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鈴木壯兵衞

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鈴木壯兵衞(すずきそうべえ)

そうべえ国際特許事務所

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コラム

第47回 幼児が発明した特許(その2)

発明の仕方

2018年9月29日 / 2018年10月2日更新

  発明は知識の多い特別な人のみに可能な、特殊な能力を必要とする難しいものではない。

 2018/09/22(土)放送のNHKの番組「チコちゃんに叱られる!」で、金沢工業大学で認知心理学や認知神経科学の教授をされている伊丸岡俊秀先生(青森県五所川原高校出身)は、『目から入る多すぎる情報は、人間の脳が考え事をするときの邪魔になる。それで、考え事をするとき、人間は上を見て目をそらす』との趣旨の説明をされていた。

 我が師西澤潤一先生は東京からの情報を遮断して独創的な研究の環境を維持するために、東京から350km程度以上離れた田舎である仙台に(財)半導体研究所を設立され、西澤先生の研究の拠点とされたそうである。2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥教授は『知識が有りすぎるとリスクに気がついて何もできなくなる』と言われていた。

 多すぎる情報は発明の邪魔になるということである。第41回~第45回で紹介した小学生の特許や第46回で紹介した幼児の特許は、発明にはたいした知識の量や情報の量は必要ではなく、逆に知識や情報がないから特許されるレベルの発明が完成できたということを示すものである。

 今回も米国の2~5歳の幼児が発明した特許を3つ紹介するが、「発明」とは幼児にもできる、誰でも簡単に可能な身近なものである。

      §1 米国の幼児教育
      §2 米国特許第5231733号は2歳の幼児の発明
      §3 米国特許第509451号は5歳の幼児の発明
      §4 米国特許第3091888号も5歳の幼児の発明

§1 米国の幼児教育

 米国における幼児教育は、有料の4歳(Pre-Kindergarden)と、公立では無料となる5歳(Kindergarden)の2年間がある。5歳児が通学する幼稚園年長(Kindergarten)から高校を卒業するまでの13年間は「K-12(ケースルートウエルブ)」と呼ばれ義務教育となる。

 Kindergartenは「幼稚園」なのか「小学校」判然としない米国特有の制度のようである。

 日本の幼稚園年長と同じ年頃となる5歳の子どもたちは無償で幼稚園に通園できる。しかし、保護者は、子供をキンダー(Kindergarten)に就学させる義務はない。

 例えば、カリフォルニア州の法律では、保護者が希望すれば、その年の12月2日以前に5歳になる子供を、学校開始時か子供が編入して来た時に、学校は受け入れなければならないと決められているようである。

 米国にも日本の保育園と同じように3~4歳から通うDay Care CenterやPre-Schoolと呼ばれる保育学校もあるようである。

§2 米国特許第5,231,733号は2歳の幼児の発明

 テキサス州ヒューストン(Houston)のシドニーC.ディットマンさんは台所の収納スペースに入って遊ぶのが好きであった。しかし、彼女のお母さんとお父さんは、台所の収納スペースに入って遊ぶのを禁じていた。2歳のシドニーさんは、あるときお母さんとお父さんがいなくても台所の収納スペースを開ける道具の発明をした。

【図1】シドニーさんの獲得した米国特許第5,231,733号の図面の一部

 シドニーさんの発明は図1に示すように、トイレのプランジャー(吸引具)のように台所の収納スペースの丸いノブ(K)を外側から囲んで吸引する構造の補助器具であった。

 丸いノブKを外側から囲むように、ドーム状の内壁を有した保持部(11)と保持部(11)に接続されたハンドル(12)を有している。様々なサイズのノブ(K)を吸引できるように、保持部(11)との内壁は、複数の直径の内径面(16a, 16b, 16c)が内肩部(17a, 17b)を介して階段状に連続した構造になっている。
 
 シドニーさんの発明を用いると、身体障害者は、ノブ(K)が取り付けられたドア(D)を容易に開閉操作をすることができる。彼女の父、ラルフ(Ralph)ディットマンさんを法定代理人としてシドニーさんは、1992年4月に特許出願し、4歳になった1993年8月に米国特許5,231,733号を取得した。シドニーさんが米国特許の取得者の最年少者とされている。

§3 米国特許第5,094,51号は5歳の幼児の発明

 テキサス州ヒューストン(Houston)のジェニー(Jeanie)S.ロウ(Low )さんが、まだ幼稚園(kindergarten)に通っていた頃、ジェニーさんの家では浴室(風呂場)の洗面台にプラスチック製の踏み台を使っていた。
 
 しかし、今まで使っていた踏み台は不安定で壊れやすく、部屋に散らかって不便であった。学校で発明コンテストがあることを知って、ジェニーさんは常時使えて邪魔にならない付属物(固定具)となる足載せを造ろうと考えた。

 ジェニーさんは近所の金物屋に行って木の厚板、ネジ、ヒンジ(蝶番)や磁石を購入してきた。ジェニーさんは、ノートの幅の半分の幅と、ノートの長さの半分の長さに木の厚板を2つに切断して、第1の矩形の木片(15)と第2の矩形の木片(16)を用意した。
 
