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第7回 ケネディー大統領の「コンシューマー・ドクトリン」と特許

鈴木壯兵衞

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テーマ:発明の仕方

1.ケネディー大統領の「コンシューマー・ドクトリン」

 2013年11月15日に、キャロライン・ケネディー駐日大使が着任した。ケネディー駐日大使の父親である故ジョン・F・ケネディー大統領の業績のひとつに「コンシューマー・ドクトリン」の提唱による消費者の権利の保護と「コンシューマリズム」の活動の啓発がある。

 1962年、故ケネディー大統領は『消費者の権利保護に関する大統領特別教書』において、「消費者の4つの権利(Consumer Rights)」をうたった。

(1)安全を求める権利(the right to safety)
(2)知らされる権利 (the right to be informed)
(3)選択する権利 (the right to choose)
(4)意見が反映される権利 (the right to be heard)

の4つの基本権利である(John F. Kennedy, “Special Message to the Congress on Protecting the Consumer Interest, March 15, 1962.” Public Papers of the Presidents of the United States, John F. Kennedy, 1962, U. S. Government Printing Office, 1962, pp. 235-243.)。その後、1975年にジェラルド・R・フォード大統領が「消費者教育を受ける権利」を追加し、「消費者の5つの権利」とよばれるようになった。

2.「安全を求める権利」とは

 故ケネディー大統領の大統領特別教書によれば、「安全を求める権利」とは、健康や生命にとって危険な製品の販売から保護される権利である。

 「知らされる権利」とは、偽りや不正を含んだり、はなはだしい誤解を与えたりする情報、広告、表示などから保護され、かつ選択するために必要な知識を得る権利である。「知る権利」は我が国の憲法第21条第1項の規定にも関連するものである(最高裁昭和44年(し)第68号 昭和44年11月26日大法廷決定 「博多駅フィルム提出命令事件」)。

 「選択する権利」とは、できる限り多様な製品やサービスを、競争価格で入手できるよう保障される権利である。

 競争が働かず、政府の規制が行われている業種においては、「選択する権利」とは、満足できる品質とサービスが公正な価格で保障される権利である。「意見が反映される権利」とは、政府の政策立案において、消費者の利益が十分かつ思いやりをもって考慮され、行政手続においては、公正で迅速な扱いを受けられるよう保障される権利である。

 「安全を求める権利」によれば、健康・生命に危険な製品からだけではなく、その製品の製造過程やサービスからも守られる必要がある。この意味では原子力発電による「電力」は、故ケネディー大統領の「コンシューマー・ドクトリン」に反していることは明白である。

 このコラムの第6回(『小泉元首相の「原発ゼロ」はエジソンの発明で可能』)で述べたように、現在の電力会社による電力の供給は、過剰設備、非効率の典型例の産物である。我が国では、「総括原価方式」の下、どのように過剰な設備をもっていてもすべて電力料金に転嫁でき、しかも地域独占によって競争相手にさらされずに、料金を引上げられることが許されてきたので、コンシューマー・ドクトリンで提唱された、「知らされる権利(知る権利)」、「選択する権利」、「意見が反映される権利」のいずれも無視されてきた。

 経済産業省の官僚を含めた電力業界の利権のために、グローバルな見地から、電力があり余っている状態の国や地域から不足の状態の国や地域に電力を供給する送配電技術等の工夫が優先されるべきであるのに、消費者の権利は全く保護されていない。

3.特許法第1条の規定の趣旨

 特許法第1条には、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする」と規定されている。特許法第1条に規定されている「産業の発達」とは「コンシューマー・ドクトリン」に適合するものでなくてはならず、特許法第1条に規定されている発明の目的は、「コンシューマリズム」の活動を最大化できるものでなくてはならない。

 第6回のコラムで述べたとおり、「技術」には「フェイルセーフ(第3原則)」が要求されている。「フェイルセーフ」とは事故があった場合、安全の側に停止できるという要請である。「フェイルセーフ」ではない未完成な技術では、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与すること」はできない。

 「安全を求める権利」に関連するであろうが、「折りたたみ式電子レンジ」の特許出願が電子レンジの筐体に電磁波漏洩防止装置がないということで発明未完成とされた(最高裁平成4年2月13日判決)。又、「原子力発生装置」の事件でも、危険防止、安全確保の手段を欠くとして特許されなかった(最高裁昭和44年1月28日判決)。

 我々は「コンシューマー・ドクトリン」に適合する発明をすることが求められているのである。


辨理士・技術コンサルタント(工学博士 IEEE Life member)鈴木壯兵衞でした。
そうべえ国際特許事務所ホームページ http://www.soh-vehe.jp

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専門家

鈴木壯兵衞(弁理士)

そうべえ国際特許事務所

外国出願を含み、東京で1000件以上の特許出願したグローバルな実績を生かし、出願を支援。最先端の研究者であった技術的理解力をベースとし、国際的な特許出願や商標出願等ができるように中小企業等を支援する。

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