樹脂切削加工について

熊田茂雄

熊田茂雄

テーマ:部品加工技術

樹脂切削加工(resin Cutting)とはプラスチックなどの樹脂製の素材を切削工具を用いて切断したり削ったりする加工方法です。

 樹脂切削加工は、型に溶かした樹脂材料を流し入れ、冷やして成形する「射出成形」とは異なり、マシニングセンタや旋盤、フライス加工機などで1つ1つ材料を加工するため精度を出すのに適しています。切削加工とは機械加工の中では代表的な加工方法であり、旋盤加工やフライス加工などが切削加工に含まれます。

 切削加工の中でも樹脂の加工の難易度は高く、加工時には摩擦による熱を考慮して加工しなければ変形をしてしまう特徴を持ちます。樹脂素材は金属などの他の素材に比べて熱伝導率が低いため、熱の影響を受けやすいことから、熱による膨張や冷却後の変形などが発生しやすい傾向にあります。熱を抑えるために工具が接触する面積を減らしたり、素材の特徴を把握して冷却後の寸法を考えたりといった工夫が必要です。誰でも簡単にできる加工という訳ではないため、熟練者に加工を依頼することが多くなります。

●樹脂切削加工の一般的な手順
 1.製作方法の検討、モデリング、プログラミング
 試作品や加工データなど、製作したい加工物の情報をもとに製作方法を検討します。製作に関する要件が定まっていない場合はヒアリングの上、加工物の設計や強度、性能などを確認しながらモデリングを行います。
 対象製品図面がある場合は、その内容に沿ってプログラミングを行います。

 2.材料の検討、用意
 製作する加工物に合ったサイズや素材の材料を用意します。この際、加工後のソリ等も考慮した確認が必要になる場合もあります。

 3.マシニングセンタの加工準備
 マシニングセンタ(MC)に素材をセットしたり、エンドミルや位置を設定したりといった加工準備を行います。

 4.加工
 マシニングセンタや5軸加工機(5軸マシニングセンタ)で加工を行います。

 5.仕上げ処理
 加工後は、バリ取りやブラスト仕上げなど、完成に向けた仕上げ処理を行います。

●樹脂切削加工に用いられる素材
 製造業で使用される樹脂は大きく分類して、【熱可塑性樹脂(熱可塑性プラスチック)】と【熱硬化性樹脂(熱硬化性プラスチック)】の2種類に分けられます。

樹脂切削加工に用いられる素材は一般的に流通している熱可塑性樹脂が大半で、その中でも下記の素材が代表的です。
 ▼ 汎用プラスチック
 代表的なものでは、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン) や、そのほかアクリル(PMMA)、PS(ポリスチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、ABS 樹脂などが挙げられます。

 ▼ エンプラ(エンジニアリングプラスチック)
 代表的なものでは、PA(ナイロン/ポリアミド)、6ナイロン、66ナイロン、MCナイロン(MC901)、POM(ポリアセタール)、UHMWPE(超高分子量ポリエチレン )、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PVDF (ポリフッ化ビニリデン) などが挙げられます。

 ▼ スーパーエンプラ(スーパーエンジニアリングプラスチック)
 代表的なものでは、PTFE(テフロン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、LCP(液晶ポリマー)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PI(ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)などが挙げられます。

(参考ブログ)
https://www.pec-kumata.com/post/resincutting

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熊田茂雄
専門家

熊田茂雄(生産技術コンサルタント)

PEC-KUMATA 生産技術コンサルタント

工程設計や工場管理に40年以上従事した現場経験をもとに、生産技術コンサルティングを提供。品質改善や生産性向上などQCD課題の改善策とあわせて、先端技術や異分野を取り入れた技術方向性もアドバイスします。

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