思考は現実化する
【原則③:人ではなく、課題に向き合う 性弱説】
周りの目を気にせず、顧客に提供する価値を高めることに集中しようとしたとしても、周りの人を相互監視し、批判し合う組織文化の中では難しいものがあります。団体スポーツのチームで考えるとイメージが湧くでしょうか?ミスをした選手を責めるチームでは、選手はミスを恐れて思い切ったプレーができなくなると、チームは弱くなります。
最終的に自由意志で伸び伸びとプレーに集中している状態を作るためには、組織文化を「批判意識」ではなく「補完意識」のあるチームにすることが必要です。リーダーは『人には「良い仕事がしたい・貢献したい」という思いがある』という前提に立つという姿勢を広めないといけません。『人には「良い仕事がしたい・貢献したい」という思いがあるが、人間の弱さや組織の中にある壁に阻まれて思い通りのパフォーマンスを発揮できていない。壁を取り除いて活躍できるように相互に支援をしあおう』という考え方が大切です。人間は状況や環境によって良い行いも悪い行いもしてしまいます。性善説でも性悪説でもなく、性弱説の立場をとって、人間の弱さを補っていくことが強い組織を作る道だと考えます。もちろん、ここが弱いままで相互に依存しあっていては弱いチームなのですが、核となるメンバーがそのような理解を示して、周りの人間を支え、その支援に応えるように支援を受けたメンバーが力をつけていくような好循環を作ることが必要になります。
「人や組織の中にある壁」には以下の6種類があります。
* 常識の壁(思い込みの壁)
* アクションの壁(行動の壁)
* スキルの壁(知識の壁)
* システムの壁(仕事のやり方の壁)
* 信頼の壁(コミュニケーションの壁)
* 情熱の壁
例えば、アクションの壁とは
「良い仕事をしたい」と考えている人は、過去に成功したことは繰り返したくなるし、失敗したことを回避したくなります。利益を削ってでも売れる価格を出して販売をしている人がいたとします。その人が「利益を出したくない」と考えているかというとそうではありません。利益を出したいと考えているのですが、「定価では販売ができない」「販売ができないと赤字になる」と、過去の体験から行動が変えられないのかもしれません。人には行動をしている理由があり、「なぜそのような行動をしているのか?」をちゃんと理解した上で意見交換をすることが必要です。
また、上記の事例は「スキルの壁」が原因かもしれません。
価値を訴求して販売をする技術がなく、成功イメージが持てないので、販売手法を変えられないのかもしれません。上司の指示を聞かないからと言って「やる気がない」「反抗している」と決めつけるのではなく、相手の事情に合わせて、スキル教育を施したり、チャレンジできる状況を作っていかないと解決しないことがあるということです。
常識の壁も非常に大きなものがあります。
「値引きをして大量に販売するビジネスモデル」と「高利益商品を丁寧に販売するビジネスモデル」での利益の生み出され方が分かっておらず、現状で良いと考えているかもしれません。
「顧客は安値を求めている」とはよくある営業組織での間違った認識です。「顧客は費用対効果を求めていて、価値があるものには対価を払う」ものです。「無駄なお金を払いたくない」のと「安い方が良い」は違うのです。しかしながら、限られた経験の中で考え方が凝り固まっていると新鮮な目で状況を見れなくなり、「問題に気がつかない」「問題が見えない」ということが起きます。客観的な情報や視点を提供することで崩していかないといけません。
このような考え方をもとに、相手理解を示し、補完し合う文化が組織内に広がると、周りの目を気にせず、自由に意見が言えるようになります。意見が違っても対決モードではなく、目的に照らして何が正しいのか冷静に議論ができるようになります。そして、失敗を恐れず新たな行動を試しやすい職場では、良い結果を生み出しやすくなります。そうやって企業が成長していると、さらに社内の人間関係は良くなり、好循環が生まれます。
MITのダニエル・キム教授が示した「成功循環モデル」はこの好循環を表しています。バッドサイクルに入っている組織では「主体性のない部下を批判している上司」が多く存在します。しかし、人を責めても問題解決しないどころか、悪いサイクルに入ればより解決しにくくなります。「思い通りに結果を出せていない部下」に理解を示し、「解決策を見つけられてずに失敗しそうな部下」には適切なアドバイスを与え、予防管理をしていくことが必要になります。