パソコンが高い?いいえ、付加価値は自動車以上!投資と考えれば激安です

古賀竜一

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テーマ:ITで今起きている問題と課題


【パソコンの経済学】

最近、「パソコンが高くて買えない…」という声をサポートの現場でよく耳にします。突然の故障やWindows10のサポート終了に伴う買い替えなどで、10~20万円前後の出費は確かに負担です。物価高の折、他の支出もあれこれと重なる中で、何とか買わずに済めば・・・と思うのは当然でしょう。

そこで、スマホがあれば十分と考える方も多く、「パソコンは必要ない」とあきらめるのも無理はありません。しかし、本当にそうでしょうか?

例えば、気に入った自動車を購入する際には、オプションに何十万円かけても不思議と負担に感じないかもしれません。(隣で奥様は渋い顔をしているかもしれませんが)一方パソコンとなると、激安品など安いもので妥協したり、数万円の違いで悩む方が多いのも事実です。パソコンに対してその価値を見い出せていないので、単なる出費と感じているわけです。

しかし、パソコンの価値を再度見直してみると、見逃していたその本当の価値に気づくかもしれません。今回のコラムでは、パソコン価格と性能の変遷、他のデバイスとの比較を通して、パソコンの真の価値を一緒に見直してみましょう。

1.パソコンの値段は約30年ほとんど変わっていない!むしろ割安

パソコンの価格を振り返ると、実はおよそ30年間大きな変動はありません。1990年代後半、家庭用パソコンは一般的に20万~30万円程度が主流でした。その後、価格競争が進み、10万円台のモデルも普及して新たなカテゴリができたりしました。それから現在に至るまで10万~20万円の範囲で購入できる状況は変わっていません。

しかし、ここで注目したいのは、当時のパソコンと比べて、現在のパソコンは性能が格段に向上している点です。処理速度やストレージの容量、画面の解像度など、あらゆる面で進化しているにもかかわらず、価格はほぼ据え置きです。

さらに、昨今のインフレを考慮すれば、実質的に今のパソコンは過去よりも「安くなった」と言えるでしょう。つまり、パソコンは決して「高くなった」のではなく、むしろ割安になったといえます。

2.パソコンは値段が変わらず性能は数十~数百倍以上増加

価格が大きく変わらない一方で、パソコンの性能は飛躍的に向上しています。ムーアの法則が示すように、半導体の集積率は約2年ごとに倍増してきました。数十年前のパソコンと今のパソコンを比較すれば、その性能差は数十、数百倍と言っても過言ではありません。今の普通のパソコン性能は2000年初頭のスーパーコンピュータを既に上回っています。

ストレージ容量も劇的に増加しました。1998年頃のパソコンはハードディスクが10GB程度でしたが、現在では2TB(約200倍)前後のSSDが標準装備され、転送速度向上も桁外れです。

実際に2000年代初頭と現代のノートパソコンを同価格帯で比較してみましょう。



2001年のVAIO
CPU:Mobile-Celeron700
RAM:128MB
HDD:20GB
価格:170,000円

2024年のVAIO
CPU:Core i7-1355U
RAM:16GB
SSD(NVMe):512GB
価格:170,000円



性能比は以下のようになります。

CPU : CPUMarkで650倍以上のスコア
RAM容量比: 125倍
ストレージ容量比:25.6倍
転送速度比 :50倍以上
価格:同じ


確かに自動車も進化しましたが、エンジン出力が100倍になったり、燃費が100倍になったりしたわけではありません。工業製品の中でパソコンの異次元の進化に敵うものはないでしょう。

3.パソコンは機能が集約され圧倒的なコスパを実現

2000年代初頭まで、一般に普及した以下のものは経済や産業を支え、私たちの生活向上に寄与しました。

・ワードプロセッサ
・計算機
・電話・ファックス
・コピー機
・音楽プレーヤー
・カメラ
・ビデオ編集機
・ビデオ再生機器(DVD、VHS、レーザーディスク)プレーヤー
・音楽録音・編集機器
・製図台

これらはすべて個別のデバイスとして存在し、それぞれ高価でした。しかし、現代のパソコンはこれらの機能をほぼすべて内包しています。もし当時のデバイスをすべて揃えようとすると、その総額はパソコン1台の価格をはるかに上回るでしょう。

パソコンにはハードウェアの統合にとどまらず、百科事典や辞書、音楽・映像メディア、図面、地図、書籍・雑誌、写真・印刷といった「ソフトウェア面の機能」まで含まれています。これらの機能を手軽に利用できるのは、まさに驚くべきことです。



今の若い世代にとって、パソコンがあるのは当たり前かもしれません。しかし、かつては個別の機器を揃えなければできなかったことが、わずか10~20万円程度のパソコン1台で可能になっている現実は、30年前には考えられなかった驚愕の進化です。

