【エンゲージメント⑤】「良かれ」と思った報酬がやる気を奪う:期待理論で紐解く、従業員が努力するかを決める「主観的価値」の落とし穴[(3) 期待理論①]
目次
努力を「業績」に変えるための、マネジメントのミッシングリンク
- 「社員の努力が空回りして、成果に結びついていないのではないか?」
- 「あるいは、そもそも本人にやる気が無いのではないか?」
多くの経営者や管理職を悩ませるこれらの問いに対し、ポーターとローラーが提唱した「期待理論の拡張モデル」は、努力が成果(業績)になり、それが満足へと繋がるプロセスを以下の5つのチェックポイントで整理しています。
1. 期待理論とは
期待理論とは何か(Expectancy Theory)
期待理論とは、人間が「なぜその行動を選択するのか」を説明するプロセス理論です。
心理学者のビクター・ブルームは、
モチベーションを「自発的な活動の選択を支配するプロセス」(Vroom, 1964)
と定義しました。
ここで重要なのは、「誰が誰に期待するのか」という視点です。
(1)従業員の主観的な期待:
期待理論における主役は、管理職ではなく「従業員本人」です。
従業員が自分自身の「努力」に対して、「これをやれば成果が出るはずだ」「成果が出れば報酬が得られるはずだ」という主観的な見込み(期待)を持つことで、初めて行動のエネルギーが生まれます。
(2)管理職の役割:
管理職は部下に対して「期待をかける」だけでなく、部下が自らの努力に対して「正しい期待(成功の確信)」を持てるよう、環境や道筋を整える役割を担います。
努力を成果へ、成果を満足へ導く5つの変数
期待理論において、ブルームは成果を満足へ導く5つの変数を解説しています。
①努力量:
「頑張れば成果が出る(期待)」×「その報酬は魅力的か(報酬の価値)」によって決まります。どちらか一方が低いだけで、意欲全体が著しく弱まります。
②成果:
単なる努力量だけでは決まりません。本人の「能力」と「役割認知(自分の役割やタスクの正しい理解度)」が揃って初めて、努力は業績へと変換されます。
③内的報酬:
達成感、成長、自己満足など、仕事を通じて得られる内面的な満足感です。
④外的報酬:
給与、昇進、ボーナス、地位など、組織から外部的に与えられる報酬です。
⑤公平性の認知:
得られた報酬が「自分の貢献に対して公平だ」と感じられない場合、たとえ報酬額が高くてもモチベーションは低下します。
2. 理論の解説:努力が成果と満足に変わるまでの全体像
ブルームの期待理論(努力×報酬=やる気)をさらに進化させた本モデルでは、モチベーションが実際の業績に繋がり、さらに次のやる気へ循環するまでのプロセスを以下のフローで説明しています。
全体のフロー
- 努力の決定:報酬の価値と、努力が報酬に結びつく確率(期待)によって、どれだけ頑張るか(努力量)が決まります。
- 業績への変換:投じられた努力は、個人の「能力・資質」と、正しい方向性の理解である「役割認知」という2つのフィルターを通ることで、初めて「業績(成果)」となります。
- 報酬の獲得:業績は、達成感・成長などの「内発的報酬」と、給与や昇進などの「外発的報酬」をもたらします。
- 満足の形成:得られた報酬が、本人の貢献に対して「公平(知覚された公正な報酬)」であると判断されたとき、初めて「満足」が生まれます。
- 次への循環:この満足感が、次のサイクルにおける「報酬の価値」へとフィードバックされ、持続的なやる気が形成されます。
ポイント
- 努力と成果は直結しない:どんなに必死に頑張っても、本人のスキル(能力)が不足していたり、的外れな努力(役割認知の欠如)をしていれば、組織が望む成果には繋がりません。
- 公平性が満足の鍵を握る:報酬の絶対額ではなく、自分の努力に見合っているかという「公平性」が低いと、たとえ成果を上げても満足度は低下し、次の努力は生まれません。
- 内・外両面の報酬バランス:「ボーナス(外発的)」だけでなく、「やり遂げた実感(内発的)」の両方「が揃うことで、より深い満足が生まれます。
3. 中小企業における「努力の空回り」を防ぐ具体的事例
リソースが限られているからこそ、一人ひとりの努力を確実に成果へ繋げるためのアクションが求められます。
事例A:営業マンの「役割認知」を正す
ある中小企業で、若手営業マンが「テレアポの件数(努力)」は一番なのに「成約数(成果)」が伸び悩んでいました。これは典型的な「間違った努力」の状態です。
- アクション:マネージャーが同行し、彼の「役割」が単なる件数稼ぎではなく「顧客の課題解決」であることを再定義しました。役割認知(何をすべきか)を修正したことで、彼の努力は正しい方向に向き、成約率が劇的に向上しました。
事例B:内発的報酬と外発的報酬のバランス設計
「ボーナス(外発的報酬)」だけでは、社員の顔つきが変わらないケース。
- アクション:成果を上げた社員に対し、金銭的報酬に加え、「プロジェクト完遂の達成感(内発的報酬)」を強調し、その功績を全社で称賛しました。内発的報酬と外発的報酬をバランスよく提供することで、報酬の主観的な価値を高めることに成功しました。
4. 実践における注意点:不公平感は「やる気の毒薬」
本理論で最も注視すべきは、「報酬が公平であるか」という従業員の主観です。
注意点:
評価基準が不透明なまま報酬を決めることは非常に危険です。
- 「なぜあの人が高く評価されるのか」という疑念が生じると、報酬が適切でない、あるいは不公平だと感じられ、モチベーションは急激に減少します。
- 納得感のある「公正な報酬」の設計こそが、満足度を次なる努力へと繋げるフィードバックループを回す鍵となります。
管理職は「成果への道筋」を整える伴走者である
メンバーに「もっと頑張れ」と発破をかけるだけでは不十分です。
上司の期待の掛け方が的外れであれば、それは「間違った努力」を誘発し、報酬が得られないという負の循環を招くだけです。
- その努力を成果に変えるための「能力」は備わっているか?
