社長の力量が足りないと社員は育たないのか? (1/3)
久しぶりの投稿になります。
株式会社熱中する組織を設立し、組織OSのアップデートに取り組んでいます。
その活動の中でよく課題になるのが、部下に変化を求めるが自分がアップデートできないリーダーの存在です。そのようなリーダーはどうすれば変化をすることができるのか?
ということについて書かせていただきます。
(1)自分の価値観を大事にしているか?
「目標を変えると発想が変わり、行動が変わる
日々の仕事のゴールを変えると発想が変わり、行動が変わる
人はそれぞれに自分のスタイルを持っているが、
新たな行動によって新たな経験をすると新境地を切り開いていける
それが自分の幅を広げ未来を作る一つの道である」
この考えを共有でき、リーダー陣が自分の考え方をアップデートできる組織は強い。
人の考えの根っこにはそれぞれの人が培った経験があり、その経験を塗り替えない限り、考えはなかなか変わりません。
しかし、ポイントはこの「考えはなかなか変わらないかもしれないけど変わる」という点にあります。自分の価値観や考えが10年前と全く同じという人はいないでしょう。生活環境も変化するでしょうし、職場や社会も変化をしている中で新しい経験をし、新しい事象を見聞きすることによって変わっていきます。コロナが良い例です。「出社をして顔を合わせて仕事をするべきだ」という過去の常識は揺らぎました。新しい経験をすることで人の常識は変わっていく。今、「大切だ」と感じていることは、今そう感じているだけで、10年後もそうとは限らないのです。
現代人は、「自分の価値観を大事にする」ことを良いことだと考えているように思います。しかし、「自分の価値観を大事にする」とはどういうことなのか?と考えた時、「過去の経験によって作られただけのもの(自分の価値観)に固執する」のは、「大事にしている」とは言えないでしょう。私は、「自分の価値観を大事にする」とは、自分の価値観をどんどんアップデートしてより良いものに進化させていくことだと考えています。過去の価値観を否定するのではなく、それも含んでより良いものに上書きしていくイメージです。
(2)過去を捨てるのではなく、過去を含んで超える
例えば、「御用聞き営業」というものがあります。「御用聞き営業はダメ」で「課題解決営業が良い」ということを言われたりします。しかし、「御用聞き営業」の中には「相手の考えを聞く」「相手に好かれる」「相手のためを考える」という要素が入っています。全くダメなわけではなく、課題解決営業の中にもそのエッセンスは活かせます。「顧客の言いなりになる」のではなく、「相手が進歩できるように手助けをする」という考えを持ち、相手のわがままに付き合わない営業ができるように考え方を進歩させることがアップデートです。
マネジメントのスタイル転換に関しても、指示命令型から対話型への転換に取り組む際に、「指示命令型」を否定して全く使わなくなる(使えなくなる)のも考えものです。状況によっては、「ここは私の考えで進めてもらいたい」と指示が必要になることもあるでしょうし、管理職が自分の考えを持たないと対話になりません。「指示をする」「対話をする」というのはメンバーが納得をして適切な行動を取れるようにするための手法でしかありません。どちらのアプローチであろうと、結果、メンバーが適切な行動を取れればOKであって、相手の状態を見ながら使い分けることが大切でしょう。
野球の例で言えば、「真っ向勝負で三振を奪いたい」という負けん気の強さで速球派として活躍しているピッチャーが、「チームの勝利のためにバッターを打ち取れば良い」という考えに進歩し、緩急織り交ぜてピッチングスタイルを変化させるということがあります。これは、カーブやフォークを覚えてバリエーションを増やすという表面的な技術の進歩以上に大きな変化です。勝負所での配球や駆け引きの仕方が変わってきますのでバッターはやりにくくなるはずです。ただし、この変化においても、自分の強みを捨てては成功しないでしょう。速球があるから緩い球が活きるように、自分の強みがより活きるように仕事の幅を広げると良いのではないかと思います。
(3)経験しないと分からないことは経験をしてみる
では、どうすれば自分の考え方をアップデートできるのか?ということですが、最大のポイントは「新しい行動」を取ってみることです。
先日、とあるI T企業の部長さんのマネジメントスタイル転換コーチングをいたしました。その方は、「部下が成長しない」「部下に自分の課題を分からせたい」ということに悩んでおり、「いかにできていないか」ということを部下に分からせようと一生懸命ダメ出しをされていました。しかし、「認めることも必要では?」ということから初めて部下を認める会話をしてみたそうです。そうすると、部下が自分から「ここが自分の課題です」と語り出し、問題解決がスムーズにいったということに驚かれていました。この経験を通じて、その部長さんは「部下を認めることの価値」に気がつき、そこから大きくスタイル転換を進めることができました。
この部長さんもイソップ寓話の「北風と太陽」を読んだことはあったでしょうが、知識だけで考え方を変えることは難しいものです。新たな行動をし、その結果新たな経験をすることを通じて初めて気づけることがある。これが成長に必要なことだとすると、考え方を進歩させ、自分の幅を広げるには、「行動を変えていくこと」が有効だと言えます。なんとなく出会い頭で変えるのではなく、狙いを持って変えていくと成長できる確率は上がります。
(4)リーダーの変化量を最大に
ここで今一度共有をしておきたいことは、「チームメンバーを変化させたければ、リーダーの変化が必要である」ということです。周りの人にばかり変化を求める人をリーダーとは言いません。私は昔アメリカンフットボールをしていましたが、チームが逆境に立たされた時に周りのメンバーが奮い立つようなプレーを見せる選手がいました。実力があるかどうかというよりも身を挺した勇敢なプレーにはそういう力があります。新人であろうが若手であろうが人は動かせますし、リーダーになれます。勿論中心選手には逆境を跳ね返すプレーを見せるチャンスが多くありますが、本当にリーダーかどうかはその行動によって決まっていきます。(ビジネスの場合は、体で汗をかく行動のみならず脳みそに汗をかく考働で示していくことが大切でしょう)
「リーダーが変化量を大きくする」ことで、組織の考え方は早くアップデートされ進歩していきます。組織の中核にいる方々には過去に成功した経験もあり、自分の考え方を確立されている方が多いと思います。そういう方ほど、新たな経験を通じて自己の考え方を進歩させることは難しくなります。ですので、リーダー陣が自分の考え方をアップデートできる組織は強いのです。