「話が通じない」の正体は、脳の配線だった・・・?

浅沼正治

浅沼正治

テーマ:思考

話が通じない。そんな相手に、仕事の現場で出会ったことはないでしょうか。

今回は少し具体的な所に落とし込みたいと思います。
(少し長め)

「今どきの若手は本を読まないし、説明しても要点しか聞かない」
「上の世代への説明は、何をどこまで言えば伝わるのか分からない」。
こうしたすれ違いは、たいてい「世代の違い」という言葉で片づけ
られます。しかし、それは本当に「いつ生まれたか」の問題なので
しょうか。むしろ「日常的にどう情報を摂取しているか」という、
脳内の情報処理の違いによるものではないか——今日はそんな仮説
をご紹介します。



情報処理の「ABCルート」



メディアの変遷に沿って、現代人の情報処理を大きく3つのタイプ
に分けてみます。


ルートA:「職人脳」


特徴は、能動的×活字(長文)。資料や長文を
自ら読み込み、文脈を自分で組み立てていくタイプです。一つの
物事を初めから終わりまで論理的に追うため、思考の中に一本の
太く強固な幹線道路が形成されます。知識を自分の内側に構造化
して蓄えるスタイルです。


ルートB:「サーファー脳」


特徴は、能動的×デジタル探索。検索やツールを駆使し、複数の
情報源を自ら探しに行くタイプです。膨大な情報の中から必要な
キーワードだけを瞬時に見つけ出すことに長け、並列処理が得意。
知識そのものを覚えるのではなく、「どこにあるか」を覚えるス
タイルです。



ルートC:「パッセンジャー脳」


特徴は、受動的×映像・アルゴリズム。向こうから流れてくる情報を、
受け身で受け取り続けるタイプです。感覚的な処理が優位になりやす
く、深く考えるという行為そのものを、外部(システムや他人)に委
ねている状態とも言えます。




「違う」のではなく「配線が違う」

三者三様、優劣の話ではありません。Aルートの人がBルートの人を「浅い」
と感じ、Bルートの人がAルートの人を「遅い」と感じる。あるいはCルート
に慣れた人が、AやBのやり方を「まだるっこしい」と感じる。これは能力の
差ではなく、どの回路を太く育ててきたか、という配線の違いに過ぎません。

そして重要なのは、この配線は年齢だけでは決まらないということです。ベテ
ランでもBルートを主戦場にする人はいますし、若手でも骨太のAルートを持
つ人はいます。「世代の壁」と呼ばれてきたものの正体は、実は「メインルー
トの違い」なのではないか——そう置き換えてみると、噛み合わない会話の
風景が、少し違って見えてきます。


相手のルートを見極めるには、とはいえ、初対面や日の浅い相手だと、どの
ルートかを判断するのは簡単ではありません。ややザックリですが、いくつか、
現場で使える見極めのサインを挙げてみます。


会議・打ち合わせでの反応 資料を配ると、先に黙って読み込んでから発言する
人はAルート寄り。
その場でスマホやPCを開いて関連情報を調べ始める人はBルート寄り。
周囲の反応やその場の空気を見てから発言する人はCルート寄りです。

質問の仕方 「そもそも、これはなぜそうなるんですか」と背景や理屈
を聞いてくる人はAルート。「で、結局何をすればいいんですか」と要
点だけを求める人はBルート。「他の人はどう思ってます?」と周りの
反応を先に聞く人はCルートです。


メールやチャットの文面 長文で経緯や理由を丁寧に書いてくる人はA
ルート。箇条書きで要点だけ、リンクを貼って「詳細はこちら」と済
ませる人はBルート。スタンプや一言リアクションで済ませがちな人は
Cルートの傾向があります。

資料への反応 長い説明資料を渡したとき、最後まで読んでから質問す
る人はAルート。目次や見出しだけ見て必要な箇所に飛ぶ人はBルート。
図やグラフ、写真など視覚的な要素に先に目がいく人はCルートです。


一つの行動だけで決めつける必要はありません。同じ人でも場面に
よってルートは変わります。ただ、こうしたサインを普段から意識して
おくと、「なぜか話が噛み合わない」という場面で、相手に合わせた伝え
方に切り替えるヒントになります。

現場でどう使うか、もし部下や取引先との会話がかみ合わないと感じたら、
「年齢差」より先に「相手はどのルートで情報を受け取っているか」を考
えてみてください。Aルートの相手には結論だけでなく背景と論理を、Bル
ートの相手には要点とキーワードを、Cルートの相手には短く印象に残る形を。

同じ内容でも、渡し方
を変えるだけで伝わり方は変わります。そして、ここまで読んだ方はお気づき
だと思いますが、自分自身の情報の受け止め方にも、ルートの特性があり、かつ
それはマダラ模様なことがわかる筈。

「話が通じない」を「あの人はダメだ」で終わらせず、「配線と回路が違う」
と捉え直す。自分も相手も「マダラ模様」の上にある特徴を考えてみる。
それだけで、次の一手が見えてくるはずです。

モノコトフロー研究所

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浅沼正治
専門家

浅沼正治(経営アドバイザー)

モノコトフロー研究所

35年以上に渡り、流通(物流)・経営・組織作りに携わる。人・モノ・情報の流れを整え、経営と現場、社会と組織が自然に繋がり合う組織づくりを支援している。

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