社長の力量が足りないと社員は育たないのか? (1/3)
【後悔先に立たず】
長く企業に寄り添ってコンサルティングをしていると、経営者が将来の幹部候補と期待をしていた社員が伸び悩んで平凡な社員になってしまった。停滞しただけでなく、経営を批判したり足を引っ張る存在になってしまった、というケースを目にすることがあります。なぜ、そのような状況になってしまうのか、どうしたら防ぐことができるのか?を考えてみたいと思います。
先月、とある会社のリーダーの方と「今、仕事に燃えることができていますか?」というお題で議論をいたしました。その方は経営者から期待された存在でマネジャーになられているのですから、過去に実力をつけ、成果を上げ、認められて仕事が面白かった時があったと思います。その時と比較をして、今はどうでしょうか?と。すると、過去に担当者として夢中で仕事をしていた時と比較をすると、今はそこまで燃えられていないということでした。
ビジネスの実力は夢中で仕事をしている時期に養われます。難しい課題もあるでしょうが、それを乗り越えるためにどうすべきか、過去の自分では通用しない課題に前向きに挑戦していくときに、視野が開け、できることが増えていきます。そして、その実力によって思い通りの仕事人生を歩んでいくことができるのです。今の頑張りが、5年後、10年後の仕事人生の充実を約束してくれます。
現代の社会で活躍していこうとすると、誰もが「チームメンバーとしての役割」「リーダーとしての役割」を求められます。1技術者、1専門家として一生食べていくことは非常に難しい社会になっています。(ここでいう「チームメンバーとしての役割」とは、「一人ではできない大きな課題解決を仲間と一緒に成功させる力」です。「リーダーとしての役割」とは、「チームメンバーの力を一つの方向に結集する力」です)。
1専門家として一匹狼で最後まで全うできる人生のお手本はあるでしょうか?
例えば、プロスポーツの世界でも、選手はやがてコーチや指導者になるでしょうし、プロのミュージシャンも大きなステージを成功させようとすると多くの仲間の協力が必要です。F1ドライバーもチームとの協力や応援者を必要とします。フリーランスとして仕事をしている人でもレベルの高い人とチームを作って大きな仕事をできる人とそうでない人には、この「チームスキル」「リーダースキル」の差があります。
人生の中では、家族が増え、子供が進学し、親を養う必要が生じ、家族を養うにはお金が必要になります。人生の後半で必要になるだけのお金を稼ぎ、思い通りの人生を歩んでいくためには、「チームスキル」「リーダースキル」を身につけていくことが最も堅実な道なのですが、人生後半で失速していく人はこの社会の仕組みがよく理解できておらず、人生中盤でのチャレンジが足りていないのです。
例えば、経営状況が悪くなった企業の経営者から相談を受けて、社員インタビューをするとします。当然、部門長など幹部の方のお話を伺います。状況が悪くなっている企業なので、問題がたくさん語られます。そして、なぜそういう状況になってしまったのかも聞いてみます。そうすると、今の状況を招いた原因として、経営者の課題、業界の課題、社員の力量の問題など外部要因ばかりを語り、「その状況を変えるために自分に何ができたのか」という発想が出てこない幹部が必ずいます。折角の能力や立場を活かされていないことを残念に感じます。中には「どんな勉強をして、どんな提言をして、どんな挑戦をできたら良かったか」ということを語る方もおられますが、後悔をしても5年、10年という年月を取り戻すことは容易ではありません。
明日は、もう一つの理由を書きたいと思います。