アルミニウムの加工性

熊田茂雄

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テーマ:材料技術

 生産技術業務の中で取り扱う金属について、その加工性に関わる知識が必要となる場合が時々あります。そこで、今回は軽量性、電気的・熱的特性、展延性に優れた金属と言われているアルミニウムを取り上げて、「アルミニウムの加工性(aluminum processability)」についてコメントします。

 加工性を検証する場合は、その基本となる物理的特性や機械的特性を知ることが重要ですが、その主な特徴を述べると下記のようになります。
①比重が鉄やステンレス鋼の1/3ほどであり、かなり軽い。
②比強度(単位重量当たりの強度)が大きい。
③熱伝導率が鉄の約3倍で、熱をよく伝えるということは急速に冷えるという性質にもなる。
④電気伝導率は銅の60%ですが、比重が約1/3であり、そのため同じ重さの銅に比べ2倍もの電流を通すことができる。
⑤空気中で緻密で安定な酸化被膜を生成し、耐食性が良い。
⑥非磁性体で磁場に影響されない。
⑦塑性加工しやすく、様々な形状に成形することが可能である。

 以上の特性を踏まえ、アルミニウムの主な加工方法についてコメントします。(実際には様々なアルミニウム合金が開発されており、下記は、その基礎的な内容のみであるととらえていただきたい。)

・切削加工
 アルミニウムは比較的溶融点が低く、延性が高いため、構成刃先ができやすく、バリが発生しやすいため、切削は難しいとされています。しかし、たとえば、シャープな刃形の工具を使用する、切削速度を大きくする、また、切削時の発熱に対して切削油をうまく使用して冷却する等の対策をおこなえば切削加工も可能となります。

・プレス成形
 アルミニウムのもつ塑性加工のしやすさから、深絞り成形、張り出し成形、伸びフランジ成形、曲げ成形などのいろいろなプレス成形が可能であるが、鋼板と比較すると極限変形能が劣る分、プレス成形性の改良の余地が残っていると思われます。

・接合加工
 アルミニウムの接合加工としてよく使用されるのは、イナート(不活性)ガスアーク溶接(TIG溶接、MIG溶接)、レーザー溶接、抵抗溶接などであるが、アルミニウムは比熱が大きくかつ熱伝導性が高いため鋼板と比較し、溶接は困難な場合が多いです。そこで近年、登場したのが母材を溶融させずに接合させるFSW(摩擦撹拌溶接)が、アルミニウムの接合方法として脚光を浴びています。

その他、ろう接(ろう付け、はんだ付け)方法、鉸めやボルト締め等の機械的接合方法もよく使用されています。


(参考ブログ)
https://www.pec-kumata.com/post/aluminumprocessability


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熊田茂雄
専門家

熊田茂雄(生産技術コンサルタント)

PEC-KUMATA 生産技術コンサルタント

工程設計や工場管理に40年以上従事した現場経験をもとに、生産技術コンサルティングを提供。品質改善や生産性向上などQCD課題の改善策とあわせて、先端技術や異分野を取り入れた技術方向性もアドバイスします。

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