やりたい仕事に取り組ませる(2/2)
いつも読んでいただきありがとうございます。
(1)組織OSとは?
前回のコラムは「考え方のアップデート」というテーマで書かせていただきました。これは個人のことでもありますが、組織全体にも当てはまることです。
組織には固有の考え方や特徴があり、
本来の能力の発揮を制限していることがあります。
この「人が活動する組織基盤」のことを我々は「組織OS」と呼んでいます。
パソコンで様々なアプリケーションを動かすOSが古いままだと
うまく起動しなかったり、フリーズしたり、再起動してしまうように
新規事業をしても、業務改革をしても、ICTを導入しても、
組織OSが古いままだと効果が制限されてしまうことがあります。
組織のメンバーは情報共有、意思伝達、意思決定を行う際に、
「組織OS」から考え方、感じ方に影響を受けています。
(2)組織OSの5つのモデル
この組織OSに関して、5つのモデルを考えてみました。
これらのOSは必ずしも悪いものではなく、組織ライフサイクル上の特定の段階では有効です。組織ライフサイクルの段階順にありがちなパターンを並べると以下のようになります。
「夢想OS」
創業期は、創業者の思いだけで突っ走ることもあるでしょう。社会にまだ存在しないサービスを展開しようとする際、理解者は少ないものです(最初から賛同者の多い事業には魅力がありません)。自分のアイデアに惚れ込んで「とにかく行動だ」と突き進むのは悪いことではありませんが、実現するための計画がしっかり構築されていなかったり、自分のアイデアに心酔しているので、軌道修正が効かないことなどから、成長軌道に乗せられないということも生じます。客観的な基準を持ちピボットをする勇気を加え、リスクに対して先手を打っていく周到さを身につけられるようアップデートしていくことが必要です。
「仲間OS」
仲が良いことは良いことなのですが、全員のコンセンサスを得ることが必要であったり、仲間に気を使いすぎる文化を作ってしまうと、スピードが上がりません。
方向性のずれた人がいても、言いにくいことを言わず馴れ合いになると、規律が生まれません。このような組織では、規模は追わず、自分たちがしたいサービスを提供できていれば満足という考えで運営されていることが多いかと思います。「小善は対悪に似たり、大善は非常に似たり」です。大きな志を見失うことなく、真の仲間になれるようアップデートできると力を発揮することができます。
「特攻OS」
安定的にリピートオーダーが取れるようになるとヒト・カネ・モノを適切に投入することで成長カーブを駆け上がっていきます。このフェーズではスピードが非常に重要になりますので、特攻OSは有効です。やればやるだけ成長できるので、計画は気合でも十分ですし、時間を惜しんで内省(自己を変化させる)ではなく反省(良い悪いの評価で終わり、改善アクションに結びつかない)で済ませていてもなんとかなったりします。ただし、ついていけない社員は離脱をしたり、規模が大きくなるにつれ限界がやってきます。経営と現場の対話、売上だけでなく利益を考慮した制御などマネジメントのアップデートが必要になります。
「官僚OS」
組織がしっかりして役割も明確になっていくと、「決められた役割範囲で業務をこなす」という思考に偏ってしまうのは人間の特性上自然なことでしょう。規模の大きな組織にこの特徴が見られるのは「自分の力で変える」という感覚を失ってしまうからでもあります。誰かの了解を取らないと物事が進まない上に、「やってはいけない」という制限の方が多くなると、未来を創造する挑戦は起きなくなってしまいます。計画を論理的に構築する力はあるのですが、仕組みを作ったり、取り組むことで仕事が完結し、本当に実現したかったことが実現しないことも多い組織です。新しい事業を創る役割、軌道に乗った事業で大きく身を実らせる役割など、自らの姿を客観視し、役割に合わせたマネジメントの使い分けがより求められていきます。
「細部OS」
俗にいうマイクロマネジメントですが、自由度がないので現場の動きが悪くなっていきます。そうなってしまう原因は大きく2つあります。一つは、権限委譲の考え方ややり方がわかっていないこと。課題の難易度と現場の力量に応じて、どこまで手をかけた関与が必要か、応援(方向性を確認した上で見守る)・支援(寄り添って一緒に課題解決に取り組む)・救援(やってみせて状況を打開する)の使い分けは訓練すべきです。また、本来新しい領域へのチャレンジをしていかないといけないのに、縮小するビジネスでなんとか成果を出そうと細部に入ってしまっているケースもあります。その場合、業績が大きく伸びることはないので組織は元気にはなりません。構想力を鍛えるべきでしょう。
(3)「熱中OS」を実装する
こういったことから組織OSのアップデートは必要になるのです。
現在、我々が様々な企業で経営者の方と一緒に目指している組織の姿は「熱中OS」と呼んでいます。
視野を広げて未来の姿を構想し、
実現のイメージが湧くようにストーリーを組み立て、
トライ&エラーを繰り返しながらゴールに向かう
変化の早い環境では状況に応じて適応する
自分がうまく貢献できているかを点検しながら自己修正を繰り返し、
多様なメンバーが互いの強みで補い合ってスクラムを組んで進んでいく
イメージはラグビーです。
選手は監督の目を気にしてプレーをしていてはダメです。
マネジメントは「管理」ではなく、「我々の目標」に対して、それぞれの役割を果たせるようにそれぞれが創意工夫をするチームを作ることです。
周りの選手がこう動くであろうということを想像してパスを回していく、パスを受ける側は相手の信頼に応えそのボールを受け取って前に進める。
どのようにOSをアップデートしていくと良いか多くの経営者と議論をしていきたいと思います。