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橘玲さんの「ダブルマリッジ」を読んで(国際結婚が絡んだ重婚)
橘玲さんの
フィリピン人との国際結婚が絡んだ重婚をテーマにした
「ダブルマリッジ」を読みました。
橘さんは、話題になった「タックスヘイブン」もそうですが、
制度を研究し、それを題材にして小説として発表しています。
戸籍の実務で、どのように進むのか?が興味があり、読みました。
「日本人男性が、フィリピンでフィリピン女性と結婚。
日本人男性は、日本で婚姻届けは出さず。
フィリピン女性が、フィリピンで子供を出産。
(日本人男性は知らず)
数年後、日本人男性は日本人女性と結婚。
日本人女性との間に子供が生まれる。
フィリピンでの婚姻手続きから、約20年経過した後に
フィリピン女性が、日本側に婚姻届けを提出。
その後、フィリピン女性との間の子供が、日本国籍に。
という流れで、
これらが、日本人男性の戸籍に、知らぬ間に記載された。」
が、なぜ可能か?説明し、
登場人物たちの人間模様を描きながら、物語が進んでいきます。
実際は、日本人男性の戸籍を見つけるのは大変なので、
ここまでに至るまでは、ハードルが高いでしょう。
又、Japanese Filipino Childen も取り上げています。
尚、入国管理局手続きが薄いですが、妙なリアル感がありました。
小説では、日本では、法の適用に関する通則法第24条2項により、
挙行地婚姻主義を採用しているので、婚姻は成立。
フィリピン人配偶者から、日本側に提出されるも、
日本人男性には、役所から通知が届かなかったため、
結果的に婚姻が成立してしまう、というものでした。
法の適用に関する通則法
第24条
婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による
2 婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による
3 前項の規定にかかわらず、当事者の一方の本国法
に適合する方式は、有効とする。ただし、日本において
婚姻が挙行された場合はにおいて、当事者の一方が
日本人であるときは、この限りではない。
(3項は、わかりにくいのだけど、これは、日本国内での
外国人同士の結婚。例えば、フィリピン人同士の結婚は、
日本の方式ではなく、フィリピン法を準拠にしての結婚方式を
認めるというもの。ただし、当事者の一方が日本人であるときは、
日本方式の戸籍法での届け出であることが必要)
戸籍法41条
外国にある日本人が、その国の方式の方式に従って、
届け出事件に関する証書を作らせたときは、
3ヶ月以内にその国に駐在する日本の大使、公使
又は領事にその証書の謄本を提出しなけれならない。
2 省略
(外国で有効に成立した婚姻届けは、日本に提出しなければならず、
提出義務者は日本人。
そうすると、外国人配偶者は届出資格者になれるか?
という疑問があるのですが、
届出資格者になれる、ということで、話が進んでいます。
尚、この条文の趣旨は、外国の法律で成立した
日本人の身分行為は迅速かつ正確に戸籍に反映させ、
公示することにある、です)
戸籍法44条
市町村長は、届出を怠った怠った者があることを知ったときは
相当の期間を定めて、届出義務者に対し、その期間内に届出
をすべき旨を催告しなければならない。
2 届出義務者が前項の期間内に届け出をしなかったときは、
市町村長は、更に、相当の期間を定めて、催告をすることができる。
3 第24条第二項の規定は、前二項の催告をすることができない場合、
及び催告をしても届出をしない場合に、同条第三項の規定は、
裁判所その他の官庁、検査官又は吏員がその職務上届出を
怠った場合があることを知ったときは、これを準用する。
戸籍法24条
戸籍の記載が法律上ゆるされないものであること又は
その記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、
市町村長は、遅滞なく届出人又は届出事件本人にその旨を
通知しなければならない。但し、その錯誤又は遺漏が市町村長の
過誤によるものであるときは、この限りではない
2 前項の通知をすることができないとき、又は通知しても
戸籍訂正の申請をする者がないときは、市町村長は、
管轄法務局長の許可を得て、戸籍の訂正をすることができる。
前項のただし書きの場合も同様である
3 裁判所その他の官庁、検察官又は吏員がその職務上戸籍の
記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤
若しくは遺漏があることを知ったときは、遅滞なく届出事件の
本人の本籍地の市町村長にその旨を通知しなければならない。
(外国人配偶者側から届け出があったときは、
市町村長は催告をするのですが、
小説では、日本人男性が、海外に駐在をしていたので、
催告が届かなかった、としています。
ここで、興味があるのが、
市町村長が催告をし、届出義務者である日本人男性が届出を拒否したら、
どうなるのか?です。
これは、市町村長や管轄法務局長が協議するのかな?
推測します。
結果として、市町村長は、
届出義務者(日本人男性)に、
フィリピン側の婚姻を無効にするように、
自分自身で後始末をするように、
と言うのか、
通則法24条から、婚姻に無効事由が無い限り有効、
戸籍法41条の趣旨に照らし合わせて、戸籍に反映する必要があるから、
拒否しても記載する、
と言うのか、
わかりません。
法務省内の研究グループが著者と思われる書籍には、
日本人男性が死亡しているケースが取り上げられています。
外国の法律に基づき成立した婚姻について、
当該外国人配偶者から、婚姻届が提出された場合、
当該日本人男性の戸籍を回復することなく、
その身分事項に婚姻の記載をする、となっています。
やはり、外国の法律で成立した日本人の身分行為を、
迅速かつ正確に戸籍に反映させ、公示することにある、
が考慮されるのだと思います。)
知識として知っていても、
これらを題材にして小説は書くことを思いつかないので、
小説家は、才能やセンスの世界なのだな、と思いました。