物流2026年問題は、物流だけの問題ではない。 ――「選ばれる荷主」が生き残る時代へ
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ドライバーを板挟みにする、物流
早く積んだのに、降ろせない――「空白地帯」の正体
最近物流関係の相談を受ける事が増えてきました。
経営者のみならず、現場の声も一緒に聞くように務めています。
ヒアリングということも、私にとっては「対話」です。
「せっかく倉庫で早く積んでもらって、急いで現場に到着したのに、降ろす側の現場に連絡が入っていなかったんです。結局、そこで2時間も待機することになりました」
先日、あるトラックドライバーの方から、そんな話を聞きました。
さらに、所属会社からは「早く次の現場に向かわないと間に合わない」と催促の電話が入ります。
けれど、目の前の荷物を降ろさないことには、次の現場へ向かうこともできません。
「ただ、待つしかありませんでした……」
その言葉には、自分ではどうにもできない「板挟み」への諦めがにじんでいました。
ただ、こうした光景は、決して最近始まったものではありません。
トラックが倉庫の前で何時間も待つ。
納品先に到着しても、荷物を降ろす場所が空くまで待つ。
指定された時間より早く着けば待ち、指定時間になっても受け入れ側の準備ができていなければ、また待つ。
こうした「待機」は、物流の現場では昔から常習化していました。
それでも、長い間、それは物流業界の中の問題として扱われてきたのではないでしょうか。
ところが、ドライバー不足や「物流2024年問題」などをきっかけに、物流は一気に社会の問題として認識されるようになりました。
これまで「仕方がない」で済まされてきた現場の慣行が、いま改めて問われています。
「
出す側」と「受ける側」の間にある空白
今回のような待機時間は、荷物を出す側と、受け取る側の情報がつながっていないことから起こります。
発荷主がどれだけ効率よくトラックを送り出しても、着荷主側で受け入れの準備ができていなければ、そこで流れは止まります。
経営や営業の画面には「出荷済み」「配送中」と表示されていても、その裏側ではドライバーが2時間、トラックの中で動けない。
その時間を、誰かが引き受けています。
そして、その「誰か」が、物流の現場ではドライバーになっていることが少なくありません。
これは単純な物流効率の問題ではありません。
情報の流れが途切れている問題です。
「物流」が社会のテーマになった理由
考えてみれば、物流はずっと私たちの生活を支えてきました。
しかし、荷物が問題なく届いている間は、その存在を意識することはほとんどありません。
トラックが走る。倉庫で荷物が積まれる。店舗や現場に届く。
それが当たり前だと思われていました。
だから、その裏側でドライバーが何時間待っていたとしても、「物流の現場ではそういうもの」と見過ごされてきた部分があります。
ところが、ドライバー不足が深刻になり、物流が止まる可能性が現実のものになってきました。
「運べないかもしれない」
という事態になって初めて、社会は「運ぶ」という行為そのものに目を向け始めたのです。
そして、長時間労働や荷待ち時間、取引条件など、これまで現場に積み重なっていた問題が、一つひとつ社会的な課題として取り上げられるようになりました。
物流に関する制度やルールが相次いで整備されているのも、こうした背景があります。
自社の仕事だけを見ていないか
企業は、どうしても自社を中心に仕事を考えます。
自社の倉庫。自社の納期。自社の効率。社員の労働時間。
しかし、物流は自社だけでは完結しません。
自社の倉庫を出たトラックは、その先にある誰かの現場へ向かっています。
「この時間に到着したら、相手はすぐに受け入れられるのか」
そこまで考えなければ、自社では効率化したつもりでも、サプライチェーン全体では非効率が生まれます。
そして、その非効率を最初に身体で引き受けるのが、ドライバーです。
なぜ、いま「取適法」なのか
こうした物流取引の歪みを、取引そのものから見直そうという動きも始まっています。
2026年1月1日、従来の下請法が改正され、「中小受託取引適正化法」
、いわゆる「取適法」が施行されました。
今回の改正では、「特定運送委託」が新たに対象となりました。
一定の要件を満たす場合、発荷主が自社の事業のために行う物品の運送を、運送事業者に委託する取引も対象になります。
これは、物流業界にとって大きな変化です。
これまで物流の現場で「仕方がない」とされてきたことが、いまは社会全体で見直されようとしています。
そして、その背景には、長い間積み重なってきた「物流の当たり前」があります。
誰が、誰に、どのような条件で仕事を委託しているのか。
その関係そのものを見る必要があります。
ドライバーが2時間待たされる。
その2時間は、いったい誰の都合によって生まれたのでしょうか。
荷物を出す側か、それとも、受け取る側の体制なのか。
そして、その負担を誰が引き受けるべきなのでしょうか。
これは、物流の現場だけの問題ではありません。
荷主企業が、自分たちの仕事の「外側」をどう見るのかという、経営の問題とも言えます。
2026年、物流をめぐるルールは変わり始めました。
では、取適法は具体的に何を変えようとしているのでしょうか。
そして、荷主企業は何を理解し、何を見直さなければならないのでしょうか。
次回後編では、「取適法」そのものに踏み込んで考えてみます。


