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ねじについて

熊田茂雄

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テーマ:機械要素技術

 ネジ締め加工で述べたように、ねじは組付け加工方法の中で、唯一、加工後に分解、手直し等が容易にできるという意味で使用頻度の高い重要な機械要素です。

 ねじの運動を力学的に見ると、「ねじは斜面の応用である」と言われるように、小さな締め付けトルクを大きな締め付けトルクに変換できることがわかります。

 ねじは一般的には丸い棒状、あるいは先の尖った円錐形です。ねじの側面には溝が彫り込まれており、ねじ山の位置が内か外かで区別しています。ねじ山が外側にあるボルトのようなねじを「おねじ」、ねじ山が内側にあるナットのようなねじを「めねじ」と呼びます。ねじは美観を良くするために装飾目的で使われることもありますが、ボルトやナットは締め付けをより強くするため、実用目的で使われます。

 ねじはある期間使用していると必ず緩んでしまいます。その原因を突き止め、緩み止めをすることも、ねじの実用において大切なことであり、生産技術的にもねじの緩みの問題は大きな関心事となります。今回はねじの緩みに焦点を当ててコメントします。 

【ねじの緩みのメカニズム】
 ねじの緩みには大きく分けて回転させたねじが戻るものと戻らないものがあります。
①ねじが戻らず発生する緩み
・初期緩み
 最初にねじを締結するとき、締結部にある大きさの力が加わりますが、このとき表面粗さなどの微小な凹凸が影響してねじ締結体は変形します。これが締結後に時間経過や外力によりへたった場合に緩みが発生します。
  → 発生防止として、皿座金やばね座金が用いられます。
・陥没緩み
 締め付けの際の面圧が大きすぎると、締結部の表面が塑性変形します。これが締め付けの際だけでなく、締め付け後の時間経過によっても進むクリープなどによる緩みが生じます。
  → 発生防止として、平座金が用いられます。
・微動摩耗による緩み
 ねじの締結部が外力のはたらきや振動などによってすべり、摩耗を生じて緩みが生じます。
・密閉材の永久変形による緩み
 ガスケットなどの異種材料の密閉材が用いられる場合、そのへたりによって緩みが生じます。
・過大外力による緩み
 締め付け後にはたらく過大外力によって、ボルト自体が塑性変形を起こして伸びてしまい、緩みが生じます。
・熱的原因による緩み
 ねじの締結部に材質の違いがある場合、締結時と使用時で温度変化があると、熱膨張の違いによって変形し、熱応力が生じます。このことによって緩みが生じます。

②ねじが戻って発生する緩み
・軸回り方向繰り返し外力による戻り
ねじの締結部に軸方向または軸に直角方向の外力のはたらきや振動などが生じると、ねじ面における摩擦角やねじのリード角などが変化して、ねじの自立条件が成立しなくなることがあります。このことによってねじが戻り緩みが生じます。
・軸直角方向繰り返し外力による戻り
 ねじの締結部に軸直角方向の外力が繰り返しはたらくと、接触部がすべってねじが戻ります、このことによって緩みが生じます。
・軸方向繰り返し外力による戻り
 ねじの締結部に軸方向の外力が繰り返しはたらくと、ねじは引張と圧縮を繰り返し受けることになります。この場合準静的と衝撃的の両方で緩みが生じます。
  → これらの発生防止対策として、溝付きナット、割ピン付きボルト等が用いられます。

 以上のように、ねじは存在は古くても、使用頻度が高く、極めて重要な機械要素です。
ねじに関係する緩み対応を含めた課題解決の方向性指針等が、生産技術コンサルティング対象となります。

(参考ブログ)
https://www.pec-kumata.com/post/screw


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熊田茂雄
専門家

熊田茂雄(生産技術コンサルタント)

PEC-KUMATA 生産技術コンサルタント

工程設計や工場管理に40年以上従事した現場経験をもとに、生産技術コンサルティングを提供。品質改善や生産性向上などQCD課題の改善策とあわせて、先端技術や異分野を取り入れた技術方向性もアドバイスします。

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