マルエージング鋼について

熊田茂雄

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テーマ:材料技術

 マルエージング鋼(MaragingSteel)は、航空・宇宙分野の構造材として開発された高硬度で、高い靭性と機械的性質を有し、折損対策に最適な特殊鋼です。使用用途としては、ばね用材料として高性能エンジンのバルブスプリングにしたり、光学レンズ型にしたり、身近な商品としていうと、ゴルフクラブヘッドの素材に使われることがあるものです。

 マルエージング鋼は炭素の含有量を減らした鋼(0.03 % 以下)で、Ni と Co などをあわせて18 % 含む特殊鋼です。マルテンサイト化した後、時効処理 によって強度を向上して使われることが一般的となっています。

 マルエージング鋼はアルミダイカスト金型、低圧鋳造金型、鍛造金型、打抜金型 化 プラスチック金型の肉盛溶接にも使用しています。つまり伸びがよく、濡れ性も良く、また強度も強いことから溶接に適している材料でもあります。

 このような特性から、マルエージング鋼は、金属3Dプリンターの材料としてよく使用されるものです。金属3Dプリンターはその構成上、金属粉末にレーザーを照射し溶かしていきますので、溶接と同じようなプロセスを使っていることになります。したがって、金属3Dプリンターに非常に相性が良い材料として使われていますので、パウダーベッド方式採用の金属3Dプリンタ-ではほぼマルエージング鋼がラインナップされています。

 マルエージング鋼は、また切削性も良いことが知られています。(フライス加工、マシニング加工、研磨、熱処理、コーティング、鏡面仕上げ等)この種の鋼は機械特性に優れ、熱処理がしやすいことを特徴とし、簡単な時効硬化熱処理によって優れた硬さと強度が得られます。金属3Dプリンターの造形時も時効硬化後も、必要に 応じて機械加工、放電加工、溶接、マイクロショットピーニング、研磨、コーティングを施すこともできます。金属3Dプリンター造形に起因して部品が有する一定の異方性は、相応の熱処理によっ て軽減・除去することができます。

(参考ブログ)
https://www.pec-kumata.com/post/maragingsteel

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熊田茂雄
専門家

熊田茂雄(生産技術コンサルタント)

PEC-KUMATA 生産技術コンサルタント

工程設計や工場管理に40年以上従事した現場経験をもとに、生産技術コンサルティングを提供。品質改善や生産性向上などQCD課題の改善策とあわせて、先端技術や異分野を取り入れた技術方向性もアドバイスします。

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