競争力の源泉は、教育
こんにちは。ホスピタリティコンサルタントの菅又蒼圭美です。
AIには多くのことができるように
なっていますが、人間特有の「おもてなし」の中で、まだAIにはできない、
または難しいとされる領域があります。
以下は、AIでは実現が難しい「おもてなし」の要素です。
1. 深い共感と感情的なつながり
AIはデータをもとにして感情を
理解しようとしますが、
本当の意味での感情的な共感を持つことは
難しいです。
人間は相手の表情、声のトーン、
態度などから細かい感情の変化を読み取り、
相手の気持ちに寄り添うことができます。
特に、相手の深い悩みや喜びに共感し、
それに基づいて適切な対応をするというのは、人間ならではの強みです。
生き生きとした感情は、良いものも
悪いものも、私たちの経験値に記録されています。
そこから照らし合わせた共感は、
一人一人、人の数だけ存在します。
確かに、AIには太刀打ち出来ないですよね。
2. 直感による対応
人間は時として明確な理由やデータなしに
直感で動くことがあり、これが重要な「おもてなし」の一部となります。
お客様の言葉や態度に現れない微妙なサインを感じ取り、次にどう行動すべきかを判断する直感的な対応は、AIには難しいです。
実際、私の経験でも、人間には無意識に視覚に入っている無数の情報があります。
ベテランのCA同士になると、ちょっと気になるお客様は共通しているものです。
あ、あの人ね、失礼の無いよう気をつけよう、とか、
あの方やっぱりそう言う感じだった?
など、日常的に交わされている会話がありました。
言葉にならないご要望や、不満など
早めに察知出来る文化というのは、人間の肌感覚ですよね。
3. 文化や背景に基づく細やかな配慮
「おもてなし」は文化的背景や文脈に深く根ざしているため、特定の地域や状況における繊細な対応はAIには困難です。
例えば、ある地域での特有の風習や伝統的なマナーを理解し、その場にふさわしい対応を瞬時に行うには、豊かな文化的知識や経験が必要です。
スタッフ同士でも、例えばCAは欧州ベースや、中国、韓国のCAなどど共働しています。
それぞれに文化の違いがあり、事前に
研修を受けます。
そして、ちょっとした目線、表情から、
「あ、休憩したそうにしている。
日本人なら、皆の作業が終わるまで当然手伝う。
でも、欧州の方々は、改めて指示しないと、
それは、こちらの怠慢にあたる」と、
改めて何をして欲しいか、指示対応することがありました。
4. 個人的な関係性に基づく対応
人間同士は、長期的な関係の中で相手の好みや習慣を把握し、個々の関係性に
基づいた対応を行うことができます。
たとえば、常連客の好みや過去の経験を踏まえて個別の対応をすることや、
細やかな気遣いで「いつも気にかけてくれている」と感じさせる行動は、人間ならではの「おもてなし」です。
声をかけない事もおもてなし、という場面もあります。
それでもしっかり観察しスタンバイする、ということは確かにAIには難しいかもですね。
5. 創造性やユーモアのある対応
AIはパターン認識が得意ですが、
創造的な発想やユーモアのセンスを持って柔軟に対応することは難しいです。
予期しない問題が発生した場合や、
特別なリクエストに応える際、
相手のニーズに合わせた独創的な解決策を提示することや、その場にふさわしいユーモアを交える対応は、人間の持つ大きな強みです。
ユーモアには、時事問題を意識したり、
そのお客様の特有の情報も欠かせません。
それは、同じ時間を過ごして観察した情報からもたらされますよね。
6. 身体的な行動を伴うホスピタリティ
AIやロボットは、基本的には言葉やデジタルなインターフェースを通じてやりとりを行いますが、実際の「おもてなし」では身体的な行動も重要な要素です。
例えば、さりげなく椅子を引いたり、
相手のコートを受け取ったり、
温かいお茶を淹れて提供するなど、
物理的な行動を通じて気配りをする場面は、
まだ人間のほうが得意です。
機内食では、和食はご飯、洋食はパン、が
デフォルトですが、洋食でもご飯を召し上がりたい方もいます。
なんとなくそれまでの行動から察知して
お伺いすることももちろん、
隣のCAのお客様との会話から、
こちらのお客様の分で融通できないか、など当たり前に行っていました。
7. その場の「空気」を読む力
「空気を読む」という日本特有のコミュニケーション文化も含め、周囲の状況や複数の人の意図を読み取り、適切に振る舞うことは、AIにとっては極めて難しいです。
人間同士が持つ無意識の共感能力や、
言葉にされていないニュアンスを感じ取る力は、「おもてなし」の本質的な部分であり、
これをAIが完全に模倣することはまだ困難です。
8. 一人ひとりの価値観に合わせた柔軟な対応
AIは一般的なデータに基づいて対応するため、どうしても「標準的な反応」に偏ることがあります。
一方で、人間は一人ひとりの価値観や好みに合わせた、オーダーメイドの対応を瞬時に行うことができます。
例えば、顧客の過去の経験や趣味、体調に合わせた個別の提案や気配りは、AIには難しい領域です。
AIは接客やサービスにおいて多くの役割を
果たせるようになっていますが、感情的な共感、直感、創造的な解決策、身体的なケア、文化や文脈を深く理解した配慮など、
「おもてなし」の本質的な部分には
まだ人間の強みが残っています。
人間らしい温かさや柔軟性、細やかな気遣いは、AIが補完できない部分であり、これこそが人間の「おもてなし」
の価値を高めるポイントです。
逆説的に言えば、上記のことが出来ていない企業は、AIに淘汰されてしまいますね。
少しでも早く、この「人間らしい温かさ」を
競争力の源泉とすることが
接客現場にかかわらず、
生き残りの秘訣ともいえるのではないでしょうか。