キャリアとは(2)キャリアの概念を理解する3つのポイント

11月10日は技能の日です。また、11月は「人材開発促進月間」とされ、職業能力の開発や技能の振興について考える機会となっています。
仕事を続けるなかで、「新しいスキルを身につけたほうがいいのだろうか」「今の自分に必要な学びは何だろう」と考えることはありませんか。
近年は、仕事や事業環境の変化に対応するため、新しい知識やスキルを身につけるリ・スキリング(またはリスキリング)という言葉も広く使われるようになりました。
学び直しは、これからの働き方を考えるうえで大切な選択肢です。ただ、何を学ぶかを決める前に、自分がこれまでどんな仕事をしてきたのか、何に関心を持ち、どんなことに意欲を感じるのかを振り返ってみることも大切です。
技能の日をきっかけに、スキルアップと自分らしいキャリアについて考えてみましょう。
スキルを身につけるだけで、仕事は変わる?
新しい知識や技術を身につければ、できることが増えます。資格を取得したり、デジタルに関する知識を学んだりすることで、これまでとは違う仕事に挑戦できることもあるでしょう。
一方、スキルを身につけることと、そのスキルを仕事で生かすことは同じではありません。
例えば、同じ知識や技術を学んでも、目の前の状況に合わせて使い方を工夫する人もいれば、学んだ手順をそのまま当てはめようとする人もいます。仕事では、知識や技術だけでなく、状況を捉え、何を優先するかを考え、方法を選ぶことも求められます。
つまり、何を学ぶかと同じくらい、学んだことをどのように使うかが大切です。
仕事にはスキルだけでなく、センスも必要
このことを考えるとき、私が参考にしているのが、経営学者の楠木建先生が示している「仕事=スキル×センス」という考え方です。
スキルは、知識や技術など、学習や訓練を通じて身につけていくものです。一方、センスは、状況に応じて物事の本質を捉え、何を選び、どう行動するかを考える力として捉えることができます。
例えば、マニュアルに書かれていない問題が起きたとき。相手が言葉にしていない要望をくみ取るとき。いくつかの仕事の優先順位を決めるとき。知識や技術を持っているだけでは、答えを出しにくい場面があります。
そんなとき、目の前の状況を見て、自分なりに考え、判断することが必要になります。仕事の経験を振り返り、「なぜこの方法を選んだのか」「その結果、何が起きたのか」を考えることも、センスを磨く機会になります。
センスは生まれつきの才能だけで決まるものではなく、経験を重ね、自分の判断を振り返るなかで磨いていけるものではないでしょうか。
自分の「好き嫌い」は、キャリアを考える手がかり
では、自分の関心や持ち味を知るには、どこから考えればよいのでしょうか。
一つの手がかりになるのが、自分の「好き嫌い」です。ここでいう好き嫌いは、単に好きな仕事だけを選ぶという意味ではありません。仕事のなかで何に関心を持ち、どんなときに意欲や充実感を覚えるのかを知るための手がかりです。これは「何の仕事が好きか(Whatの視点)」よりは「なぜその仕事が好きなのか(Whyの視点)」から見えてくる好き嫌いだと捉えて下さい。
例えば、次のようなことを考えてみてください。
- 人と話しながら、相手の考えを整理することが好き
- 数字を分析し、問題の原因を探ることが好き
- 新しいことを考えたり、試したりすることが好き
- 決められた手順を工夫し、仕事を確実に進めることが好き
- 誰かを支えたり、人の役に立ったりすることに喜びを感じる
人によって、関心を持つことや意欲を感じることは違います。そこに単純な良し悪しはありません。
また、「得意なこと」と「好きなこと」が、いつも一致するとも限りません。成果を出せていても、実はあまり関心を持てていない仕事もあるかもしれません。反対に、まだうまくできなくても、もっと知りたい、やってみたいと感じることもあるでしょう。
自分の好き嫌いに目を向けることは、今の仕事を続けるかどうかをすぐに決めるためではありません。これまでの経験や自分の感じ方を理解し、これからの働き方を考える材料にすることです。
「好きなことだけを仕事にする」という話ではない
好き嫌いを大切にすると聞くと、「好きなことだけを仕事にすればよい」という意味に受け取られるかもしれません。
しかし、仕事には責任があり、自分の希望だけでは決められないこともあります。苦手だと感じる仕事に取り組まなければならない場面もあるでしょう。
それでも、何を好きだと感じ、何に抵抗を感じるのかを知っておくことには意味があります。苦手だと思っている仕事も、詳しく振り返ると、仕事内容そのものではなく、進め方や周囲との関係に難しさを感じていたと分かることがあります。
「何が好きか」だけでなく、「なぜそう感じるのか」まで考えてみると、自分にとって大切なことや、力を発揮しやすい環境が見えてくることがあります。
好き嫌いは、キャリアを決める唯一の基準ではありません。けれども、自分の関心や意欲を知り、今後の仕事や学びを考えるための大切な手がかりになります。
リスキリングの前に、これまでの経験を振り返る
新しいスキルを身につけようと考えたとき、まず「何を学べばよいのだろう」と考える方は多いでしょう。もちろん、それは大切な問いです。
その前に、少しだけ、これまでの仕事を振り返ってみませんか。
例えば、次の三つを考えてみるのも一つの方法です。
1.どんな仕事に充実感を覚えたか
うまくできた仕事だけでなく、夢中になって取り組んだことや、自分なりに工夫したことを思い出してみましょう。
2.どんな仕事に関心があり、どんな仕事に抵抗を感じるか
好き嫌いを評価せず、率直に書き出してみます。そう感じる理由や、そのときの状況も振り返ってみてください。
3.これから、どんな仕事に取り組んでみたいか
今の仕事をさらに深めたいのか、新しい役割に挑戦したいのか。それとも、これまでとは違う働き方を考えてみたいのか。今の自分の気持ちを確かめてみましょう。
過去の経験や関心を整理すると、これから身につけたいスキルが見えてくることがあります。自分のことを振り返ったうえで学びを選ぶと、スキルアップを自分の仕事やキャリアに結びつけやすくなります。
キャリアは、経験を振り返りながらつくっていく
キャリアを考えることは、将来の職業や目標を一度決めて終わることではありません。
これまでの経験を振り返り、自分の関心や持ち味を知る。そして、これから何をしたいのかを考え、必要なことを学びながら、少しずつ自分の道をつくっていくことだと思います。
技能の日や人材開発促進月間は、学び直しやスキルアップについて考える機会です。この機会に、何を学ぶかだけでなく、自分がどんな仕事に関心を持ち、どんな経験をしてきたのかにも目を向けてみてください。
「何を学べばよいのだろう」と考える前に、「自分はどんなときに意欲を感じるのだろう」と問いかけてみる。
好き嫌いを手がかりに経験を振り返ることが、これからの学びを選び、自分らしいキャリアを考えるきっかけになるかもしれません。
キャリアについて一人で考えるのが難しいと感じたときは、誰かに話してみることで、これまで気づかなかった関心や持ち味が見つかることもあります。ご自身の経験やこれからの働き方について整理したい方は、お問い合わせください。


