【エンゲージメント⑨】「ご褒美」で釣るほど、部下の主体性は消えていく:内発的動機づけ理論で実現する、報酬を超えた「働きがい」を育むマネジメント [(7) 内発的動機づけ理論]
目次
これまでマズローや期待理論を見てきましたが、人間の欲求は必ずしも一つずつ順番に満たされるわけではありません。
「生存、関係、成長」という3つの欲求が並行して働くとする「ERG理論」の視点から、より柔軟な動機づけを考えてみましょう。
欲求は「段階」ではなく「同時並行」で動いている
- 「給与や職場環境を整え、承認欲求を満たすためにマメに褒めているはずなのに、なぜか社員が不満げだ」
- 「人間関係は悪くないのに、飲み会で不満を言っているようすが見られる」
多くのマネージャーが直面するこの悩みは、有名な「マズローの欲求段階説」だけでは説明しきれない現実を示しています。
心理学者のアルダファーが提唱した「ERG理論」は、人間の欲求をより柔軟に、かつ冷徹に捉え直した理論です。
この理論を理解することで、部下の不満の「真の原因」を突き止め、的外れな対策を防ぐことが可能になります。
1. 理論の解説:人間の欲求を構成する「3つの柱」

ERG理論では、人間の欲求を以下の3つの頭文字で整理します。マズローとの最大の違いは、これらが「同時に並行して存在する」と考える点です。
- E:存在欲求(Existence): 身体的な生存、物質的な欲求(金銭、給与、職場環境の安全など)。
- R:関係欲求(Relatedness): 家族、友人、上司、同僚といった「重要な他者」との相互関係、分かち合いの欲求。マズローの「所属・愛」と「承認」の一部に相当します。
- G:成長欲求(Growth): 自分自身や環境に創造的・生産的な効果をもたらしたいという欲求(能力開発や自己実現など)。
【マネジメントのポイント:同時並行的な存在】
低次の欲求(E:存在)が完全に満たされていなくても、高次の欲求(G:成長)が同時に存在し、人を動機づけることがあります。
「まずは金銭的余裕が必要(存在欲求)だから、部下に数字を渡してあげよう……」と、上司が代行することで、部下の成長の機会(成長欲求)を後回しにすることが、実は部下の意欲を削ぐリスクがあります。
2. 「承認(関係欲求)」を満たしてもうまくいかない理由
マネージャーが陥りやすい最大の罠は、「部下を褒めて認めれば(R:関係欲求の充足)、やる気が上がるはずだ」という思い込みです。
しかし、どれだけ承認を与えても不満が消えない場合、そこにはERG理論特有の「退行」が起きています。
① フラストレーション・レグレッション(欲求の可逆性・挫折・退行)
上位の欲求である「G:成長欲求」が満たされない(=仕事に手応えがない、成長実感がない)場合、人は無意識に、満たしやすい下位の欲求である「R:関係欲求」や「E:存在欲求」に戻り、そこを過剰に満たそうとします。これを「欲求の退行」と呼びます。
- 「褒める」だけでは解決しないケース: 「成長実感(G)」が持てない部下に対し、上司が優しく接したり褒めたり(関係欲求:R)しても、それは根本的な「成長の乾き」を癒やすものではありません。部下は一時的に満足しても、すぐにまた別の「関係性」や「条件」への不満を噴出させます。
② 不満のすり替わり:不平不満は「SOS」である
「給料が安すぎる(存在欲求:E)」や「もっと構ってほしい(関係欲求:R)」という執拗な要求の裏には、実は「本来やりたかった仕事ができていない」「自分の能力が上がらない」という成長欲求(G)の挫折が隠れていることが多々あります。
表面的な「承認」や「報酬」で対応する(=マズローを逆走させる)のではなく、「どこで成長が止まっているのか?」を見抜くのがリーダーの真の役割です。
3. 不満の源泉を特定し、多面的に動機づける
不満を「わがまま」と切り捨てる前に、以下のステップで「欲求の詰まり」を解消しましょう。
- 不満の裏にある「G(成長)」の挫折を探る:部下が条件面(E)や人間関係(R)の不満を漏らし始めたら、「最近、自分の成長を感じられているか?」と問いかけます。多くの不満は、実は「自身の成長」「手応えのある仕事」に飢えているサインです。
- 「関係(R)」を「成長(G)」への踏み台にする:単に褒める(R)のではなく、「君のこのスキルは素晴らしい。次は一歩進んで、このプロジェクトに挑戦してみないか?(G)」と、承認を成長への期待へと繋げます。
- 「成長欲求(G)」を支える組織的な仕組みを整える:単なる「期待」で終わらせず、社員が自律的に高みを目指せる仕組みが必要。
(参考)「能力開発と自己実現」の土壌を整備
- 学習の民主化: 必要なスキルをいつでも学べる「学習機会の提供」
- ジョブ・クラフティングの支援: 本人の強みと組織の目的を一致させる「役割の再設計」
- 挑戦を称賛する仕組み: 失敗を恐れず、自己実現への試行錯誤を評価する「フィードバック・システム」の構築
4. 管理者の役割は「欲求の詰まり」を取り除くこと
部下からの要求が「物質的」なものや「過度な承認」に偏り始めたら、それは組織内での「成長の停滞」を知らせるアラートです。
「褒めているのに響かない」のは、部下が承認ではなく、自らの手で何かを成し遂げる「成長の機会」を求めているからです。
株式会社バリュー・コア・コンサルティングでは、ERG理論などの心理学的根拠に基づき、貴社の「不満の正体」を見抜く診断と改善をサポートします。
- 「若手の不満の矛先がどこにあるのか分からない」
- 「承認の技術を学んだが、現場に活気が出ない」
そんな経営層・管理職の皆様、私たちは、「成果を出すための仕組みをつくり、御社に合わせたやるべきことの絞り込みと具体的施策」を提供します。
「能力開発の仕組み」や「自己実現に向けたキャリアパス」を仕組みとして整え、社員が本質的な成長と繋がりを実感できる「自走する組織」を共に創り上げませんか?
- なお、本コラムにおけるエンゲージメント理論の解釈は、弊社独自の観点によるものであり、内容の一部を抜粋してご紹介している点をご承知おきください
次回予告| エンゲージメントを高める「24理論」をそれぞれ解説
多様な欲求を同時に満たすアプローチを解説しました。
では、それらの欲求を具体的な行動に結びつけるにはどうすればよいか。
次回は「ゴール(目標)設定理論」を通じて、パフォーマンスを最大化する目標の立て方をお伝えします。
▼次のコラムはこちら
【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】⑥ゴール(目標)設定理論
▼過去の「エンゲージメント向上」コラムはこちら
- 【エンゲージメント|前提】「管理」から「成長支援」へ:Gallup Q12から読み解く
- 【エンゲージメント|全体像】自社に最適なエンゲージメント向上方法とは?24理論全体像
- 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】①マズローの五大欲求階層説
- 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】②マクレランドの欲求理論(三欲求理論)
- 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】③期待理論①
- 【エンゲージメント|(1)動機づけ理論】④期待理論②(拡張モデル)
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