「小さな会社の働く在留資格「技術・人文知識・国際業務」」の付録。「外国人材の通訳・翻訳での採用。在留資格申請で注意したい点」。
「外国人人材の受入。採用活動から定着させるまで」
外国人材を採用し、定着させるために、
どのようにすれば良いのか?外国人材を雇うメリットは?を記載しています。
外国人材の受入・雇用・採用・定着
外国人の雇用・就労や定着のために、役立てるように記載しています。
外国人材による、日本の生活及び就労の魅力度評価について、
興味深いアンケートを紹介します。
「外国人労働調査」
を2015(H27)年に
一般社団法人日本国際化推進協会が実施しました。
回答者は819人
内、日本で働いた経験あり 554人
内、日本企業で働いた経験あり 447人
内、日本で働いた経験無し 174人
その地域の内訳が
東南アジア244人、米国・カナダ223人、
欧州146人、東アジア73人、
ラテン米・カリブ45人、オセアニア42人、
その他46人
のアンケートです。
日本に住むことに魅力有り、と答えた人は、全体の約83%
でも、
日本で働くことに魅力を感じない、と答えた人が、全体の約51%
です。
・日本企業に対するイメージの上位5つ
(非常に賛成、やや賛成の回答)
序列が強い
男性支配
残業が多い
固い
職は安定
・就職にあたって欲しい情報の上位5つ
(複数回答)
労働時間
任されるタスク
評価の基準
コミュニケーション
要求される日本語のレベル
その他として、賃金・福利厚生・ボーナス・休み・有給休暇の明記
多くの女性からは、妊娠の時の対策 など
・日本企業への入社阻止要因の上位5つ
(複数回答)
長時間労働
コミュニケーション様式、
評価方法
遅い昇進
要求する日本語レベル
その他として、外国人差別、言葉の壁、女性差別 など
・日本企業で働いたことがある人による入社後の困難の上位5つ
(複数回答)
長時間労働
外国人差別(昇進、冷遇、福利厚生など)、
社内コミュニケーション様式
遅い昇進
評価基準
その他として、フレキシビリティの無さ、変化に対する抵抗感、
女性への差別など
外国人だけではなく、日本人でも感じている項目が上位に入っています。
こうして見ると、
・キャリアパスや仕事の評価方法が不明確であること
・経営者あるいは上司、社内でのコミュニケーションが取りにくいこと
・長期雇用/年功賃金に伴う課題があること
・仕事範囲が不明確であること
・長時間労働であること
の課題が浮かび上がり、
(上の2つについては、それが外国人差別と感じているのかも)
外国人材の採用活動や、入社後の待遇で参考になりそうです。
では、就職する外国人材は少ないのか?の数値を見てみましょう。
外国人留学生(学部卒)の就職は3割、という数値が出ています。
「内なる国際化研究会」が2016(H28)年3月に発表したレポートによると、
・外国人留学生の学部卒の学生の7割が日本で就職を希望しながらも、
実際には3割しか就職していない。
・博士課程修了の留学生でも、国内の就職率は2割を下回る。
・合計で年間1万人以上の留学生が卒業後に日本以外の国で就職。
とのことです。
これに、入国管理局が公表している資料を重ね合わせると、
例えば、2014(H26)年は、大学卒については、5,872人が
「留学」「特定活動(就職活動目的)」からの資格変更許可件数になっていますので、
学部卒の30%(5,872人)が就職できたことになりますが、
この倍以上の人達が、
日本国内での就職を希望していることなります。
(単純に計算すると約13,600人―13,700人)
修士課程・博士課程の留学生と専修学校卒の留学生を含めると、
いったい、何人の留学生達が、日本で就職できなかったのか?となります。
おそらく、20,000人前後なのではないか、と考えます。
上記は平成26年ですが、留学生が増加している
最新の情報から推測すると、
平成28年における留学生等の日本企業等への就職が発表されていて、
「留学」「特定活動(継続就職活動中の者、就職内定者等)」の在留資格を得ている外国人が、
日本国内の会社に就職する目的で、
在留資格変更申請の処分件数は、21,898人
そのうち、許可した件数は、19,435人
許可率は、88.8%です。
国別での上位国
中華人民共和国 11,039人
ベトナム 2,488人
韓国 1,422人
ネパール 1,167人
台湾 689人
以下、タイ(238人)・インドネシア(214人)・ミャンマー(183人)
と続きます。
平成29年については、
平成29年5月1日現在での、
専修学校を含む高等教育機関と日本語教育機関での留学生の数
267,042人
・専修学校を含む高等教育機関には、188,384人
内、大学院46,373人
内、大学学部80,020人
内、専修学校58,771人
内、準備機関3,220人
・日本語教育機関には、78,658人
なので、
おおまかに、推測すると、
約60,000人-65,000人ぐらいが、就職活動をでき得る人数だったのかもしれません。
主な対象者は、
大学院であれば、修士課程や博士課程の後期
大学学部であれば、4年生(4年制)
短期大学であれば、2年生(2年制)
専修学校であれば、2年生(2年制)
日本語学校に通学している一部の人(本国等で大学を卒業・学士称号)
でも、最初から、日本国内で就職活動をしていない人
例えば、日本以外又は自国以外で就職活動をしていた人
例えば、帰国するので就職活動をしていない人
例えば、大学院へ進学、4年制の大学へ進学する人
もいるので、
それを考慮すると、実際は、もっと少ないかもしれません。
尚、就職活動の在留資格「特定活動」を得ていた人は含まない、
→前年に資格変更をしているから
とします。
平成29年の留学生等の日本企業等への就職の統計は、
現時点では発表されていないですが、
平成28年並みの許可件数(約20,000件)であれば、
約50,000人ぐらいが、就職活動を少しでもしていたと仮定したとして、
50%には、達していないのだな、と推定されます。
なぜ、できなかったのか?を考えるに、
外国人材(この場合は留学生)は、
・就職活動において、採用側に自分のことを上手くアピールできなかった
・就職活動のスケジュール等の情報が上手に得られなかった
・自分の知りたい情報を企業側が開示していなかった
・企業側の求めている人材がわからない。
創造力のある人材を求めている、
と言いながら、実は、従順な人材を求めているではないか?
