小説『遠つ世の声』を刊行(電子書籍/Kindle)しました!
今月2日からYouTubeで高村光太郎の詩の朗読をはじめました。目下のところ、『智恵子抄』の作品を、3週目からは月曜日、火曜日に1作ずつ、アップしています。
昨日、22日月曜日には、昭和3年(1928年)8月に書かれた「同棲同類」を読みました。智恵子が元気なころ、アトリエの中で、自分は粘土で造型をし、智恵子が「トンカラ機を織る」午後の様子をえがいており、「同棲同類」とは、アトリエに棲みついている鼠や、雀、カマキリに蜘蛛と言った小さな生き物、そしておそらく無生物である手拭や郵便物、時計、鉄瓶、芙蓉といったものまでもが、世間から隔絶した空間の中でひっそりと生きているさまを、あらわしたものでしょう。そこを「子午線上の大火団」=太陽が「まつさかさまにがつと照らす」結びの1行は、光太郎詩ならではの力を感じさせます。
「裸形」は、「元素智恵子」とあわせて昭和24年(1949年)10月に発表された6作品のうちの一つであり、智恵子没後10年以上を経てなお、「智恵子の裸形をわたくしは恋ふ。」とうたい出します。しかしただなつかしく「恋ふ」のでないことは、「元素智恵子」の際にも述べた通りで、「わたくしの手でもう一度/あの造型を生むことは/自然の定めた約束であり」、「智恵子の裸形をこの世にのこして/わたくしはやがて天然の素中に帰らう」と結んだこの詩の通りに、4年後の昭和28年(1953年)に、光太郎が自ら制作した十和田湖畔の「裸婦像」が除幕されます。そして昭和31年(1956年)4月に、光太郎自身も「天然の素中に帰」ったのです。
今週アップした2作品とも、光太郎と智恵子の生活、そして愛の実相をよく伝える作品と思います。お目通しいただければ幸いです。「裸形(らぎやう)」を掲示させていただきます。
同棲同類 はこちらからご覧いただけます。