情報収集力 ~ものの見方を考える
【今日のポイント】
夫婦2人暮らし、親子の2人暮らしなど、血縁者が一人である場合、
将来のおひとり様予備軍は避けられません。
そういう環境にある場合、最低限具体的に準備しておくべきことをまとめてみました。
【金融機関の口座情報】
夫婦の場合は、夫がこの手の情報を独占管理していたり、
親子の場合は親が子に情報を伝えていなかったりで、何も知らされないままに遺された方には、
必要な情報の把握の為、大きな負担が課せられることになります。
お互いが全ての口座情報を共有しているでしょうか?
親が子に黙って子供名義の預金をしていたり、妻がこっそりへそくり口座を有していた場合、
教えてなければ存在を疑うことすら出来ません。
他にも最近では、
ネットバンクの口座が知らされない情報として問題視されます。
後ろめたいわけでもないのに、なぜか同居者に内緒というケースは、今でも決して少なくはありません。
中には、サプライズを考えて等という方がいましたが、
伝えられないままに万が一となれば、闇に葬られるだけです。
ネットバンクの存在は何となく伝えてはいるものの、
肝心の口座名やパスワード、IDは伝えていなければ却って厄介です。
存在は確実ながら、内容の把握も出来ず、解約や名義変更も手が出せません。
それでも税務署から財産として把握されれば、相続税だけはしっかり課税されるのです。
ゆうちょの定期預金については、別の注意が必要です。
2007年9月以前に預けたものは20年2か月後には払い戻しの権利が消滅します。
ついうっかり忘れていたでは済まないほどの金額であれば、恨まれても仕方ありませんね。
もっと初歩的な問題としては、
通帳や印鑑登録した印鑑(実印)、キャッシュカードの保管場所を共有しているかどうか?
これも夫が管理を一任していたり、逆に妻が全てを一括管理しているといった
一方だけが知っているというケースがあります。
以前にも書きましたが、サラリーマンで全国を転勤してきたような場合、
その先々で地元の金融機関に口座を開設したり、給与振り込み用の口座を所有したまま退職するケースが少なくありません。
このような場合は、しっかり解約を済ませたかどうかを把握しておきませんと、後々になって状況調査をしなくてはいけない羽目になり時間と手間を浪費することがありますので要注意です。
【保険証券や有価証券】
保険証券の場合は、
結構な確率で若いうちに加入したまま、子供が出来た時に加入したままの、
既に内容が次代にそぐわない証券を大事に保管しているケースがあります。
その時々の環境に応じた内容の保険になっているかの確認が欠かせません。
同様に受取人の見直しも重要です。
中には既に受取人が死亡しているにも関わらず、内容変更を失念したケースや、
契約自体を失念したままといったケースが見受けられます。
詳細は省きますが、
保険証券は被保険者、受取人、契約者が誰にしたかで税の種類や税額が変わってきます。
今の契約が果たして節税には最適なものかの見直しも必要です。
子も独立し、自立出来ているならば、
子に遺すことよりも自分たちの為の保険内容を優先すること等、思い切った内容変更も視野に入れるべきです。
株式等の有価証券の場合は、先の金融機関と同じく口座情報の共有化です。
IDやパスワードは無論の事、ネット証券の場合はペーパーレスでの取引が主流ですから、
物証が残り難いというリスクがあります。
【不動産情報】
お互いが自分名義の土地や家屋、あるいは自分が相続人になる可能性のある郷里の空き家などの有無、中には曾祖父の代から名義変更をしていない郷里の山林が見つかったといった事例も珍しくありません。
仮に自分名義で不要な不動産は、積極的に売却を検討すべきです。
名義変更していないことで多数の推定相続人が存在するような場合は、
早急な会議や他の相続財産との兼ね合いによっては、相続放棄などの手続きの検討も開始すべきでしょう。
不動産売買契約書の保管場所も重要です。
相続時に正確な購入金額が分からないままだと、場合によっては実態よりも所得税が高額課税されるケースがあります。
【その他】
自動車を自動車を所有の場合、
ローン返済中の場合、所有者がローン会社やカーディーラーというケースがあります。
完済していない場合は必ず名義確認が必要になります。
クレジットカードも、
まずその存在の有無を共有できているかどうかに始まり、
自動引き落とし契約の有無も必ず共有化すべき情報です。
出来れば利用明細や請求書などはまとめて保管しておくようにしたいものです。
暗号資産は、
これからシニア世代に入る方が注意すべきものですが、取引をされている場合は情報共有は欠かせません。
この場合も取引用のパスワードが分かりませんと、換金は非常に困難を伴います。
さらに放置状態が長期化すれば、一気の評価損になったり、
相続財産として指摘されれば換金不能であっても相続税の課税対象になる為、
無駄な税負担だけを強いられることになりかねません。
他にも配偶者や親や子供の趣味の収集品等をどうするか?
書画・骨とう品、貴金属類の場合は相続財産の可能性があるので、勝手に形見分けを進めることは避けた方が無難です。
古書やレコード等もその世界の価値観では桁の違う評価額で売買されているケースはざらにあるので、事前に所有者にその価値を調べておいてもらうか、情報の共有化を図ることが求められます。
さらにペットの問題も考えておくべき問題です。
夫婦や親子が共に可愛がっているのであれば、当面の問題はないのですが、
そうでない場合のペットの行く末も、避けることなく事前に当事者同士で決めておくべきです。
ここに挙げたものは、ごく代表的なものだけです。
ですが、おひとり様になってからでは完璧に満足のいく結論を出すことはかなり難しいものとなります。
「ああすればよかったか?」「果たして故人の意向に沿ったものだったか?」
後になって悩むよりは、聞きにくいことこそ生前にお互いが聞き出しておくことで、
遺された側の負担を減らすことが出来るのです。