直らない子どもの盗み癖、裏にある心理とは?「奪われた」という心の叫び

大澤秀行

大澤秀行

テーマ:子育て-Support-


幼稚園や小学校で、お友だちの物をそっと持ち帰ってしまう、何度言い聞かせても繰り返してしまう…。そんなお子さんを前にして、「どうしてこの子は…」「私の育て方が悪かったのだろうか」と、ひとりで思い詰めていらっしゃるお母さんが少なくありません。

精神分析家として34年、日々多くの方の心と向き合ってきた経験から言えることは、子どもの盗み癖は、単なる「悪い行い」として叱っても、止まらないということです。むしろ、その行動の奥にある子どもの心の叫びを知ることが、解決への近道になります。

そういうお子さんを持ったお母さんにこそ、ゆっくり読んでいただきたいと思い書いています。少し専門的な話も出てきますが、できるだけわかりやすく、盗み癖の裏にある心理の一例をお話します。


子どもは「盗んだ」つもりがない ~盗まれたから取り戻しただけ~


多くの方に驚かれることなのですが、実は盗み癖のある子どもの多くは、「盗んだ」という自覚を持っていません。本人の心のなかでは、「もともと自分のものだったものを、取り戻しただけ」という感覚に近いのです。自分が奪われたと感じているものを、無意識のうちに取り戻そうとする心のはたらきがあるため、罪の意識がなく、いくら叱っても同じことを繰り返してしまう。ここが本当に厄介なところです。

「うちの子は何度言ってもわからない」と嘆かれる背景には、こうした心のしくみが隠れていることが少なくありません。表面的な行動だけを見て叱り続けても、子ども自身は「悪いことをした」と自覚していないため、根っこの部分は変わりません。


子どもは何を取り戻すのか



では、子どもは何を「取り戻そう」としているのでしょうか。
ここで大切になるのが「喪失」という考え方です。喪失とは、自分が所有していた持ち物を失うことです。

2歳3歳以降になると、「私のおもちゃ」「私の靴」「私のノート」など、自分のものと、そうでないものがわかるようになります。「私の…」という所有格は、お母さんも「私のお母さん」というように所有格になります。すると今度は、居なくなると「奪い取られた」と思います。「だから取り戻してもいい」という思いが無意識につながっていきます。これが喪失の考え方です。

物を盗る行動は、本当は物が欲しいのではなく、奪い取られた何かを取り戻そうとするサインであることが多いのです。


お母さんが「盗られている」こともある



私がこれまで向き合ってきたなかで、印象深いケースがあります。三世代同居のご家庭で、一人息子(小2)のお子さんが学校で盗み癖があるというご相談でした。よく見ていくと、お母さん自身が、同居するおばあちゃんに「呑み込まれて」いました。

つまり、子どもから見ると、本来「ぼくのお母さん」のはずが、おばあちゃんに盗られて「おばあちゃんのお母さん」になっている。子どもはお母さんとの結びつきを奪い取られたように感じ、その埋め合わせのように外で物を持ち帰る、そういった喪失による心の連鎖が起きていたのです。

ここで私がお伝えしたいのは、これは決してお母さんを責めるための話ではない、ということです。むしろ逆で、お母さん自身もまた、家庭のなかで自分の居場所やゆとり、自分自身を奪い取られていることが多々あります。子どもの問題は、その子だけの問題ではなく、またお母さんだけの問題でもなく、家族全体のなかで生まれてくるものなのです。

だからこそ、私はお子さんへの対応と同時に、お母さんご自身の状況をていねいに尋ねます。お母さんが自分を取り戻し、心にゆとりが生まれ笑顔が戻ると、不思議とお子さんの様子も落ち着いていくことが少なくありません。


「人の物と自分の物は違う」と言葉で伝える



では、家庭ではどう関わっていけばよいのでしょうか。
心のはたらきを踏まえたうえで、それでもやはり必要なのが、「人の物は、自分の物ではない」という区別を、言葉で根気よく伝えていくことです。

子どもは、感情や衝動だけでは、この区別を身につけられません。理性を育てる関わりが必要です。ここで大きな役割を果たすのが、お父さんをはじめとした「線引きを教える存在」です。「それは人のもの、これは自分のもの」という言葉が家庭のなかにあると、子どもは少しずつ立ち止まれるようになっていきます。

そして、社会のルールについても、年齢に応じて伝えていく必要があります。14歳未満の子どもは法律上の罪には問われませんが、それでも「それは人のものだ」ということは、はっきり教えなければなりません。

14歳を過ぎれば法律が適用されることも、いずれ本人が理解していく必要があります。叱るためではなく、その子を守るために、区別と責任を言葉にしていきます。
正しい区別を伝えていけば、盗み癖がエスカレートしてしまう前に、軌道修正できると私は考えています。


まとめ



子どもの盗み癖は「悪い子」の証ではなく、奪われた何かを取り戻そうとする心のサイン。背景を理解し、お子さんとお母さん自身の両方をやさしく見つめ直すことが、必ず前に進む力になると考えています。

・お子さんの盗み癖が、叱っても止まらずお悩みの方
・自分の育て方が悪かったのではと、ひとりで思い詰めてしまう方
・家族関係のなかで、心のゆとりを取り戻したいと感じている方

合同会社LAFAERO1(ラファエロワン)では、精神分析にもとづく対話のセラピーを通じて、お子さんとご家族の心に寄り添い向き合います。まずはお気軽にご相談ください。
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⇨親の財布からお金を盗る子供の心理
⇨子育てサポート

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大澤秀行
専門家

大澤秀行(精神分析家)

合同会社LAFAERO1(ラファエロワン)

精神分析家として34年の臨床実績があり、現在もメールや電話も合わせると、一日平均10名の精神分析によるセラピーを行っている。

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