部下を持ったら考えましょう! 人を動かす、人を育てる とは?
【はじめに】
遅ればせながら、今年も宜しくお願い致します。
2024年最初のコラムは多少戒めの意味を込めた記事です。
会社によっては今週も得意先への年始回りを続けているかもしれませんね、
ついお神酒を口にして、言わずもがなの事を口にする…
人間とは弱い生き物で何か重要な話を聞くと
それが重要であればあるほど、人に話したくなるものです。
同じく、思惑通りに物事が順調過ぎるほど順調に進んだ時にも
思わぬ凡ミスをしがちです。
今回はこれの具体的な事例を紹介したいと思います。
【会議後の打ち上げの場で】
私と学生時代の友人の2人で入った居酒屋の座敷に
サラリーマン5人の団体さんが打ち上げ?の最中でした。
詳細は分かりませんが、化粧品関係の会社のようでした。
年長の恐らく課長と思われる方が
発売直前の新製品に関する会議の話をしていました。
「あの企画は最近では一番秀逸だった」
「私も苦労した甲斐があった」
「来季の得意先とのリベート契約を〇%に抑えたのも良かった」
など等、どうもまだ社外秘の情報を口にしているようでした。
よほど自分の意向が通ったのか、自分の部署が主役だったのか
どんどん深い話にまで発展していました。
その後トイレに入ったところ、先の団体客の中の若手がいました。
「会議の時にこの内容は不用意に話すなと言った張本人があれかよ!」
「聞かれもしないのに自分から自慢話始めておいてここだけの話はないでしょうよ。」
「全く、酒が入ると駄目だねあの人、課長止まりは自業自得さ。」
など等、私がいるにもかかわらずの陰口三昧でした。
まだ全く利害関係のない私だからよかったものの、
もし店内に競合他社や得意先の関係者がいたとしたら?
酒の席の話でした、では済まないでしょうね。
【会議後の移動車内の場で】
これは私が名古屋勤務時代に東京での会議終了後。
新幹線で帰路についたときの話です。
座席の背中越しに3人の会話が聞こえてきたのですが、
それが何と当時の勤め先のライバル社の営業部員でした。
更に話しているのは恐らく今日開催されたと思われる
秋の新製品情報や販売企画の内容について話し込んでたのです。
「あの機能は他社を圧倒できる、早速得意先に勉強会だ。」
「それに加えて今度のキャンペーン期間のリベートは〇%です、
間違いなくトップシェアが取れますね!」
まさか、真後ろの席にそのライバル会社の同じ部門の営業マンが
聞き耳立ててメモを取っていたとは終生思いもしなかったでしょう。
おかげで私は早速得意先に某社の新製品情報を入手したら
連絡をくれるよう話をまとめ、いち早くカタログや販促マニュアル等を
入手することが出来ました。
その後は相手の手の内を把握したうえで
その裏をかく?先制の商談が出来ました。
如何でしょうか?
ドキッとした方がいるのではないでしょうか?
上記の2例のうち前者は管理職の心構えに難ありですし
後者の場合は複数の集まりと言う点に注意が必要です。
たぶん、一人での移動ならば会社の重要情報を話す事はないはずです。
上司がいない飲み会であれば、逆にお互いに自制心が働いたのでしょうが
肝心の上司が口を開いては部下は止めようもないでしょう。
大原則は「社内の事は社外で、公の場で話さない」ことなのです。
それが、同僚や同じ職場のメンバーが一緒だと、つい脇が甘くなりがちです。
まさに 油断によって故意ではなくとも
結果的に会社に損害を与えることがありうのです。
【最後の詰めを誤って失敗】
別の事例を紹介します。
これはある会社の採用担当者との雑談の中でお聞きした話です。
数年前に中途採用での最終面接となったその日に、
気分転換を兼ねて会社近くにある目立たない喫茶店で
面接担当者とその上司が最終面接者の資料に目を通していたそうです。
するとそこに30前後の2人組が入店してきたのです。
「ここなら〇〇社の人間も来ないだろう、
まだ面接まで少し時間あるから一服しようぜ。」
と、ひとりが話を始めたそうです。
その〇〇社こそ、打ち合わせに入った彼らの会社でありました。
「前回の面談で前職ではプロジェクトリーダーってことにしてあるんで
今日はボロが出ないように裏付けをバッチリ固めてきたんだ。」
「趣味も今話題の〇〇を嗜んでいるとしてあるし、
若手の兄貴分の印象作りも抜かりはないさ!?」
「うまくすりゃ、いきなり課長代理に任命もあるかもね!」
など等、もう一人に対して話し続けたそうです。
当然ながらこの人物との面談は5分で打ち切って退室を促して
言うまでもなく、2人ともその場で✕をつけたそうです。
「人当たりのいい好人物で即戦力の期待もあったのですが…
人を見極めるのは本当に難しい、この歳になってもこのざまです。」
「偶然とはいえ、社としてはラッキーでした、彼の本性を盗み観ることが出来て。」
本人としてはうまく最終面接まで猫を被ってきたようですが、
最後の最後に詰めを誤って思わぬボロを出してしまったのです。
用心のために選んだ裏通りの小さな喫茶店に、
よりによってこれから面接を受ける会社の採用担当者がいた!
せめて内定をもらってからの自慢だったらまだよかったのですが、
少しだけ早まってしまって成果を得ることが出来なかったのです。
【終わりに】
人間、事がうまく運んでいるとき、
特に想定以上にとんとん拍子に進んだ場合、
どこかで油断が、隙が生じます。
そしてなぜかそういう場面に限って致命的なミスを犯しがちです。
交渉難航が必至と思われた商談が予想外にこちらの思惑通りに進んだ、
最後の最後の詰めの交渉時にあり得ない凡ミスを犯す。
スポーツの世界でも9回2死ランナーなしから
たった一つの四球やエラーから大逆転負けを喫する。
先の事例も同じことで、
「ここでなら大丈夫」「この程度なら大丈夫」
といった勝手な思い込みや油断がミスを招いているのです。
また皮肉なもので
どうでもいいような噂話の場合には周囲に誰もおらず、
先の例のような重大な話の場合に何故か聞かれては拙い存在がいる。
偶然、不運のひと言では片付けられない何かを感じますね。
まさに「壁に耳あり、障子に目あり」です。
ビジネスの世界では僅かな油断や弛緩が致命傷となるのです。