非対応のパソコンにWindows11導入は何が問題なのか、その理由を専門家はこうみる
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Windows11のアップデート後に起動に問題が
月に一度、MicrosoftはWindowsの定期更新を自動配信で実施しています。その直後に起動しない、青い画面(ブルークリーン)で止まる、修復しようとしています・・という表示が何度も繰り返してループし、起動できなくなる場合があります。相談が寄せられるサポートの事例でもかなり頻発しています。今回はWindows11で起動に問題が発生した場合の原因や対処方法を、現場を知り尽くしたITサポートエンジニアがレポートします。
青い画面で止まる場合1
「問題が発生したため、PCを再起動する必要があります・・・」
パソコンが青い画面で止まり、「問題が発生したため、PCを再起動する必要があります。エラー情報を収集しています。再起動できます。」という表記が出た場合、注目していただきたいのが「停止コード」です。停止コードの内容でどのような原因で起動しないかがある程度把握できます。その情報をもとにネットで調べたり、メーカーや修理業者に問い合わせます。
サポート事例では以下のような停止コードを多く見ます。
停止コード「CRITICAL_PROCESS_DIED」
状況:重要なシステムプロセスが突然終了
原因:OSの重要プロセスのクラッシュ、不良ドライバ
停止コード:「MEMORY_MANAGEMENT」
状況:メモリ管理のエラー
原因:RAMの物理障害、不良ドライバ、仮想メモリの異常
停止コード:「INACCESSIBLE_BOOT_DEVICE」
状況:ブートデバイスにアクセス不可
原因:SSD/HDDの障害、ブートセクタ破損、ストレージドライバの問題
青い画面で止まる場合2
「回復 お使いのPCまたはデバイスは修復する必要があります
青い画面で、「回復 お使いのPCまたはデバイスは修復する必要があります」と表示がる場合、着目点はその下に表示してある「エラーコード」です。例えば、エラーコード:0xc0000001 や 0x000000f などの表記があれば前述と同様にそのエラーコードをもとにネットで調べたり、メーカーや修理業者にそのコードを示して問い合わせます。
残念ながらこれまでの事例では、そのようなエラーコードが出現した場合の復旧の見込みはあまり高くありません。
ネット検索で調べる際の注意
以上のようなエラー表示が出た場合に、ネットで調べるだけなら問題ないですが、注意点があります。検索結果にはエラーを修復できるというソフトウェアの紹介やダウンロードサイトが数多く出てきます。その内容は「これで元通りになるのでは?」とまさに「ホワイトナイト」の登場を思わせ、思わず救いの手だ!と飛びつきたくなるような言葉が並んでいます。渡りに船と、疑うことなくダウンロード、インストールしてしまうかもしれません。ところが、そのような「エラー修復ソフト」や「ドライバ更新ツール」の多くが怪しいものなのです。
検索結果に表示される「無料でPCの問題を解決」「1クリックで修復」などとうたうソフトの中には、不正な広告によって誘導される偽ソフトやマルウェア、アドウェア付きのものが含まれることが実際に多くあります。また、エラー内容に本当にマッチするものかは疑わしく、問題が解決しないばかりか、レジストリの破壊、偽の警告を出して課金を促すなど、セキュリティ上のリスクを引き起こすケースがあります。
青い画面で止まる場合3
「自動修復 PCが正常に起動しませんでした」
青い画面で「自動修復 PCが正常に起動しませんでした」とあり、その下に「再起動」と「詳細オプション」のボタンで止まる場合があります。その場合は、詳細オプションを選択すると修復や初期化のメニューが表示され選択可能になります。いかにもそれでどうにか回復できそうな内容のオプション表示が出ますので、どれも試してみたくなると思います。ところがこれには要注意です。そのオプションの操作を誤ると、回復どころかデータが完全に失われてしまう場合があります。
「詳細オプション」の限界と危険な罠
先日のサポート事例では、まさにそのような画面から行った操作でデータを失った方がいました。どのような状況だったかというと、青い画面になり、詳細オプションの「初期化」を選択してしまったためパソコンの初期化が行われてしまいました。回復したと思ったらデスクトップには何にもなくなっていて、データを探しても見当たらずどこに行ったかわからなくなった・・ということで相談を受けたのです。残念ながら、初期化してしまったので以前のデータは消去され失われていました。このような場合はデータ復旧もほぼ絶望的になります。
そのほか、UEFI BIOSの内容変更や、ネットで見つけたコマンドを見よう見まねで入力するなどして状況を悪化させることもあります。そのような事例はこれまでも非常に多く、トラブルの際の自己流対処がいかに危険かを物語っています。ですから、「詳細オプション」の操作は自信があれば慎重に行っても良いですが、そうでなければやはり専門家に見てもらう方が安全です。
これまでの対応事例で、私たちのような専門家でさえ詳細オプションの操作によって回復できた事例はそう多くありません。レジストリが壊れるなどして、Windowsのシステムが完全に破損していることが多く、システムの復元機能が実行不可能になっていることも見受けられます。Windowsのシステムはセキュリティ上、壊れたファイルなどを上書きしたり改変したりすることは簡単にはできない、というかさせないため、いったん壊れてしまうと修復が不能になるケースが多いのです。
そのような場合は、打つ手がない状態に陥っているということで、初期化がやむなしの状態になっています。
それ以外にも、ストレージデバイスに問題が発生していて、HDDやSSDの交換が必要なこともあります。最近の事例ではWD(Western Digital)製のSSDのファームウェア問題で影響を受けたPCが持ち込まれてきています。そのような物理的な故障は「詳細オプション」では対処できないといって良いでしょう。
データが必要な場合は、無理をしないこと
Windowsやソフトウェアの入れ替えは問題ないが、「データだけは何としても復旧したい」という場合には、青い画面(ブルースクリーン)が出た時点で無理をせず、すぐに専門家に相談してください。
多少パソコンの知識や経験があっても、それが10年以上前のものでアップデートされていなければ、現在のパソコン環境を扱うには非常に危険です。最新のPCやOSの復旧作業には厳格な優先順位があり、順序を誤るとデータが完全に失われたり、回復不能になる可能性があります。
また、最近ではセキュアブートやBitlockerなど、以前にはなかったセキュリティ技術も存在しており、それらについての知識がない場合は特に注意が必要です。
他人のパソコンを扱う際には、責任を持てないのであれば安易に手を出さず、「餅は餅屋」に任せる姿勢が大切です。「昔取った杵柄」は、異次元の速度で進化する現代のIT環境では通用しません。無理をせず、専門家の助けを借りることが最善の選択です。
筆者実績:http://www.kumin.ne.jp/kiw/#ss