このように、パソコンは多くのデバイスや機能を統合することで、圧倒的なコストパフォーマンスを実現しているのです。

4.パソコンの付加価値は最強コスパ

機能集約によるパソコンの付加価値は最強のコスパを生み出しています。単に個別のデバイスの代替となるだけでなく、インターネットへのアクセス、高度な画像・動画編集、プログラミング、オンラインコミュニケーションなど、以前は想像もできなかったことがパソコン一台で可能になりました。これらの付加価値を考慮すると、パソコンのコストパフォーマンスは極めて高いと言えるでしょう。特にAIの登場により、アシスタントや秘書などの代わりになる可能性を秘めており、その付加価値は計り知れません。

パソコンへの投資を惜しむのは、そのポテンシャルを活かしきれていないというよりも、そもそもその価値自体がわかっていないからです。

5.パソコンの情報量はスマホの3倍以上?作業効率への影響

スマートフォンの普及により、情報収集やコミュニケーションはこれまでになく手軽になりました。そのため、「スマホで十分」と感じる方も多いでしょう。しかし、パソコンと比較すると、情報処理の効率や作業のしやすさには大きな違いがあります。

パソコンの大画面、キーボードによる快適な入力、複数のアプリケーションを同時に操作できるマルチタスク性能を考慮すると、スマホよりもはるかに効率的に作業を進めることができます。ある調査によれば、同じ作業をスマートフォンで行う場合に比べ、パソコンを使うと平均で3倍以上のスピードで完了するという結果も出ています。

さらに、画面のサイズや処理能力を考慮すると、パソコンから得られる情報量はスマホの3倍以上になると言われています。これらの要素を考えると、スマホは便利な「補助デバイス」としての役割を果たす一方で、パソコンはより高度な作業や創造的な仕事をこなすための強力なツールだといえるでしょう。

「スマホで十分」と思うかもしれませんが、パソコンを活用することで新たなチャンスを生み出し、未来への投資となるのではないでしょうか。

6.パソコンが生むベネフィットは投資すべき価値あり

これまで述べたようにパソコンは価格がほとんど変わっていないにもかかわらず、圧倒的な付加価値を生み出しています。このような製品は他に類を見ないでしょう。

最近の物価高で様々なもののサイズや容量、品質が低下し、短期間で価格が急上昇しています。これは、価格が上がるのと同時にお金の価値が相対的に下がっていると言うことです。例えば、容量が半分になって価格が2倍になった場合、お金の価値は4分の1になったといえます。



値上げにばかり注意が集まりやすいですが、今何が起きているのかというと、その間にも私たちの資産は何もしないのに日に日に減っているのです。そしてそれに気付いていません。預金通帳を何度ATMに通しても100万円に変わりはなく、何も減っていないので大丈夫と思っています。しかし、それで買えるモノは着実に減り続けているのです。これがシュリンク経済の怖いところなのです。わかりやすく言えばよく例えられる「茹でガエル」状態に近いでしょう。

これまで、ステルス値上げや便乗値上げは企業モラルからも悪手と言われてきました。現在スーパーに売っているほとんどの商品がその悪手に手を染めています。企業努力と言えば聞こえはいいですが、あまりの値上げ幅と容量・品質低下は消費者に対する欺瞞行為と言われても仕方がないところまで来てしまっています。

このように現在の日本は大規模な経済収縮に直面していて、今後ますます加速すると予想されています。その中で生き残るためには、付加価値の高いものに価値を見出す必要があります。

これまでパソコンは実体のない価値と実態のない仕事をするためのインチキツールというレッテルを貼られることもありました。しかし、現在の経済状況下においても価格を維持したまま確実に性能と容量は増加を続けていて、消費者のベネフィットを実現させ続けています。最近では自動車メーカーの新型車でさえ価格は高騰するのにコストカットが目立ち、ユーザーのレビューは散々です。そういうことを見てもパソコンは様々な商材の中で、最も良心的な製品と言っても良いでしょう。

例えば、Webコンテンツ制作をはじめ、ビジネスマッチングサイトに登録するなどしてパソコンがあれば今時、1人の個人でも大きなビジネスチャンスを掴むことが可能になります。パソコン購入はお金を減らす単なる出費ではなく、可能性を広げる「宝箱」を手中に納めるようなものなのです。

ともすれば、パソコン1台が生み出す利益で車が何台も買える人もいます。車に投資するより、パソコンに投資するほうが付加価値は断然大きいのです。コストカットと値上げに忙しく名前だけのブランドを鬼の形相で死守しているパッとしない企業の株を買い支えるくらいなら、パソコンこそ投資すべき価値があるものと言っても過言ではありません。

しかし、パソコンを購入しただけではそのメリットを享受することはできません。これは自動車を買っただけでは目的地にたどり着けないのと同じです。教習所で教官に指導を受けながら運転技術を習得する必要があるように、パソコンも積極的に活用方法を学ぶことで、そのメリットを最大限に引き出すことができるのです。

このコラムが、パソコンの購入を検討されている皆様の参考になれば幸いです。

筆者実績
http://www.kumin.ne.jp/kiw/#ss

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古賀竜一
専門家

古賀竜一(システムエンジニア)

九州インターワークス

ITのユーザーサポートの現場で実際に問題を解決しながら、ITの最新の状況とその問題点を追及している専門家です。多様で複雑になってきたITのことをユーザーにわかりやすく丁寧にお伝えします。

古賀竜一プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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