装置の開発を可能にする集中的かつ選択的な資金の配分であろう。

 ウイルスに特化した研究をするとすれば、レーザ顕微鏡のような方式でテラヘルツ波顕微鏡の開発も必要になろう。

 2003年04月~2008年03月において、文科省のリーディングプロジェクト未踏光学(テラヘルツ光学)開発・創生プロジェクト(文部科学省新産業基盤)にて、西澤博士の指導の下でミリ波~テラヘルツ波 の領域の医療応用の研究がされた。財団法人半導体研究振興会、東北大学医学部付属病院、東北大学電気通信研究所、東北大学工学部、大阪大学、岩手県立大学などが協力し、皮膚、臓器、生体成分など調べているが、その後継続して資金が投入された研究がなされていない。誠に残念である。 
 
 弁理士鈴木壯兵衞(工学博士 IEEE Life member)でした。
 そうべえ国際特許事務所は、「独創とは蓋然の先見」という創作活動のご相談にも積極的にお手伝いします。
              http://www.soh-vehe.jp




 

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鈴木壯兵衞(弁理士)

そうべえ国際特許事務所

外国出願を含み、東京で1000件以上の特許出願したグローバルな実績を生かし、出願を支援。最先端の研究者であった技術的理解力をベースとし、国際的な特許出願や商標出願等ができるように中小企業等を支援する。

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