織田信長とエリザベス一世は「同い年」
1on1とは、上司が部下を育てる時間だけではない。 ──組織が学び続けるための「場」を考える
近年、多くの企業で1on1が導入されるようになりました。
人材育成やエンゲージメント向上を目的として取り組む企業が増える一方で、「雑談で終わってしまう」「評価面談との違いが分からない」といった悩みも少なくありません。
そんな中、ドラッカー研究の第一人者・井坂康志氏による論考「日本の『1on1』は、なぜ組織のプロフェッショナリズムを奪うのか?」を読みました。
日本の「1on1」は、なぜ組織のプロフェッショナリズムを奪う
そこでは、ドラッカーが若き新聞記者時代に編集長との面談を通じて、「成果に責任を持つプロフェッショナル」として育てられた経験が紹介され、日本企業で広がる1on1が「部下の気持ちを聞く場」へと傾き過ぎていることに警鐘が鳴らされていました。
ドラッカーは、成果に責任を持つことを徹底して問い続けました。その考え方は、今なお学ぶべき本質だと思います。
しかし、読み終えたあと、私の中には別の問いが残りました。
2026年の今、1on1は何のためにあるのだろうか。
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ドラッカーが経験したのは1930年代です。
人が成長する本質は、今も変わらないでしょう。
しかし、私たちが生きる時代は大きく変わりました。
生成AIが知識を補い、一人ひとりが異なる情報に囲まれ、多様な価値観の中で仕事をしています。
同じ会社に勤めていても、「なぜ働くのか」という答えさえ、一人ひとり違う時代です。
だから私は、1on1もまた、時代に合わせて捉え直す必要があるのではないかと考えています。
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私は、
1on1とは、上司が部下を育てる時間だけではない。
組織が、自ら学び続けるための「場」の一つでもある。
そう考えています。
ここでいう「学ぶ」とは、研修を受けることではありません。
現場で感じた小さな違和感。
数字には表れない変化。
顧客との何気ない会話。
まだ言葉になっていないアイデア。
そうしたものを互いに持ち寄り、「なぜだろう」「どう思う」と語り合うことです。
そこでは、上司だけが教える側ではありません。
部下だけが教わる側でもありません。
互いの経験に耳を傾けることで、双方が学び、組織そのものが少しずつ成長していく。
私は、そのような時間こそが1on1の価値ではないかと思うのです。
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ここで思い出すのが、野中郁次郎氏の「場(Ba)」という考え方です。
野中氏は、「知識は個人の頭の中だけで生まれるものではなく、人と人との相互作用の中から創造される」と説きました。
『知識創造企業』では、暗黙知は対話や経験の共有を通じて新しい知識へと転換されると論じられています。
私は、この考え方に深く共感しています。
「場」とは会議室のことではありません。
1on1もそうですし、日々の雑談や、部署を越えた立ち話、一冊の本を囲む共読会、ワークショップなども含まれるでしょう。
組織が学び続ける会社には、このような「場」が数多く存在しています。
そして、その「場」は、正解を教える場所ではありません。
互いの経験が交わり、新しい意味が生まれる場所なのだと思います。
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これまで私は、このコラムでガバナンスやオフィス、対話について書いてきました。
一見すると、それぞれ別のテーマのように見えるかもしれません。
しかし、私の中では一本の線でつながっています。
ガバナンスは、組織が向かう方向を定めること。
オフィスは、人が自然に交わる場をつくること。
対話は、人と言葉が行き交う流れを育てること。
そして1on1もまた、その流れを支える大切な「場」の一つです。
制度だけでは組織は変わりません。
オフィスを新しくしただけでも変わりません。
人を入れ替えただけでも変わりません。
変わるのは、人が学び合う「流れ」が生まれたときです。
そして私は、その学びは社内だけで完結するものではないと考えています。
社員同士が学び合える組織は、やがて顧客や地域、取引先とも学び合える組織へと育っていきます。
異なる立場の人との対話を通して、新しい視点や価値が生まれ、これまで見えなかった社会課題にも気づくようになります。
私は、学ぶ組織とは、個人の課題と共に社会課題とも学び合う組織であると思っています。
企業は、利益を生み出すためだけに存在するのではありません。
社会の中で人と人をつなぎ、新しい価値を生み出し、より良い未来への「流れ」を育てる存在でもあります。
だからこそ、1on1も単なる人材育成の制度では終わりません。
組織が未来へ向かって学び続けるための「場」であり、その学びはやがて会社の外へと広がり、社会との新しい関係を育てていく。
私は、そのような1on1の可能性に期待しています。
モノコトフロー研究所
モノコトフロー研究所では、「流れ」という視点から、経営・組織・地域・文化を見つめ直し、人・組織・社会がともに学び、新しい価値を生み出し続ける環境づくりについて研究と実践を続けています。
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