iDeCoから企業型DCへ――経営者の目的で変わる退職金づくりと福利厚生
運送業・企業型DC・助成金専門社会保険労務士の吉元です。
「企業型DCに興味はあるけれど、うちの会社にはどんな制度が合うのだろう?」
企業型確定拠出年金(企業型DC)について説明すると、経営者からそんな質問を受けることがあります。
企業型DCは、経営者自身の退職金づくりにも、従業員の福利厚生の充実にも活用できる企業年金制度です。
しかし、会社によって経営課題も従業員の状況も異なります。
だからこそ、私は企業型DCの導入を検討するとき、最初から掛金や節税効果の話だけをするのではなく、**「自社は何のために企業型DCを導入するのか?」**を考えることが大切だと思っています。
今回から3回に分けて、企業型DCの導入前に確認したい7つのポイントをご紹介します。
第1回は、制度設計の出発点となる3項目です。
1.企業型DCを導入して、何を実現したいのか?
企業型DCに関心を持つ理由は、経営者によってさまざまです。
例えば、こんな目的があります。
・経営者自身の退職金を準備したい
・税金や社会保険料の負担を見直したい
・従業員の福利厚生を充実させたい
・従業員の老後資産形成を支援したい
・人材採用や定着に役立つ制度を整えたい
どれか一つが正解というわけではありません。
実際に、以前ご紹介した2つの導入事例でも、経営者はどちらもiDeCoに加入していましたが、企業型DCの導入目的は異なっていました。
一方は、税金・社会保険料の負担軽減と経営者自身の退職金づくりを目的として、完全選択制DCを導入。
もう一方は、従業員の福利厚生の充実と、経営者・従業員双方の退職金づくりを目的として、基本給付金+加算給付金(A+B方式)を導入しました。
同じ企業型DCでも、何を実現したいかによって制度設計は変わります。
また、会社に利益が出ている経営者から、「役員報酬を増やす以外に、将来のために活用できる方法はないか」という相談を受けたこともあります。
このように、企業型DCに興味を持つきっかけは、自分自身の資産形成でも構いません。
そこから従業員の福利厚生や会社の人材課題へと視野を広げていくこともできます。
大切なのは、制度を導入すること自体を目的にしないことです。
まずは、自社が何を実現したいのかを考えてみましょう。
2.従業員の年齢構成や給与水準を把握しているか?
次に考えたいのが、従業員の状況です。
例えば、20代の従業員と50代の従業員では、老後資産形成に使える期間が異なります。
また、同じ年齢でも、給与水準や家族構成、生活費などによって、毎月の収入から資産形成に回せる金額は違います。
企業型DCは、原則として60歳になるまで積み立てた資産を引き出せません。
そのため、老後に向けた資産形成には適していても、日々の生活費や近い将来の支出に備える預貯金とは役割が異なります。
例えば、会社が毎月5,000円の掛金を従業員のために拠出する制度であれば、従業員は自分の給与を減らさずに老後資産形成の支援を受けられます。
一方、給与の一部を掛金に振り替える選択制DCでは、従業員自身が現在の収入と将来の資産形成のバランスを考えることになります。
どちらにも特徴があります。
ここで経営者に考えていただきたいのは、**「従業員にとって、どのような仕組みが利用しやすいのか?」**ということです。
会社が良い制度だと思っていても、従業員が仕組みを理解できなかったり、生活状況に合わなかったりすれば、福利厚生としての価値は伝わりにくくなります。
従業員の年齢構成や給与水準を把握することは、制度設計のためだけではありません。
自社の従業員が、現在の生活と将来の暮らしについて、どのような課題を抱えているのかを考えるきっかけにもなります。
3.自社に合った企業型DCの制度設計はどれか?
企業型DCには、会社の目的に応じたさまざまな制度設計があります。
代表的な仕組みを簡単にご紹介します。
① 完全選択制DC
給与や役員報酬の一部について、現金で受け取るか、企業型DCの掛金に充てるかを選択する仕組みです。
経営者自身の退職金づくりや、税金・社会保険料の負担の見直しを考える際に、選択肢となります。
ただし、社会保険料への影響は報酬水準などによって異なり、将来の公的年金や社会保険給付にも影響する場合があります。
② 会社が掛金を拠出する方式
会社が従業員のために掛金を負担する仕組みです。
従業員の給与から掛金を振り替えるのではなく、会社が福利厚生として老後資産形成を支援します。
従業員への還元を重視する会社にとって、検討しやすい方式です。
③ 基本給付金+加算給付金(A+B方式)
会社が拠出する部分と、従業員が給与の一部を掛金に充てるか選択できる部分を組み合わせる方式です。
会社が一定の福利厚生を提供しながら、従業員自身にも資産形成の選択肢を設けられます。
④ マッチング拠出
会社の事業主掛金に、従業員が自分の掛金を上乗せする仕組みです。
従業員が拠出する掛金は所得控除の対象になります。
選択制DCとは異なり、従業員の掛金は給与から控除されるため、原則として社会保険料の算定対象となる報酬は減りません。
なお、マッチング拠出では、2026年4月から従業員の掛金が事業主掛金を超えてはならないという制限が撤廃されました。拠出限度額などの条件は引き続き適用されます。
このように、企業型DCといっても、会社と従業員の掛金の負担方法や税金・社会保険料への影響は同じではありません。
「企業型DCならどれでも同じ」ではないのです。
制度を選ぶ際には、会社の目的、従業員の状況、会社が継続して負担できる金額などを踏まえることが重要です。
【企業型DCは、制度設計を考えるところから始まる】
ここまで、3つのポイントをご紹介しました。
① 企業型DCを導入して、何を実現したいのか?
② 従業員の年齢構成や給与水準を把握しているか?
③ 自社に合った制度設計はどれか?
この3つを考えるだけでも、企業型DCの活用方法は少しずつ具体的になってきます。
私は、企業型DCを導入する前の段階で、経営者が自社の将来や従業員のことを考える時間に、大きな意味があると思っています。
経営者自身の退職金をどう準備するか。
従業員にどのような福利厚生を提供したいか。
そして、これからどのような会社にしていきたいか。
企業型DCの制度設計は、こうした経営者の考えを具体的な仕組みにしていく作業でもあります。
最初から制度の細かな仕組みを理解している必要はありません。
まずは「自社なら、どのように活用できるだろう?」と考えることから始めてみてはいかがでしょうか。
次回は、導入前に確認したい7項目のうち、次の2つを取り上げます。
④ 会社の負担と制度の継続性
⑤ 税金・社会保険料・公的年金への影響
企業型DCのメリットだけでなく、会社と従業員の双方にとって、無理なく続けられる制度にするためのポイントを考えます。
【企業型DCの制度設計・導入サポートについて】
企業型DCは、会社の規模や経営者の目的、従業員の状況に応じて、制度設計を検討することができます。
経営者自身の退職金づくりから、従業員の福利厚生の充実まで。自社に合った活用方法を一緒に考えてみませんか。
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公式LP:https://yutoli-sr.com/
最後までお読みいただきありがとうございます。


