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お金の使い方

安澤武郎

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テーマ:経営者向け

ユダヤには
「どちらかといえば、お金を稼ぐのは、やさしい。〝使いかたが難しい〟のだ」
「お金を持っていることは、良いことだ。でも使いかたを知っていれば、もっと良い」という格言があります。


どんなことにお金を使ってきたか?


多くの人は、お金を稼ぐことが難しいと思っているが、本当にそうだろうか?

使う方が難しいのは、稼ぐよりも自分の思い通り自由にできるから。
自分で自由にできるので、その人の考え方や気質がそのまま現れる。
無自覚に浪費してしまったり、本来使うべきでないことにも使ってしまう。
そういう点で難しい。

使い方を見るとその人の本質がわかってしまうから恐ろしい。
特に「他人のお金の使い方」に人格が出るように思う。
例えば、誰かの奢りであったら自分では頼まないような高価な食事を注文する。
普段ならタクシーを使うのは最寄り駅までだが、タクシー代を出してあげると言われたら、そのまま自宅まで乗って行く。
同じように、会社のお金だから普段はエコノミーなのにビジネスクラスに乗る
「会社のお金だからまあいいや」と言って飲み食いをしている
そんな人を見たことはないだろうか?

自分のお金の使い方から自分を知ることができる。
これまでどんなことにお金を使ってきただろうか?

「お金の使い方が大事だ」ということは自戒をこめて心からそう思う。
私は趣味や遊びにも存分に使ってきているし、
お酒を飲まなかったらどんなに金持ちであっただろうか?
なんて考えることもある。(後悔はしていないが)
ただ、一つだけ良い使い方だったなと思えることは、毎年一定金額を自己成長に投資をし続けてきたことであろう。

社会人になって一級建築士の資格を取得するのに学校に通ったのがスタートで、毎年なんらかの投資をして知識やスキルを身につけてきた。
もちろん、知識やスキルは学ぶだけではダメで使うことで身についていくものだが、仕事で新しい機会を作り、その機会を成功させるために新しいことを学ぶ、新しい挑戦をすることでノウハウが溜まり、新しい仕事の機会を得ることができる。
そんな循環がうまく回っているのは、投資をする習慣があったからだと思う。


何に投資をすべきか?


「刹那的な消費ではなく、自分の肥やしになるような投資をちゃんと行えば、必ず自分に返ってくる」ということは企業経営も同じです。
経営者は稼ぐ方法を一生懸命考えるのと同じくらいの真剣さでお金の使い方を考える必要があるでしょう。

少し話は変わりますが、エンロン事件のことはご存知でしょうか?
20年も前の話ですので、若い経営者には馴染みがないかもしれませんが、2001年10月に発覚したエンロン社の不正会計事件(巨額の粉飾決算事件)のことです。
特定目的事業体を使った簿外取引により、決算上の利益を水増し計上しており、2001年12月には経営破綻に追い込まれます。

問題は、1980年代終わり頃から長期間にわたって不正会計を繰り返していたことと、その事件に大手会計事務所アーサー・アンダーセンが関与していたことです。その後、他の有力企業の不正会計が次々と明るみに出たことで大きな問題となりました。

そういうことからコーポレートガバナンスが強く問われる流れができました。
いくら収益性の高い事業を確立していても、コーポレートガバナンスがしっかりしていない企業は一瞬にして価値のない存在になってしまう。しっかりと企業経営を管理監督する仕組みが確立されていないといけない、ということです。

興味深いことにアーサー・アンダーセンはエンロン事件の1年前に「バリューダイナミクス」という概念を提唱しています。


バリューダイナミクス


企業の価値は5つの価値で測れる、それは「物的資産」「金融資産」「顧客資産」「人的資産」「組織資産」の5つであると。
このうち財務諸表に載るのは「物的資産」「金融資産」のみであって、実際の企業の価値は財務諸表だけでは測れない、ということを会計事務所が提唱したのです。

「見えない資産が大事だ」ということを主張した矢先に、見えない資産の未熟さによって破綻してしまうとは、いかにも悲しいことです。
ただ、このバリューダイナミクスは企業の価値を考える際に役立ちます。全体像を捉える上で、見える資産と見えない資産の両面から考察することができます。

* 売上を生み出す設備を強化するのか
* ファン作りに投資をしていくのか
* それらを生み出す人や組織に投資をしていくのか
* いざというときに備えて内部留保を高めるのか
事業の状況によって投資すべきポイントは変わりますが、積もり積もって企業の価値が高まるようにうまく使えているでしょうか?

目に見えない本質的価値を競争力にする


下図は内閣府「選択する未来」委員会の昨年7月資料からの抜粋ですが、日本企業の無形資産投資は先進国の中で相対的に低く、特に経済能力投資が低い傾向にあります。


無形資産投資


イノベーション財産投資とは「自然科学分野の研究開発、資源開発、特許やライセンス取得、製品開発などへの投資」、コンピューター化情報投資とは「ソフトウェアやシステム開発などへの投資」、経済能力投資とは「ブランド資産、マーケティング力、企業固有の人的資本、組織開発などへの投資」になります。

 以前から言われていますが、日本企業は研究開発をサービスに結びつけ実らせる力が弱いというデータもあります。それはもしかしたら、事業化をする人や組織の力が十分に開発されていないからかもしれません。

そうだとすると、人や組織の能力を発揮できるようにする仕事をしている身としては大いに反省すべきです。モデルとなる企業を育て、人や組織の目に見えない価値を啓蒙する活動がまだまだ足りていないということです。
「うちの会社は市場と対話をしながら新しいサービスを生み出すことが得意だ」
「うちの会社はサービスの事業化ノウハウが確立できている」
と自慢する経営者を増やしていきたいと思う今日この頃です。

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安澤武郎
専門家

安澤武郎(経営コンサルタント)

株式会社熱中する組織

どのような組織にも「常識の壁」「アクションの壁」「スキルの壁」「仕事のやり方の壁」「コミュニケーションの壁」「情熱の壁」があり、能力を活かしきれていません。その壁を取り除き、組織を生まれ変わらせます。

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