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安澤武郎

組織変革コンサルタント・マネジメントコーチ

安澤武郎(やすざわたけろう) / 経営コンサルタント

ペネトラ・コンサルティング株式会社

コラム

「組織の強さに妥協しない」という戦略

2021年7月14日

テーマ:経営者向け

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: リーダーシップ スキル組織マネジメント組織開発

『企業は人の力で伸び、人の力の限界で潰れる』ということがある。
大きな夢を描いて価値あるサービスや技術を生み出すのも
視野が狭くて過去の遺産にしがみついてジリ貧に陥るのも
人の力量如何によって変わってくるからです。

日本の産業は
繊維、鉄鋼、携帯、テレビが負け
今、自動車が負けかかっている
人を育てられていない結果であろう。
何が足りなかったのか?

(1)労働流動性

時代にあった経営システムを構築し、
人口ボーナスの追い風を受け、
金太郎飴型の人材育成と大量生産で生産性を高め、
ものづくり大国日本を築いた。
しかし、変化する世界の潮流の中で
未来をヨミ、新しい船に乗り換えるタイミングを逸してしまった。

7月4日の日経記事に人材の流動性の話があった。(下図は記事からの抜粋)


労働流動性


労働流動性と生産性の相関である。
労働流動性が高い国は生産性も高いという相関がある。
これは成長市場に人が移動しやすいからである。

昨日の事業=需要が失われ縮小市場にある事業
今日の事業=現在、最も儲けの出ている事業
明日の事業=伸び出している事業
に分けた場合、
一流の企業は「明日の事業」にリソースをしっかり投入している。
平凡な企業は「今日の事業」に優秀な人財を投入し、競合との泥試合に臨んでいる
二流の企業になると、「昨日の事業」に優秀な人を突っ込んでなんとか挽回させようと必死になっている。未来はどんどん失われる。

社会全体を見ても同じことが言える。
日本という国において、昨日の企業、今日の企業ではなく、明日の企業で活躍する人を増やす流れが必要になる。
これは「縮小市場の企業を蔑ろにして良い」という話ではなく、「弱い部分に基準を合わせてしまうと全体の水準も落ちてしまう。しっかりと強くすべき箇所にリソースを振り向けていくべき」という話である。

規制がなければそのような流れは自然に起きるし、世界全体で見ると、昨日の国、今日の国から明日の国に優秀な人は移動する。
この潮流の中で日本は極めて劣勢に見える。

最近では、パナソニックやソニーが早期退職を募集している。
これは「昨日の事業」から「明日の事業」に人を異動させ、活力を高めることが狙いであろう。
この流れはこれから日本企業で増えてくるのは間違いない。
人が専門性を武器に複数の企業を渡り歩くのが当たり前の時代になっていく。
そのような時代に企業はどうしていけば良いであろうか?

(2)何を競争戦略にしているか?

企業はその魅力でしか人のリテンションはできなくなる。
ここでいう魅力とは、「仕事そのものの楽しさ」や「仕事によって提供できている価値の大きさ」はもちろんだが、「自分の将来の可能性につながる成長ができる環境である」ことの重要性が増すであろう。

人が成長できる環境を組織内にどう育むか、ということは企業存続の主題となる。昨今、人が活躍できる組織環境として「心理的安全性」という概念が普及した。
Googleのアリストテレス・プロジェクトによって、パフォーマンスの高いチームは「他者への配慮や気遣いのある集団」であることが明らかになった。
そういう観点を持って組織づくりをすることはとても良いことだ。

しかし、ここで注意すべきこともある。
仲が良いこと、互いを尊重することは良いことではあるが、
それだけで強い組織、人が成長し続ける組織にはなれるとは限らない。
常に上の世界を描いて挑戦をすることを当たり前にしていくことも必須である。

企業が500億になれば1000億の水準を目指す
1000億になったら、次は3000億を目指す
そうやって次のステージに向かおうとすると、新しい事業やサービスを生み出して市場を開拓していくことが必要となる。
大きな船の舵取りにはより高い水準のマネジメント能力も求められる。
外部からスペシャルな人物を招聘し、新しいチャレンジをすることも必要であろう。
そういうレベルの高い人と切磋琢磨をすることで人は磨かれる。
それが楽しい。

現代では差別化戦略の重要性は薄れている。
ユニークなポジションを確立したと思っても、すぐに真似され、一時的な競争優位に過ぎなくなった。
競争優位が何によって築けるのか、それは
「絶えず高みを目指して進化する組織集団を作ること」であろう。
人や組織の強さが企業の限界を決めるのであれば、
「組織の強さに妥協しない」ことが競争戦略となる。

(3)俺たち誇れる集団か?

日本企業は出遅れている
有能な人が育つ環境とはとても言えない企業も多い
事業を起こしたことがない人に事業を起こす後輩を育てることはできないし、
クリエイティブな提案営業をしたことがない先輩の元でクリエイティブな営業は育たない(勝手に育つ場合はあるが)
年功序列が致命的な組織の欠陥となっている場合、
痛みを伴う改革を経なければ「昨日の企業」として終わってしまうであろう。
黒船が来ないと変われないのか?

「俺たち誇れる集団か?」
「企業として優秀な人が参加したくなるチャレンジをしているか?」
「一緒に働くことでレベルが上がるような光る人物が集まっているか?」
それとも
「自分たちは冴えない集団だと感じるであろうか?」
「企業の中に魅力的な人物が減ってしまっているであろうか?」
幹部で膝を突き合わせて話し合ってみてはどうだろうか?
もし後者であるならば、早急に手を打つ必要がある。

企業は価値あるサービスを生み出さない限り存続できない。
コストカットや生産性を高めることはその次の課題である。
市場を向いて社内から新規事業が起こせる環境を作ること。
出る杭が健全に挑戦できる状況を作ること。
そして、明日の事業、明日のサービスを優秀な人間に任せていく。
そんな組織デザインをすべきであろう。

歴史はあるが若々しい企業も存在する。
例えば、1000年を超える歴史ある宮大工の職人集団
国内需要は減少しているが、
欧米に目を向けると家に日本家屋の趣を加えたい富裕層は山ほどいる。
シリコンバレーに大工を送っているそうだ。

「我々が取り組むべき明日の事業はなにか?」
ワクワクする挑戦を当たり前にしていこう。

この記事を書いたプロ

安澤武郎

組織変革コンサルタント・マネジメントコーチ

安澤武郎(ペネトラ・コンサルティング株式会社)

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