【図2】ジェニーさんの獲得した米国特許第5,094,51号の図面の一部

 蝶番(19)を用いて図2に示すように、ジェニーさんは第1の木片(15)を洗面台のキャビネット(13)の前面に取り付け、第2の木片(16)を第1の木片(15)に蝶番(17)で取り付けた。

 第1の木片(15)はキャビネット(13)が平行方向に開くとき、上に跳ね上がるように2箇所の蝶番(19)で取り付けられた。第2の木片(16)は第1の木片(16)に対して2箇所に設けられた蝶番(17)でぶら下がるように取り付けられた。

 第1の木片(16)が水平になったとき、第2の木片(16)は第1の木片(16)に対し垂直になり、第2の木片(16)の下端が床に接する。即ち、第2の木片(16)は、第1の木片(16)が足載台として機能するときの第1の木片(16)を補強する支持部になる。

 ジェニーさんの発明は、背が低くて流しに手が届かない人にとって、便利且つ機械的に頑丈な踏み台になった。ジェニーさんのお母さんも喜んで使うようになったとのことである。この踏み台を使わないときは、蝶番(17,19)を用いているので、第2の木片(16)を第1の木片(16)に対して平らに折りたたんで邪魔にならないように納めることができる。

 第1の木片(16)の第2の木片(16)側の端部に小さな磁石板(18)がつけてある。一方、キャビネット(13)の対応する側に磁石の受金(受座)(23)が配置されている。このため、ジェニーさんの踏み台を使わないときは、磁石板(18)を受金(23)に吸着させて、洗面台のキャビネット(13)の前面に第2の木片(16)と第1の木片(16)を平行に折りたたむことができる。

 ジェニーさんは学校の発明コンテストで優勝した。その2年後の7歳のときには、ヒューストンの第1回発明展示会(Houston's first annual Invention Fair)で優勝した。その後1990年に特許出願をし、ジェニーさんが11歳の時の1992年に、米国特許5,094,515号を取得した。

 ジェニーさんは5歳のときの発明を11歳で特許出願しているが、当時米国は先発明主義であったので、公開後の出願でも権利化が可能となったものと思われる。

§4 米国特許第3091888号も5歳の幼児の発明

 ロバートWパッチ(Robert W Patch)君は、メリーランド(Maryland)州チェビー・チェイス(Chevy Chase)地区に特許弁護士の子供として生まれた。パッチ君は他の子供達と同様に、おもちゃのトラックで遊ぶのが好きであった。しかしパッチ君は既製のおもちゃのトラックで遊ぶのに満足できずに、自分で、自分用のおもちゃのトラックを設計し始めた。

 この自分用のおもちゃのトラックの設計には2つの重要な要素があった。1番目の要素は彼のような子供が一緒に遊べるレベルの単純さがあるか否かである。2番目の要素は、分解・組み立てにより、いろいろな形状のトラックが実現できることである。パッチ君が発明したトラックは靴箱、瓶の蓋と釘で組み立てられていた。

 パッチ君が発明したトラックを見て、お父さんは、パッチ君が発明したトラックには、特許されるべき要件が備わっていることに直ちに気がついた。米国特許商標庁(USPTO)での審査の実務を良く理解している特許弁護士は、5歳の幼児の頭脳が創造した発明には、通常の大人なお気がつかない新規性や斬新性等の特許要素があることに気がついたのである。このため、お父さんの勧めに従い、パッチ君は5歳のときに特許出願をした。
 
【図3】パッチ君の獲得した米国特許第3091888号の図面の一部

    底板(3)と該底板(3)に対し垂直に立つ2枚の側板(5)を有し、
    前記側板(5)のそれぞれが前記底板(3)の最終端より更に先まで延在する筐体(1)と、
    荷物箱(29)と、
    後輪(51)と、
    前記後輪(51)を前記筐体(1)に取り付ける車軸(53)と
   を備え、
    前記底板(3)の最終端に設けられた水平軸を中心に、
    前記荷物箱(29)が垂直方向に回転移動できるように、前記車軸(53)は
   前記荷物箱(29)を前記側板(5)に取り付けていることを特徴とするおもちゃのトラック。

 日本の場合、幼児の特許出願には親が法定代理人になる必要があるが、第45回で説明したように、米国の場合には法定代理人なしで幼児が特許出願できる。米国特許第5,231,733号のシドニーさんの場合はお父さんが法定代理人になっていた。
 
 しかし、法定代理人なしの場合であっても、USPTOに提出する書類には、発明者の署名が必要である。5歳のパッチ君は自分の名前が未だ書けなかったので、USPTOに提出する書類に×印を、自分の署名として記載したということである。そして1年も経ずして米国特許第3091888号が付与されたのである。パッチ君は米国の歴史上最年少の特許権者とされている。


辨理士・技術コンサルタント(工学博士 IEEE Life member)鈴木壯兵衞でした。
 そうべえ国際特許事務所は幼児の発明を含めた多様な発明の段階を支援します。
              http://www.soh-vehe.jp

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