・企業側が、何を外国人に期待しているのか、よくわからない
・そもそも、日本で就職することに不安があり躊躇いがあった
などで、就職を希望しても就職できなかった、就職しなかった、
こともあると思います。
しかしながら、企業側は、外国人材を獲得できるチャンスはあると思います。
又、採用しても、長く勤めてもらうためには、企業側も様々な手をうたなければならない、
と思うのです。
「内なる国際化研究会」が公表している事例を基に考えると、
・キャリアを主体的に描ける仕組みを導入しているし、就職説明会でもアピールしている
・キャリアプランについて、本人が考えたうえで、各社員の育成プランを作成
・直接の上司と話し合う機会を設け、
実現したい将来像と必要になる職務内容等について、具体的な計画を立てるようにしている
・本人と上司の認識にずれが生じる場合は、人事課が同席し状況に適したサポートを行う
・いわゆる年功制を廃止している
・高度な職に就く人材であれば、給与の設定は柔軟に行い、優秀であれば、理由を示して昇進させている
・採用時に、このような仕事をしてもらいたいという、
期待を明確にしてから採用している
・残業を少なくし、長期休暇の取得を認めるよう、変革している
・好成績を上げれば、高い処遇で応えている
など、工夫が必要なようです。
私見ではありますが、
そこで、厚生労働省が、
若者を応援している優良な中小企業に対しての
認定制度があるので、
その認定基準を参考にして、
少しでも近づけるように会社を変えていき、
公表することによって、アピールしたらどうか?と思います。
<認定基準>
1 学卒求人など、若者対象の正社員の求人申込みまたは募集を行っていること
2 若者の採用や人材育成に積極的に取り組む企業であること
3 下記の要件をすべて 満たしていること
・「人材育成方針」と「教育訓練計画」を策定していること
・直近3事業年度の新卒者などの正社員として就職した者の離職率が20%以下
・前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下
または週労働時間が 60時間以上の正社員の割合が5%以下
・前事業年度の正社員の有給休暇の年平均取得率が70%以上
または年平均取得日数 が10日以上 ・直近3事業年度において、
男性労働者の育児休業等の取得者が1人以上
または 女性労働者の育児休業等の取得率が75%以上
4 下記の雇用情報項目 について公表して いること
・直近3事業年度の新卒者などの採用者数・離職者数・男女別採用者数、35歳未満 の採用者数・離職者数
・研修内容、メンター制度の有無、自己啓発支援・キャリアコンサルティング制 度/社内検定
などの制度の有無とその内容、平均勤続年数、役員・管理職の女性 割合
・前事業年度の月平均の所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、
育児休業の 取得対象者数・取得者数(男女別)
5 過去3年間に新規学卒者の採用内定取消しを行っていないこと
6 各種助成金の不支給措置を受けていないこと
7 過去1年間に事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと
8 重大な労働関係法令違反を行っていないこと 等
言うは易く行うは難し、ですが、
上記の項目を少しでも満たせるような社内体制にしたらどうか?
と思うのです。
さて、外国人材を獲得するメリットですが、
・上記のような受け入れ態勢を整えておけば、日本人の求職者にもアピールできる
・外国人、というだけで採用することを、二の足を踏む会社もあり、
けっこう優秀な人材が採用されていないことがあり、採用しやすい
・日本語能力だけではなく、コミュニケーション能力や問題提起能力、問題解決能力は
在学中のアルバイトで身についていることが多い
・在学中に、日本人の若者に比べてつらいアルバイトの経験もしているので、ガッツや耐久力はある
故に、どの仕事でも、「やりとげよう」という気持ちがある
・日本の会社に就職して、キャリアアップしたい、という考えを持っている留学生が多い
が挙げられます。
又、日本人社員と差を付けないことが肝要だと思います。
仕事内容に対する注意ですが、
入国管理法の関係で、基本的に専門職となります。
入社当初は、育成期間になると思いますが、専門職として育ててください
(採用後、自社におけるキャリアデザインをキチンと伝えてください)
尚、内定後や採用決定後に、
「技術・人文知識・国際業務」などの就労の在留資格に変更する必要があります。
当事務所は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を得るサポートをしています。
・外国人を雇用/就労できるか、どうか
・雇用契約に基づく採用理由書の作成
・会社の業務内容と外国人の仕事内容について、入国管理局へ説得力のある伝え方
・申請書作成と申請書の提出
許可を得るためには、上記の4点は相互に関連しあっています。
尚、手続き内容については、下記に詳細に解説しています。
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外国人材の就労の在留資格を得るまでの流れ「やることリスト」
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外国人を雇う事業所と日本語教育の推進に関する法律について
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