ステンレスの加工性について

熊田茂雄

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テーマ:材料技術

 生産技術業務の中で取り扱う金属について、その加工性に関わる知識が必要となる場合が時々あります。そこで、今回は意匠性、耐食性、機能性に優れた金属と言われているステンレスを取り上げて、「ステンレスの加工性(stainless processability)」についてコメントします。

 ステンレス(鋼)は、 鉄 に一定量以上の クロム を含ませた、 腐食 に対する耐性を持つ 合金鋼 です。 規格では、クロム含有量が 10.5 %( 質量パーセント濃度 )以上、 炭素 含有量が 1.2 % 以下の鋼と定義されています。 単に ステンレス とも呼ばれますが、 ステンレス鋼の腐食に対する耐性(耐食性)の源は含有されているクロムで、このクロムによって 不働態皮膜 と呼ばれる数 ナノメートル の極めて薄い皮膜が表面に形成されて、金属素地が腐食から保護されています。

 ステンレスの物理的特性や機械的特性の主な特徴を述べると下記のようになります。

①比重はアルミニウム(2.7)やマグネシウム(1.8)に比べて大きく、鉄(7.8)と同程度であり、銅(8.9)よりやや小さいです。

②ステンレスは鋼種や熱処理条件により、様々な機械的性質が得られるが、全体的に耐力、引張強さともに、鉄、アルミニウム、マグネシウムに優っている。

③ステンレスの熱伝導率は、アルミニウムの1/10程度、鉄の1/4程度であり、熱を伝えにくいが、用途によれば保温性が優れているということになります。

④電気抵抗率は高く、電気を通しにくい特性をもちます。

⑤ヤング率は、鉄と同程度、アルミニウムの3倍程度です。

 以上の特性を踏まえ、ステンレスの主な加工方法についてコメントします。

・切削加工
 ステンレスは普通鋼よりも硬く、強度があるため切削は難しいですが、ステンレスの優れた特性である耐食性や非磁性を生かして、切削加工で部品を製作する用途があるため、ステンレス快削鋼と呼ばれるものが開発されています。ステンレス快削鋼はS(硫黄)、Pb(鉛)、Se(セレン)などを添加して快削性を上げています。

・プレス加工
 オーステナイト系ステンレスやフェライト系ステンレスの高加工性鋼種を使用すれば、ある程度の深絞りは可能であり、多くの用途に使用されています。

・接合加工
 被覆アーク溶接、サブマージアーク溶接、イナート(不活性)ガスアーク溶接(TIG溶接、MIG溶接)、炭酸ガスアーク溶接(MAG溶接)、プラズマ溶接、電子ビーム溶接、レーザー溶接、抵抗溶接、ろう付けなどの各種接合加工が可能です。

(参考ブログ)
https://www.pec-kumata.com/post/stainlessprocessability

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熊田茂雄
専門家

熊田茂雄(生産技術コンサルタント)

PEC-KUMATA 生産技術コンサルタント

工程設計や工場管理に40年以上従事した現場経験をもとに、生産技術コンサルティングを提供。品質改善や生産性向上などQCD課題の改善策とあわせて、先端技術や異分野を取り入れた技術方向性もアドバイスします。

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