2016年8月9日に
今日は10月26日。毎年何らかのことをつづっておりますが、私にとって命の恩人と言っても過言ではない、故灰田勝彦先生のご命日です。亡くなられてから、すでに34年の月日が流れ去りました。当時私は19歳の大学2年生でしたから、物心ついてからの人生の3分の2以上、灰田先生が導いて下さった道を、歩んで来たことになります。
その内実がどのようなものであったかということは、あるいはWeb上で書き、あるいは昔日の書物に書いたことであるため、今日ここで新しく述べるものではありません。ただ、灰田勝彦というきわめて明るく、真っ直ぐな個性にふれたことで、私はその当時の沈潜した精神状態から浮上して、前向きで積極的な人間性を得ることができたのです。
このご恩は、生涯にわたって私が灰田先生にお返しすべきものであります。もちろん直接的にはできませんから、先生の残されたものを後世に伝えることが、私になしうる一番のご恩返しと考えているのです。そのためのもっとも大きな手法も自明ではあるのですが、すぐに着手するのにはなかなか、むずかしい条件も多く、時を待つほかない現状です。
そこで本日は、午前中お墓参りに伺って、それから先生が42歳の時に歌われた『浜辺に濡れて』を歌わせていただきました。LPレコードのこの曲の解説には、「この年代の灰田は、新しい自分の方向を模索していた」とあります。ですからこの曲は、どの道でも、いくつになっても新しい試みをつづけなければならぬということを教えて下さった、感銘深い曲でもあるのです。そしてまた、昭和前期の流行歌の中の一群が達成した格調高いリリカルな佳曲の一つとして、長く保存されるべき一曲であると考える次第です。