- 向かっている方向(役割認知)は組織の目的と合致しているか?
- 与えられた報酬は、本人の貢献に対して「公平」だと感じられているか?
マネージャーの役割は、努力が空回りする要因を取り除き、公平な評価で満足度を高める「環境の設計」にあります。
株式会社バリュー・コア・コンサルティングでは、期待理論の拡張モデルに基づき、貴社の評価制度や役割定義が適切に機能しているかを分析し、改善をサポートしています。
- 「頑張りが成果に結びつかない組織文化を打破したい」
- 「社員が納得できる、公平な報酬体系と役割定義を再構築したい」
そんな課題をお持ちの皆様。理論に基づいた現状診断から、現場のメンバーが迷いなく努力できる仕組みづくりまで、私たちと一緒に取り組んでみませんか?
貴社の持続的な成長を、科学的なマネジメントの視点から強力にバックアップいたします。
- なお、本コラムにおけるエンゲージメント理論の解釈は、弊社独自の観点によるものであり、内容の一部を抜粋してご紹介している点をご承知おきください。
経営コンサルティングサービスのご案内
弊社(株式会社バリュー・コア・コンサルティング)では、以下5つのサービスを提供しております。
- 総合経営コンサルティング
- 勝ちパターン構築プログラム
- ワークショップ型 リアル研修プログラム
- ワークショップ型 eラーニング型 研修プログラム
- 講演・セミナー 開催
このような課題はありませんか?
[売上・生産性を上げたい]
- 市場縮小・競合過多により、成約率・成約件数が落ちている
- 自社の強みや優位性を言語化できず、競合負けが増えている
- 若手が育たず、業績の大半をトップセールスに依存している
- 営業フローやマニュアルを整備したが、現場で使われていない
- 新規事業立ち上げに伴い、早急に育成体制を構築したい
[管理職・マネジメントを機能させたい]
- トップセールスに教育を任せた結果、組織全体の売上が下がった
- 若手育成において、従来型の指導スタイルに限界を感じている
- マネジメントが属人化し、業績や離職率に不安がある
- 管理職に任せているが、結局は社長が現場対応している
上記を社内で解決するのではなく、プロフェッショナルに相談しませんか?
SMBエキスパート企業賞|経営コンサルティング部門受賞
株式会社バリュー・コア・コンサルティングは、
「2026年度 SMBエキスパート企業賞」として、従業員数~500名以下の『経営コンサルティング部門』で“唯一”の受賞企業となりました。
>2026年度 SMBエキスパート企業賞(SMB Expert AWARD 100)
株式会社バリュー・コア・コンサルティングは主に、以下3つの特徴がございます
- トップライン(売上向上)アプローチ: 営業、紹介、採用、マネジメントにおける「勝ちパターン」の仕組みを構築し、組織全体の生産性底上げを目指します。
- 組織価値の最大化: 経営計画や戦略立案、人事評価制度の構築、理念の浸透などを通じて、組織全体の価値を長期的に向上させます。
- 実行支援と人材育成: ワークショップ形式の研修やロールプレイングを導入し、優秀人財の思考を言語化・標準化するとともに、研修間の実行サポートにより、現場メンバーのスキルアップを支援します。
お客様の組織が抱える本質的な課題を深く理解し、最適な解決策をカスタマイズ型(オーダーメイド)にてご提供します。
まずは、弊社研修を体感することも可能です。無料相談をお受けしますので、お気軽にご相談ください。
▼ (参考)導入成果事例集(総合経営コンサルティング・各種研修プログラム)
業種・企業別導入成果事例
▼ (参考)研修実施時の感想・気付き(ワークショップ型研修)
研修受講後アンケート
本コラムの内容に関して、さらに詳しく知りたい、自社の課題について相談したいとお考えの方は、ぜひ一度、無料相談をご利用ください。
お客様の課題を丁寧にヒアリングし、最適な解決策をご提案します。
▼ 株式会社バリュー・コア・コンサルティング 公式サイト
弊社、株式会社バリュー・コア・コンサルティングの公式サイトはこちらをご確認ください。
>公式サイトはこちら
▼サービス説明動画こちら(売上・利益向上を実現したい企業様向け)
動画内で知りたい項目を「選択しながら進行できる」構成となっており、必要な情報だけを効率的に確認できます。
>「売上・利益を伸ばすための5つのサービス」の説明動画
▼資料ダウンロードはこちら(売上・利益向上を伸ばすための5つのサービス・導入成果事例)
売上・利益を伸ばしたい企業様向けに、弊社の5つのサービスや成果事例、導入メリットをご紹介!無料で資料をダウンロードいただけます。
>企業価値と人財価値を同時に伸ばす「コンサルティングサービス」導入のご案内
▼無料相談 予約URLはこちら
売上・利益を伸ばした企業様向けに、無料相談をお受けしております。
同業種での成功事例のご説明や御社の抱えている課題の整理等をさせていただきます。
>無料相談(WEB)の日程調整をする




